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未発売映画劇場「サント対フランケンシュタインの娘」

絶賛続行中のサント映画完全チェックの旅、第31弾の今回は「Santo contra la hija de Frankestein」英語題では「Santo vs. Frankenstein's Daughter」 1972年の8月にメキシコ公開。

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お気づきかと思いますが、スペイン語タイトルでは「Frankestein」 これじゃ「フランケンシュタイン」じゃなくて「フランケシュタイン」じゃないですか。ふたつめの「n」がないんだよね。ポスターもそうなってるでしょ。どうやらスペイン語ではこう綴るらしいのですが、理由は知りません。

ドラキュラ伯爵とはすでに対決したので、今回はもう一方の雄であるフランケンシュタイン譚がネタ。まあ誰でも考えつきそうですな。

なぜかメキシコにいるフランケンシュタインの娘であるフリーダ・フランケンシュタイン。親父さま同様に科学者で怪しげな研究に打ち込んでいる。研究テーマは不老不死。その秘薬を発見しているのだが、なぜかそのためにはある人物の血清が必要不可欠だとかで……はい、その人物がサントなのです。

いやしかし、かのヴィクター・フランケンシュタインに娘がいたとは知らなかったよ。そういえば以前に観たホラー西部劇「ジェシー・ジェームズ対フランケンシュタインの娘」ってのもあったな。いや直接の関係はないんだけど。【こちら参照】

ていうか、ヴィクター・フランケンシュタイン(ちなみに原作では博士でもなんでもない学生)は、新婚初夜に妻を自ら作り上げた怪物に殺され、復讐のために怪物を追う途上で死んでいるので、子どもはいなかったはずなんだが。おまけに娘がいたとしても、この映画のころにはもう100歳以上になっているはず(『フランケンシュタイン』がメアリー・シェリーに書かれ出版されたのが1818年)

そう思ったら、ちゃんと説明されますね。フリーダ博士(なのかな)は自らも不老不死の秘薬を使っており、薬の効き目が切れると妖艶な美女からミイラのような容姿の老女になってしまうのだ。

このフリーダ博士を演じるのはジーナ・ロマンド(Gina Romand)

覚えてますか? 以前の「サント対女吸血鬼の復讐」で、看板の女吸血鬼を演じていた、あの方です。

前回はあまりにも凄まじい顔面の女吸血鬼だったのですが、今回は美魔女的な女科学者を素顔で熱演。まぁ年寄りモードのしわくちゃメイクもありますが。

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1938年生まれというから、この映画当時は34歳くらいのはず。女盛りですな。そんな時期にこんな映画によくつきあったもんだ。

サント映画連続出演で懲りたのか(?)このあとは主にテレビに活動の舞台を移し、IMDBによれば2009年まで出演作品があるようだ。ちなみに現在も83歳でご存命らしい。

さてこのフリーダ博士、なかなかスゴ腕のようで、不老不死の研究だけでなく、人造人間の研究もちゃんとやってるのです。親父さまの作品にそっくりなユニバーサル系デザインの「フランケンシュタインの怪物」もばっちり作り上げてますが、もう一体、ゴリラの何かを移植した怪人も製作しています。

おお、これはあの名作、メキシコ・ファンタスティック映画のミッシングリングである「獣人ゴリラ男」(1956年)へのオマージュなんではなかろうか。【こちら参照】

いや、そのわりにはあつかいがちょっとヒドイけど。サント抹殺に失敗したゴリラ男くんは博士の命令により助手たちの手であっけなく射殺されてしまうのだ。不憫じゃないか

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モノクロ写真の檻の中がゴリラ男、着色写真が人造人間

さて、サント映画に欠かせない見せ場であるサントの試合シーンですが、今回も2試合が用意されています。

まずは映画冒頭、謎の赤覆面レスラーとの対戦。なんとこれがサント映画史上初めてのテレビマッチなのです。それも、日本のプロレスではほとんどなかったスタジオマッチというやつ。

日本ではプロレス団体が主催する試合を会場から中継するスタイルがほとんどですが、往年のアメリカン・プロレスではテレビ番組用に、スタジオにリングを組んで少数の観客の前で行なう試合を収録するスタジオマッチがプロレス番組の主流でした。

そのへんがメキシコではどうだったかわかりませんが、この映画冒頭のサント対赤覆面の試合は、これまでの試合会場でのライブ収録とは違って完全なスタジオマッチ。実況アナウンスもついていて、その試合を今回のヒロイン(演じるのはアネル〔Anel〕)がテレビで熱狂的に視聴してます。

前作の試合シーンに実況アナウンスがついたのが画期的であることを指摘しましたが、やはりこの時期にメキシコではテレビのプロレス中継が定着したようですね。

そして映画のラスト、すべての事件が解決したあとに脈絡なく挿入されるもう1試合は、会場でのライブスタイル。

この試合の相手が、ヤマグチなる日本人レスラーという設定らしいのでがぜん興味が湧きます。当時メキシコに修行中だった日本人レスラーなんだろうか?

結論からいうと、どうやらそうではない模様。見た目もちっとも東洋人っぽくないからねぇ。実況アナウンスでは「ハポネス」と連呼しているけど。イスマエル・ラミレス(Ismael Ramirez)とゴリアテ・アヤラ(Goliat Ayala)の2人がルチャドールとしてクレジットされているので、そのどちらかが正体なのでしょうね。

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今回観たDVDですが、安めの中古品を買ったら、なんかベタベタとバーコードのラベルが貼ってありました。どうやらサンディエゴ郡図書館の所蔵品が放出されたものだった模様です。あちらの図書館はこんなものも収集するんですかね(笑)

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