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「本当に役に立つ仕事」がしたい

 宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』、そのアニメ映画版を何となく観た。登場人物が二足歩行の猫のやつ。

 飢饉に追われるようにして街に出たブドリは言った。

「どんな仕事でもいいんです」

 続けて、


「とにかく、本当に役に立つ仕事がしたいんです」

 全然どんな仕事でもよくない。人(猫)を食い物にするような詐欺まがいの仕事だったら、飢えていたってきっとブドリはやらない。役に立つ仕事でなければしたくない。本当に役に立つことなら何だってする。

 仕事というのはそういうものかもしれない。世のため人のためというほど大層なことは考えていなくても、例えば接客業ならお客さんに喜んでもらえたとか、自分が役に立っている感覚は重要だ。具体的に何をするかは、実はそれほど重要ではないのかもしれない。

 僕は正直、今の仕事にそういうものをあまり感じられていない。やりたい仕事というより、苦手なことをあまりしなくて済みそうな仕事を選んだ。向いているとは思う。でもこの仕事は本当に必要なんだろうかと虚しくなる時もある。AIに取って代わられる未来が現実味を帯びてきてからは特に。

 やりがいを感じられなくても食い扶持は稼げる。それはそれで大切なことだ。モチベーションの維持は難しいが、働くのはお金のためと割り切ってもいい。

 お金にならなくてもいい、「本当に役に立つ仕事」がしたい。でも自分にとって無理のない範囲でできることとなるとかなり限られている。

 せめて誰かの肥料になりたい。自分が受け取った何かを後の人に遺したい。

“私のようなものは、これからたくさんできます。私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから。”

宮沢賢治全集

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