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ヒットの手がかり:使わない時間を考える

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。
今日は「日経トレンド」2023年12月号、「2023年ヒット商品ベスト30」の中から永谷園の「パキット」を見ていきたいと思います。

(トップ画像引用元:https://www.nagatanien.co.jp/brand/pakitto/

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がればと思います。

永谷園「パキット」について

「パキット」は永谷園が2023年の3月に発売したパスタソースです。「パキット」の袋の中に麺を折り入れて、レンジで加熱、混ぜるだけでパスタが食べられるという商品です。10分ほどでパスタが食べられる手軽さがうけ、2023年3月の発売から2カ月で、半年間の目標としてた100万食超を出荷し、その後も好調な販売が続いているそうです。

3ステップがパスタが食べられる
(引用元:https://www.nagatanien.co.jp/brand/pakitto/)

「パキット」がヒットした大きな理由は、もちろんその手軽さと時短ニーズがマッチしたことにあるのですが、今日は別の角度からヒットした理由を見ていきたいと思います。

ヒットの手がかり:使わない時間を考える

さて、「パキット」は鍋を使わずに、レンジでパスタの調理ができる手軽さ、かつ、その味のこだわりが評価されています。いわゆる、タイムパフォーマンス、タイパの高さがうけているわけです。
ただ、鍋を使わない点については「レンジでパスタ」のような調理グッズがありますし、なによりも冷凍パスタが存在しています。

レンジでパスタの調理ができるグッズの一例
(https://www.hiraki.co.jp/ec/pro/disp/1/52181)

特に冷凍パスタは、パスタを折って袋に入れる手間もなく、手軽さで優っていて、購入時に有力な選択肢となるはずです。価格も大きく変わりません。それでも「パキット」が支持される理由はどこにあるのでしょうか。

ここで、注目したいのが”使わない時間”、今回でいうと調理前の保存の時間です。冷凍パスタと、パキットとの差は、保存の方法に大きな違いがあります。冷凍パスタは当然冷凍庫での保存になりますが、パキットは常温保存が可能です。
冷凍食品の味がよくなり、料理のバリエーションが増え、価格も安くなってきた昨今、冷凍食品の消費量も伸びています。

冷凍食品の出荷量の推移(一般社団法人 日本冷凍食品協会調査)。青が家庭用。
(引用元:https://www.reishokukyo.or.jp/statistic/quantity-usage/)

10年前と比べると、家庭用の冷凍食品の出荷量は約1.4倍になっています。つまり、各家庭の冷凍庫の中身も、約1.4倍になり、パンパンになっていることでしょう。(実際に「セカンド冷凍庫」は日経トレンディの「2022年ヒット商品ベスト30」に入っています。)
これが、冷凍パスタがすでにあるにも関わらず「パキット」が支持されている理由です。冷凍庫のスペースが限られている中で、手軽な上に、冷凍庫のスペースを使わない「パキット」が重宝されているわけです。元々乾燥しているパスタは常温で保存ができるので、潜在的には冷凍庫のスペースを使う納得感が低いでしょう。

競争から避けた見事な商品

よく、キッチン家電は”場所の取り合い”だと言われます。日本の住宅事情の中で、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器などの必需性の高い家電が置かれた後、残りのスペースに置こうと思ってもらえるかどうかが売上を決めるからです。冷凍食品においても、同様のことが起きていて、冷凍庫の容量には物理的に限界があり、その中に入れてもらえるかの競争になっています。
もし、永谷園が冷凍パスタを発売していたらその競争の中に飛び込むことになりますが、「パキット」は常温保存できるということで、冷凍庫のイス取りゲームに巻き込まれることはありません。
商品の企画時に保存のことまで検討されていたかはわからないですが、結果的に独自のポジショニングに収まった、見事な商品だと思います。

なお、永谷園は過去に茹でた麺に混ぜる、「まぜ麺ソース」という商品を展開していました。これはお茶漬けを麺でトレースしたような商品でしたが、そこからパキットで本質的な価値に商品を進化させたあたりも面白いですね。

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