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10月1日~15日の詩(Nos. 152~169)

作品No. 152(10月1日)「痛む人


作品No. 153(10月1日)

夕霧の森の土に蝕まれ輪廻の苗代となりたい母性


作品No. 154(10月3日)

もしも過去に戻されて
やり直しなさいと言われたら
僕は絶望で死ぬだろう

やり直しても
変えられはしない
頑張っても
同じ失敗をする

だってその時の自分は
精一杯にやったのだから
怠けていない
疲れていただけ
目を逸らしたのは
怯えていたから

そのままの過去で十分だ
今を生きるので十分だ


作品No. 155(10月5日)

現実の光は
あまりに強く
脳を刺すから
目蓋を閉ざす

網膜に焼き付いた残影

すとんと落ちた空想の世界は
楽園なんかじゃなく
主人公の少年は
虐げられいたぶられ壊されて
狂気の中に永遠の幸福を見る

喪失の否定

狂気を受け止める
優しい世界

目を開く
あの子はもういない
僕は再び目を閉ざす


作品No. 156(10月8日)

強い言葉で責められないのは
己の正しさに自信が無いから
優しさのせいなんかじゃない

正しさを信じられないのは
いつも正しくありたいから
心の弱さなんかじゃない

戦えないのは
怖いからじゃないわけじゃないけど
互いに潰し合うことなく
共に歩める目的地を
最後まで探していたいから


作品No. 157(10月8日)「子供の親
作品No. 158(10月8日)「親の子供


作品No. 159(10月8日)

劇中劇 批評家気取りの君もまた舞台の上だ覚悟はいいか


作品No. 160(10月10日)

天に阿修羅に餓鬼畜生
パッチワークのこの世界
同じ言葉が通じないまま
飛び交い編まれたこの世界

畜生と手を取り合おうと天が言う
畜生は食い物だろうと修羅が笑う
食べたい下さいと餓鬼が泣く
畜生の耳にはおとぎ話

天の国は地上にあり
地獄の沼もまた地上にあり
どこにも無いから越せない境界


作品No. 161(10月11日)

既製品の言の葉の包丁を

空気よりも薄く
(一滴の血も零さないように)

天使の羽根よりも鋭く
(痛みさえ届かないように)

茶碗の底で研ぎ澄まそう
自己防衛の襞を貫き
君と刺し違えるために


作品No. 162(10月12日)

詩人はみんな露出狂さ
心のいちばん奥の小部屋を
ガラス張りにしてしまうんだから


作品No. 163(10月13日)

腹を括れば何だってできる
どんな恥も笑って受けられ
顔見知りだって撃ち殺せる
見えない首輪さえあれば

そんな強靭さなんて持たずに
トラックの荷台が嫌で死ぬ
シマウマになれたらよかったのに


作品No. 164(10月14日)

好きな曲の歌詞があり
好きな小説がありながら
お墨付きが無い相手と見るや
ポエマー痛いと蔑む君は
心の本当を語る奴が
隣にいるのが怖いかい
命懸けで生きていないと
責められるようで気まずいかい

いいさ いいさ
それは君の防衛本能
どこまでも逃げてみせてくれ
人生から逃げ切れるものならね


作品No. 165(10月14日)「弱い鹿と強い猫


作品No. 166(10月14日)

電信柱の陰に隠れて
丸めた手紙を投げつけて
雑踏に紛れる狡さに安住するのは
僕の犬への責任です

高が犬でとお思いでしょうか
でも そう 高が犬だからこそ
13.5kgの命と幸福を
この薄い肩にずっしり乗せて
休まず独りで立たねばならない

そうですこれも言い訳です
臆病な僕を嗤ってください


作品No. 167(10月15日)

世間じゃやっていけないよって、
その世間を作ったのはあんたらじゃないか

世の中そんなもんだって、
その世の中を作っていくのは僕らじゃないか


作品No. 168(10月15日)

頭に台風が来たものだから
虎の軍医に診せたんだ
そしたら背骨をコツコツ叩いて
透明な怒りの沈着だとさ
怒ってないって抗議したけど
透明な怒りは正直者にしか見えない
優しい人には見えません
誰より自分に嘘吐きだからって
丈夫な傘を処方されたよ
台風の目まで風に乗り
丸い空を見ていなさいと


作品No. 169(10月15日)

人は言葉を進化させ
機械のように退化した
合理的法則が監視する
科学的社会で

素粒子の不確定性が
科学的な真理なら
機械人間は科学的ですらなく
低解像度の獣の模型

土を故郷と焦がれるのは
人が捨てた獣の情緒
傷付いた友に体温を分ける
忘れられた獣の技術

いま望むのは
気高き獣への進化

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