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『大統領選と言う名の祭-6: filter bubble(および私の情報収集法)』

バイデンが勝利宣言を出し、メディアはすでに「祭の後」的雰囲気を漂わせてますが、トランプはまだまだ敗北を認めていませんねぇ。

これ、今回の選挙戦の象徴のような出来事だなぁ、と感心しちゃいます。つまり、両陣営およびその支持者が見ているリアルがふたつ別にあるような。パラレルワールドがあって、一つはバイデンが勝ったリアルで、もうひとつはトランプが勝ったリアル。現実は一つのはずなのに、おかしかな~い?

選挙前の最後の討論会でコロナについて話が出たときに、トランプは

Trump: We are learning to live wit it. Americans can easily defeat the virus.

と言い、バイデンは

Biden: People are learning to die with it. It’s a dark winter ahead.

と主張しました。リアルはどちら?と聞かれたら、どちらを選ぶ? その答えは、今パンデミックはどんな状態にあり、これから先どうなっていくのか現実を確認して答えてる?それとも、希望的観測あるいは悲観的予測で答えてる?

人は多かれ少なかれ、自分にとって心地よいことにしか耳を傾けない生き物。ネットでは、自分の知りたい情報にヒットする確率が高くなるように検索サイトのアルゴリズムが組まれちゃってます。一度検索したものが何度も何度も広告に上がってくるのはそのせい。フィルターで情報が選別されちゃうため、シャボン玉の泡(バブル)の中にいるように、自分が見たい情報だけの世界になります。「フィルターバブル」というやつです。その結果、パラレルワールドのように、(似非)リアルが複数できてしまうんですよね。

Filter bubble: a situation in which an internet user encounters only information and opinions that conform to and reinforce their own beliefs, caused by algorithms that personalize an individual’s online experience


今回の大統領選では、偽情報が大量に出回り、どうやって信頼性ある情報を取るのか?という課題が残ったように思うので、参考までに私のアメリカニュース情報収集法をまとめておきます。英語の勉強法としても有効です!(若干上級者向けですが~)

例えば、トランプやアメリカ政治についてのニュースを追いたいとします。


1.日々の基本

Media Bias 評価ウェブでもっと信頼性が高いと言われるAP通信Reuters通信のニュースサイトを読む。日本語で読みたければ、ロイター通信と、それから同じく高評価のBBCをお勧めします。ここさえ押さえておけば必要最低限の情報は入手できます。

*毎日定点観測的にあるトピック(例えばトランプと言うトピック)を選んで、流れを追うことをお勧めします。ニュース勘や時事知識が付いてきて、「今、これが起きてるんだな」というどっしりした感覚がでてきます。すると偽情報に惑わされなくなります。また、同じ言葉が繰り返しでてくるので語彙力もつきます。

*読んでる記事が「起きたことを説明」するものか、Opinion(社説・寄稿文)かを意識すること。間違った意見ではなくとも、寄稿者の解釈は入ります。また、「この意見ちょー納得だわ」と思う記事でも、自分の意見がなくなって他人の意見に染められていく可能性はあります。気が付けば「わかったようなことを言ってるけど、全部誰かの意見を言ってる自分」になってることもあります。なので「事実を追っているのか、誰かの意見を読んでるのか」を意識しながらニュースを追うのは大切。

2.最新ニュースを知りたいとき

その日その時間帯に何が起きているのか最新情報を追いたいときは、Googleに検索キーワード(Trump, Presidential Electionなど)を入れてNewsタブを選択し、出てくる見出し一覧をザーッと読む。気になる記事があればクリックして深く読む。日本語の場合は4を参照ください。

*毎日見出しを眺めてると、時事トレンドが見えてきます。また、見出しを比較しつづけることで、どの新聞社が共和党寄り(右派)か民主党寄り(左派)かがはっきりとわかります。CNN、Newsweekはかなり左、FOX, New York Post(NY タイムズではない)はかなり右なので、政治記事はそこをさっぴいて読まないと後でがっかりします。アメリカのメディアの左右分断は日本人が想像する以上に大です。(つまり、前者はバイデンなど民主党支持者にとって心地よいニュースを、後者はトランプなど共和党支持者が聞きたいニュースを提供するので、後々展開がずれていくことも多い。)左派のメディア会社はたくさんありますが、右派は少ない。The Hill, Wall Street Journalあたりが右派のなかでも比較的まっとうです。

