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「一国一城の主」精神 ~日本の自営業者の推移~

日本の総雇用のうち、約1割は自営業者。
逆に言えば、約9割は自営業者ではない。
雇用されている、と言えます。

2024年の総人口は約1億2千万人台。
そのうちの労働人口は約6千万人。
この約1割、ですから、
「約6百万人」が自営業者です。
(ただし、家族従業者を含む数ですから、
真正の自営業者はもっと少なくなる)

読者の皆様はどう思われましたか?
思ったより多い? それとも少ない?

「正直、他国のことがわからないので
多いのか少ないのかわかりません…」

では、他の国の割合を見てみましょう。
日本と人口がほぼ同じメキシコとエチオピア。

≪自営業者の総雇用に占める割合≫
◆日本:約10%
◆メキシコ:約30%
◆エチオピア:約85%


日本は自営業者の割合が圧倒的に少ない。
裏を返せば、被雇用者が多く、
「人を雇用する会社が多い」とも言えます。

人口が違う国とも比較しましょう。
中国とアメリカ。

≪自営業者の総雇用に占める割合≫
◆日本:約10%
◆中国:約45%
◆アメリカ:約6%


…イメージ通りでしたか?

「自営業者」には自作農なども含まれるため、
農業従事者の割合が多い国は高い。
ちなみに、統計が取れる世界185か国のうち、
日本は170位になります(2022年度)。
ニジェールが1位、約94%。
カタールが185位で、約0.4%。

ドイツ、ロシア、アメリカなどは
日本より自営業者の割合が低い。
…いずれにしても、現在、
日本は世界的に見て
「自営業者の割合が低い国」なんです。

本記事では、その理由について
あれこれ考えてみました。

まず、自営業者、と聞いて
皆様はどんなイメージをお持ちですか?

「フリーランス? 専門家?」
「お花屋さんとか八百屋さんとか」
「商店街の店長さんたちですかね」
「マンガ家やユーチューバーも?」
「LinkedInで『起業した』と書いている方」

色んな方の顔が思い浮かぶ、と思います。
被雇用者ではない人。
つまり、会社員やサラリーマンとかに
当てはまらない人たち。


では、昔はどうだったのか?

戦後まもなく日本では
「農地改革」が行われましたよね。
自作農が増えた。
自作農=自営業者とも言えます。
自営業者の割合が高くなった。

しかし、1960年代の池田勇人内閣の頃、
「農業基本法」が制定されます。
日本は「加工貿易」で生きていく方向に
徐々にシフトしていく。

朝ドラの『ひよっこ』では、
有村架純さんが演じる主人公が
「金の卵」と呼ばれ地方から上京しました。
都会の工場で働く。
徐々に農村から都会に労働者が移っていった。

「3ちゃん農業」とも呼ばれて、
じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんが
農業をやり、とうちゃんは昼間は働く
「兼業農家」も増えていきました。
高度経済成長・安定成長・バブル期には
「会社」が増えていった。
被雇用者もだんだん増えていったんです。

…とはいえ、
読者の皆様が子どもの頃にはまだ、
現在より自営業者の保護者がいる子どもが
多くなかったでしょうか?
(と、これは皆様の年齢にもよりますね)

今から約30年前のデータを出します。
1991年の時点で、自営業者の割合は…?

「約22%」。

つまり、現在の約2倍です。
自営業者が半分に減ったことになる。
その推移はこちら。

◆1991年:約22%
◆2001年:約16%
◆2011年:約12%
◆2022年:約10%


どんどん自営業者の割合が減ってきている…?
原因はなんでしょう。
なぜ自営業者の割合が減ってきているのか?

一番大きな理由は、やはり
「バブル経済の崩壊による不景気」でしょう。

1991年までは「好景気」。
お金が世の中をぐるぐる回っていた。
小さな商いでも、それなりに儲かる。
町の小さなお店屋さんでもやっていけた。

しかし、景気が冷え込むと?
会社や店をたたむ人が多くなりますよね。
やっていけない、と子どもにも継がせない。

…でも、それだけか?

もちろんたくさんの理由がありますが、
「商店街」というキーワードから考えた時、
ある法律が思い浮かびます。

『大規模小売店舗法』の廃止と
『大規模小売店舗立地法』の施行
です。

『大規模小売店舗法』とは通称「大店法」。
1973年に制定され、1974年に施行された。
百貨店や量販店などの
「大型店」の出店に際して、
「大規模小売店舗審議会」(大店審)が
審査を行う(「出店調整」の)
仕組みを定めた法律です。

すごくはしょって簡単に言えば、

でっかいショッピングモールや
デパートがガンガンできたら
商店街の小さなお店が
やっていけなくなるので、
簡単には出せないように縛っていた法律。

これが外圧で廃止に追い込まれたんです。

1990年の日米構造協議。
当時は「日米貿易摩擦」が問題でした。
「大店法があると大規模なお店が
日本に出せない、撤廃すべし!」という圧力。

こうして1998年には大店法が廃止されて、
代わりに『大規模小売店舗立地法』施行。
店舗面積の調整が外されていました。

ゆえに、ここからでっかいお店が
各地にできるようになります。

例えば「トイザらス」。
その裏で、街のおもちゃ屋さんが廃業する。
(最近ではイオンとかコストコとか…)

大型店が増えれば相対的に
各地の商店街にシャッター街が増えます。
自営業者も減る…。

同時にこの頃、ロードサイドでは
「コンビニ」が増えていきます。
フランチャイズ方式。

傘下に入ったのは「パパママショップ」。
地域の小売の自営業者。
契約により形態はさまざまですが、
大企業に組み込まれたと言っていい…。

不況と大企業の拡大によって
各地の自営業者はどんどん減っていった、
とも言えるのです。

最後にまとめます。

本記事では日本における
自営業者の割合の推移と
その理由を考えてみました。

もちろん、被雇用者が悪い、自営業者が良い、
とは一概には言えません。
双方にメリットとデメリット・リスクがある。
人間、一人一人違う。
どちらが合っているかも人それぞれ。

…ただ、SNS隆盛、人生100年の現代では、
「自分で運用、自分で稼ぐ」という意識が
被雇用者であれ自営業者であれ
必要では…とも思うのです。

「一国一城の主」精神。
自分の個性を活かして、売り出す。

LinkedInには、優れた自営業者、フリー、
自立・自活しているユーザーの皆様、
個性的な「城主」がたくさんいます。
一社専従・被雇用者のユーザーの皆様は、
そんな方々のビジネスを
参考にしてみてはいかがでしょう?

自称「中年世代の複業クリエイター」の私も
参考にさせていただいております。
いつもありがとうございます!

※データはこちらを参考にしました↓

※個性豊かなLinkedInユーザーの皆様の
自己紹介文を私なりにリライトした
『Inaoなリライト』はこちらから↓

※平成時代のコンビニの数の推移はこちら↓
『銭と欲望の不夜城 ~平成とコンビニ~』

※ネット、コンビニ、キャリアの「網」から
現代社会を書いた記事はこちら↓

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