#88. 腹が減っても、優しくはできる
つい最近、久々に友だちと外食をしたが、入ったピザ屋の店員が着ていた T シャツの背中に "Are you hangry?" と書いてあった。
もちろんこれは、制作者による hungry のスペルミスだろうが、実は hangry という単語自体は、近年使われはじめたスラングとして存在する。
2018 年には、英語辞典における最大の権威である Oxford English Dictionary にも、新たな単語として書き加えられた。
hangry というつづりから見ても明らかな通り、これは hungry と angry の合わさった言葉で、意味するところは「空腹のせいで不機嫌な」様子である。
空腹にご立腹。まさに hangry ですね、クレア。
日本語でこれに対応する言葉はちょっと思い浮かばないけれども、漢字で書くと「空腹」と「立腹」で、どちらも「腹」を使うのがすこし面白い。
空腹であることはやはり、不機嫌の大きな原因なのだろうか。
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学生時代、ぼくはお弁当屋と書店でアルバイト経験があるが、お客さんからのクレームの数は圧倒的にお弁当屋で働いていたときの方が多かった。
なにもしていないのに、カウンターの向こうから「お前舐めてんのか?!」とチンピラみたいなあんちゃんに怒鳴られたこともある。
「舐めてないです。あなたの方こそ、飴でも舐めて、機嫌を直したらどうですか」...... とは言わなかった。
むかしから「酔うと本性が出る」などと言うが、空腹についても言えるかもしれない。酔ったりお腹が空いているときにキレがちな人は、そっちの方が素の自分である。
反対に、酔ってますます知的になる人や、空腹でいても店員さんに丁寧な対応を忘れなかったりする人はいるので、どうせ人格が変わるというなら、ベクトルはそういう方向でありたい。
腹が減っても優しくはできる。
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空腹時こそ、紳士であれ。hungry と handsome(ハンサムな,寛大な)を合わせて、これを hundsome と呼ぶのはどうだろう。
みなさんは、空腹のときでも優しい心を保っていますか?
Are you hundsome?