*アメリカの記事は、基本記者の名前が入ります。それがないのは、裏がちゃんと取れてない証拠と思った方がよい。

この記事どうなんだろ?と思う場合は、Wikiでジャーナリストの素性を確認すると、極端な意見の持ち主であったり、利害関係がある人であったりします。例えば、えらく親トランプな記事だなーと思って寄稿者を見たら、トランプの選挙キャンペーンマネージャーであったとか。こうなると「こりゃただの意見だ」ってことになります。また、Twitterで投稿をチェックすると、えらく偏った意見ばかり流してる人だということが判明したりします。

3.通勤や家事の時にPodcastを活用

アメリカのPodcastは星の数ほどニュース番組があります。通勤時間、家事をしながら好きな時間にニュースを聞けるので便利。英語の聞き取りにも有効!

1日のニュースをまとめた番組としては、NPRのUpfirst, BBCのGlobal News Podcast(アメリカだけではなくヨーロッパ含め幅広い)、Wall St. JournalのWhat's newsあたりがおすすめ。
金融ニュースならば、Marketplace

また、時事ニュースの背景を深堀したいときは、NY TimesのThe Daily(あるトピックの背景や歴史を解説してくれます。すごく知識がつきます)、Wall St. JournalのThe JournalBBCのThe Inquiryがおすすめです。

NPRとNY Timesは少し左寄り、WSJは少し右寄りです。毎日両方とまでは言いませんが、時々混ぜて聞くことでバランスが取れます。またNY TimesとWSJのネット記事は有料ですが、Podcastは無料です。

4.日本語でNewsを確認

上記2に似た作業だが、GoogleのNewsタブに日本語でキーワードを入れる。「トランプ」とか「大統領選」とか「アメリカ」とか。すると、2で上がっていた大きなネタが、半日遅れぐらいで日本でも取り上げられてるのがわかります。2の再確認的作業です。NHKのウェブニュースを読んでおけばいいかな、と言う感じです。Yahoo!の記事もよくヒットしますが、Yahoo!は他から記事を引っ張ってきてるので、ニュース源を確認する必要があります。あやしいメディアの記事は読む必要なしか、読んでも「参考」とか「エンタメ」と思っていたほうがよい。

これをしばらくやり続ければ、かなりの情報通になれます。


また、やってはいけないこととして・・・

5.特化したネタで「証拠探し」的検索をしない

例えば「トランプ」ではなく、「トランプの嘘」「バイデンの不正」というような検索をすると、それを主張するニュースにたどり着き、「やっぱりトランプは嘘つきなんだな」「実はバイデンは不正を働いているんだ」という罠に落ちます。これぞフィルターバブルってやつです。こういう検索をしたい場合は、AP、ロイター、BBC、NHKなど、(完ぺきではなくてもそれなりに校正が入る)中立度の高いサイト内で検索すべし。

6.個人の投稿は噂と思う

Facebook/Twitterで流れるニュースは、「噂」ぐらいに思っていたほうがよい。なぜなら、FacebookやTwitterでは嘘にあたる確率が高すぎるからです。Twitterにおいて、嘘は事実の6倍の速さと規模で拡大するという大学の実験結果があります。正確なニュースを収集するには効率が悪すぎるんですね。

ジャーナリストや専門家ではない私には、いちいち生情報を集め、それが正しい、間違ってると判断するリソースも時間もありません。だったら、信頼性が高いと評価された報道機関のプロの記者が集めてきて、編集者がお墨付きをだした記事だけを読むほうが、効率がよいと私は思っています。

7.陰謀論は相手にしない

アメリカは陰謀論大好きです。四六時中でてきます。が、陰謀の存在は証明できません。ないものをないと証明できないからです。不毛なので、始めから相手にしない。(か、エンタメネタと思って笑うべし。)ただし、「なぜこんな陰謀論が出てくるのか?」を考える必要はあります。


最後に。

なぜフィルターバブルにはまってはいけないか?バブルの中は快適です。でも、見てるのは現実ではなくて似非リアルです。結果、「今後世の中はこうなっていくだろう」という予測を外す可能性が高くなるし、最悪、フェイクニュースや扇動する誰かに騙される可能性が高くなります。すると、数年経った後で「こんなはずじゃなかったのに」ということになりかねない。つまり、知らず知らずのうちに情弱になってるというわけです。

情弱にだけはなるまい。でしょ?ちなみに情弱と貧困は双子のセットです。貧困から抜け出したければ情弱になってはならないし、逆もまた真なり。良質な情報を見抜く目があれば、豊かになれます。

そのためには、良質な情報を見極める勘は必須スキルです!

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