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離合集散の時代 ~室町・大正・令和の共通点~

室町時代、大正時代、令和時代。
比較的自由で混沌とした時代…
と言えるかもしれません。

本記事ではこの三つの時代を
比較しながら、共通する部分を
探ってみようと思います。
まず代表的な人物から考えてみます。

≪室町時代≫

室町時代は、鎌倉時代の次です。
初期は南北朝時代、後期は戦国時代、
と呼ばれることもあります。

室町、とは京都の一部分の呼び名です。
つまり京都が中心の時代。
それまでの鎌倉時代は鎌倉が中心。
京都に中心が戻ってきた。

京都の朝廷に対抗して、
東日本に政権の中心をつくった鎌倉幕府。
それに対して、
西日本の京都に向かって幕府を構えたのが
足利幕府(室町幕府)と言えます。

…東と西とに分かれて共存していた
幕府と朝廷が、再び同じ場所で栄える。

しかも、室町幕府の代表的な人物、
足利義満は「南北朝」をもまとめた人です。

彼の代表的な事績の一つに、
「金閣」をつくった、というものがある。
よく修学旅行で見にいくあれ、ですね。

木造で三階建ての建物です。
初層は法水院、寝殿造風。貴族の様式。
二層は潮音洞、武家造風。武家の様式。
三層は究竟頂、禅宗の仏堂風。

…ちょっと奇妙な作り方だと思いませんか?

和洋折衷、合わせるのならあり得ます。
「神仏習合」などというように、
日本風に作り変えることは
日本文化ではよくあること。
カツレツ丼料理のカツ丼、和風パスタなど。

しかし金閣はあえて「三つの違うものを
別々にして三段重ねにしている」
のです。
これすなわち、貴族(朝廷)・武士(幕府)、
その「上」に君臨するのが
中国風の文化を取り入れた足利義満、
という野望を示しているのではないか。
まさにマウンティング。そう言えば彼は
「勘合貿易」(日明貿易)なども行っていた。

…ですがこの足利義満、
1408年に50歳で急死してしまいます。
その後、室町幕府は混乱の歴史をたどり、
ついには応仁の乱、戦国時代へと
突入してしまうのです。

≪大正時代≫

大正時代と言えばすぐ思い浮かぶ言葉が
「大正デモクラシー」です。

明治憲法下とはいえ、
比較的、議会政治が栄えた時代、と言われる。
「普通選挙法」などもできた時代。
この大正時代を代表する人物が
「原敬」(はらたかし)です。

彼は、明治時代の切れ者の外務大臣、
日清戦争などを主導した陸奥宗光の
懐刀として活躍していきます。
実務を取り仕切り、国際情勢にも詳しい。

国内的には「薩長閥」とは無縁の盛岡出身。
しかし藩閥と完全に敵対するのではなくて、
うまく長州藩出身の実力者、
山縣有朋なども取り込んでいきました。

新聞社の編集長にもなっています。
「官民調和論」の男です。
政府と民間、政権とマスコミ、
その両方に顔が利いたのです。

官界財界報道界すべてのパイプを持つ。
「平民宰相」という看板、ブランディング。
何かと対立しがちな勢力のすべてを
まとめあげてマウンティングした人なんです。

…しかし1921年、東京駅において
暗殺されてしまいます。

彼の死後、率いた政党の政友会は分裂し、
「議会政治」「二大政党制」は
根付くことがありませんでした。

10年後の1931年に満州事変、
戦争の時代へと突入していくのです。

≪令和時代≫

令和、という年号が発表された時、
令和おじさんとして有名になったのは、
菅義偉元官房長官です。

時の権力者は、安倍晋三元首相。

内閣総理大臣をトータルで四代つとめて、
通算在職日数は3,000日を超えた。
日本の憲政史上、歴代最長です。
まさに「安倍一強」という時代でした。

…なぜ、強かったのか?

アベノミクスがキャッチーだった、とか、
野党がだらしなかったからだ、とか、
国民が長く続く政権を望んだ、とか、
色々と言われますけれども、

その大きな理由の一つに、内閣府の
「内閣人事局」の強化が挙げられます。
2001年には
200人弱だった内閣官房の定員が、
彼の政権下で
1,000人を超えるほど増員されている。
約五倍になりました。

簡単に言えば、
官僚の人事権を内閣が握った。
内閣に官僚が逆らえないようにする。
官房長官がにらみを利かせる。
アベノミクスが対外的なものとすれば、
内閣人事局増強が裏のからくりです。

自身の派閥は、後に100人を超えました。
言わば「決められる政治」を可能にした。
コロナ禍で引退した後も、
元首相として隠然たる勢力を握ります。

…ただ2022年に、凶弾に倒れた。
それ以後「決められない政治」が続き、
自身の派閥は分裂、解体していきます。


≪共通点≫

三つの時代を見てきました。
あえて代表的な人物を挙げて書きました。

◆足利義満
◆原敬
◆安倍晋三

「義満一強」「原一強」「安倍一強」
という時代を築き上げつつも、
志半ばで急死したという共通点があります。
その後、勢力が分裂し、
混乱に陥った…という状況も似ている。

ただし、これはあくまで人物に着目して
取捨選択して強調した書き方です。

それ以外の共通点に目を向けますと
いくつかのものが挙げられますよね。
例えば「経済と生き様の流動化」

室町時代には貨幣が全国で流通し始め、
自由な経済活動が生まれていきます。
各地で「市」が発達して、
「商人」が力を持っていく。

大正時代には、モボ、モガ、と呼ばれる
自由な生き方が生まれました。
第一次世界大戦では「成金」も生まれた。
明治時代とは少し異なる開放的な文化…。

令和時代には「ライフシフト」が
ベストセラーとなります。
SNSも発達して、定着していきました。
自分次第で自由に交流が可能な時代です。

政治面では多方面を包括する人物が現れ、
いったんまとまり、瓦解していく一方、
経済・文化面では
比較的自由な面があると言えましょう。

その前の時代、
鎌倉時代、明治時代、平成時代とは
ちょっと異なる「自由な空気」…。
それが充満しているのが、
三つの時代の特徴とも言えます。

最後に、まとめます。

本記事では、三つの時代の
代表的な人物とその共通点を
探ってみました。
もちろん、私なりの解釈です。

平安時代、江戸時代、昭和元禄など、
ガチっと安定、固まっていた時代とは
また違った「流動的な時代」

私たちは生きています。

読者の皆様は、どう解釈しますか?

今後、どうなると思いますか?
何から離れて、何と合わさっていきますか?
この時代を、いかに生きていきますか?


※金閣についてはこちらもぜひ↓

※足利義満についてはこちらの記事を↓
『義満と一休』

※原敬についてはこちら↓
『桂と原 ~太郎と敬という男~』

合わせてぜひどうぞ!

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