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ヒットの法則:強み一貫の法則

今日もご覧いただきありがとうございます。
毎年、車名別新車販売台数ランキングが発表されますが、2022年最も売れた自動車はホンダ・N-BOXで、20万2,197台となっています。
トヨタ・ヤリスの16万8,557台を上回り、軽自動車が日本で最も売れている自動車となっています。
このヒットの裏側にはどんな背景があるのか、見ていきたいと思います。

ホンダN-BOXの例

ホンダ・N-BOXは、ダイハツ・タントやスズキ・スペーシアなどに代表される軽スーパーハイトワゴン市場に投入された軽自動車です。
初代N-BOXは2011年に発売されましたが、この時、すでにダイハツはタントを、スズキはスペーシアの前身になるパレットを販売していました。
後発となるN-BOXは、何が要因となって、今の販売台数1位の座に上り詰めたのでしょうか。

「強み一貫の法則」

N-BOXは「会社の強みを一貫して活用した」事例だと思います。
商品企画に魔法は存在しない、ということを感じさせる、当たり前のことをやったのがN-BOXの勝因だと思います。
(日頃、自動車メーカーのマーケターは優秀だと感じることが多いです。)

室内の広さで戦った初代

初代N-BOXが軽スーパーハイトワゴン市場参入にあたって、活用した強みが「センタータンクレイアウト」による室内の広さです。この「センタータンクレイアウト」はホンダが乗用車のフィットで開発したもので、ガソリンタンクを車両後方から、前席の下に移すことで、室内を広くする設計手法です。
特に室内高が高く、当時のタント・スペーシアよりも高い、1400mmを実現しています。この数字、実は当時のトヨタ・ノアよりも高い数字で、乗用車並みの空間になっています。
市場全体で見ても、トヨタ・ノアやアルファード、日産・セレナ、といった背の高いミニバンの人気が高まってきた時期です。乗用車で開発した強みによる室内空間の広さはニーズもうまく捉えられています。

安全性で戦った現行型

初代N-BOXは累計で73万台の販売を記録、軽自動車の販売ランキングで1、2を争う車種となりました。
一方で、ライバルも室内高を高くしたり、室内幅を広くしたりとモデルチェンジして対抗してきます。
ここで、ホンダは室内の広さという強みは残しながら、別の軸での戦いを挑みます。
それが「安全性」です。2017年にモデルチェンジした現行型のN-BOXではグレードを問わず全車に「Honda SENSING」が搭載され、ライバルとの差別化を図られています。
「Honda SENSING」もセンタータンクレイアウト同様、乗用車から搭載された技術です。世界中で自動車を販売するホンダと、日本国内でしか売れない軽自動車中心ダイハツ・スズキを比較すると、ホンダは技術開発に掛けられる投資も大きく、その回収も容易だと思われます。
初代、現行型ともに、乗用車を作っているホンダ全体の強みを一貫して活かして戦ったのが、後発ながら販売台数でトップに立つまでになった要因と言えるでしょう。

初代・現行型に共通しているもの

乗用車で開発した強みを軽自動車で展開する、というのがN-BOXが他社に勝てた理由ですが、その背景には、開発コンセプトの違いがあるように感じます。
ダイハツ、スズキは、もともとミラやアルトといった小型の軽自動車から、ムーヴ、ワゴンRを経て、タント、パレットとだんだんとサイズアップしてきた背景があります。ダイハツ、スズキが目指したのは「大きな軽自動車」というコンセプトだと思われます。
それに対して、乗用車をメインにしているホンダがN-BOXで目指したのは「小さな乗用車」だと思われます。
乗用車に乗りたくても、維持費や保管スペースの問題、加齢による運転感覚の衰えから、軽自動車を選ばざるを得ない人もいます。特に、コロナ禍や、物価の高騰から、維持費を抑えたい人は増えていることでしょう。彼らが乗りたいのはあくまでも維持費が軽自動車の乗用車で、装備も充実したものを求めるでしょう。
N-BOXはライバルに比べると価格が高いのですが、軽自動車に囚われず、ニーズに的確に応えた結果、乗用車も含めた新車販売台数ランキングで一位になれたものと考えます。
(画像出典:ホンダ公式HP https://www.honda.co.jp/Nbox/ )


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