AIがなくても喰ってゆけます?
1、エレベーター
エレベーターを発明した人は、究極のものぐさ太郎だと思います。
箱の中にいて、待っていれば自動で上の階に行けます。下の階にも行けます。たぶん、エレベーターが世の中に初めて出てきたとき、他の人はこう思ったのではないでしょうか。
「自分で歩けよ!」
これが、荷物を運ぶだけならわかるんです。
茨城県は水戸市にある偕楽園。その中にある好文亭という建物。最後の将軍、徳川慶喜の父、烈公こと徳川斉昭が作った建物なのですが、ここに配膳用のエレベーター(手動)があります。
この記事によると、欧米でエレベーターが実用化されたのが1903年。好文亭の手動エレベーターは1842年。最古のエレベーターではないか、とのこと。好文亭は、急な階段が多い建物です。確かに、配膳のたびに昇り降りして足を滑らせたりしたら大変ですからね…。
それはともかく、荷物を持って階段を昇り降りするのが大変なのはわかりますが、わざわざ移動するだけのためにエレベーターを設置しなくても…、便利かもしれないけどコストが高い…、歩いたほうが早いんじゃないか…。おそらく、最初はこんな評判だったのではないでしょうか。
世の中を変える革命的な技術、テクノロジーというものは、まずは反発を持って受け入れられるのが常です。
で、今はどうでしょうか? エレベーターのない高い建物、ありますか? 普及して「あって当たり前」の存在になっている。
一説には、エレベーターは一階から二階に上がる技術ではなく、高層ビルの建設を可能にした技術、とも言われます。建物がエレベーターを必要としたというより、エレベーターが建物を変えた、つまり世の中を変えた。
優れた技術というものは、世の中を変えうるのです。
2、インターネット
これと同じ事例を、私たちは知っています。インターネットです。
『学習まんが 日本の歴史20 激動する世界と日本』は、平成時代を扱っています(もう平成時代も「歴史」となりました)。ここには、インターネットの歴史や特徴が、コンパクトにわかりやすくまとめられています。
かいつまんで引用していきましょう。
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インターネットが生まれたのは1969年。もともとはアメリカの国防総省が4台のコンピュータを結んでネットワークをつなげたのが始まり。1970年代には、アメリカの大学のコンピュータがネットワークでつながるようになり、1989年には日本の大学もこれに参加。1990年頃には一般の人でもインターネットにつなげられるサービスが始まり、1995年頃には『Windows95』が発売されて急速に普及していった…。
この本では、先生が生徒に語る形式でインターネットの特徴が明らかにされていきます。「インターネットのすごいところって何だと思う?」。
まず第一に「検索」。なんでも調べられる。第二に「利便性」。家にいながらにして取引ができる。第三に「発信」。ブログやSNSを使って、全世界に自分なりの表現を発信できる。
「今まではテレビやラジオ、新聞、本なんかで限られた人しか情報を発信できかなかった。でもインターネットではだれもが情報の送り手になれる」
先生は、このようにインターネットが社会や暮らしを大きく変えたことを「第三の革命」と呼ぶ人もいる、と紹介します。農業革命(定住)、産業革命(大量生産)に次ぐ、第三の革命(情報革命)であると。
「じゃあ社会がどう変わったのか考えてみましょう」
物流の変化。生産者→問屋→小売店→消費者の流れが、生産者→消費者のように直接取引できることが容易となった。世界中からモノなどを買うこともできるようになった。政治の変化。インターネットでの選挙が解禁され、オバマ大統領などのように、徹底的にインターネットを使って大統領になる人が出てきたり、アラブ諸国の革命の引き金になったりした…。
「しかし、インターネットには危険な一面もあるんだ」
フィッシング詐欺、サイバーテロ、闇サイト、学校裏サイトでのいじめ、個人情報の流出、他人を傷つける言葉や嘘の横行、目の前にいる人との会話が少なくなる…。
「わたしはインターネットは自転車と同じだと思いました。なぜなら、便利で楽しいけど、いろいろと注意しないと危ないからです」
と、いかにも学習まんが的にうまくオチをつけて、まとめています。
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どうでしたか? ま、そんな感じだよね、と思いましたか?
しかし、これは「インターネットの歴史と特徴」を、発達・普及した現在から振り返っているからこそ分かることであり、リアルタイムで進んでいる時代には、海のものとも山のものともわからなかったのではないでしょうか。インターネットの将来性に気付き、ビジネスに大々的に応用することができた会社は、現在大企業に成長しています。
有名なのが「GAFA」です。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をとった造語で、巨大IT企業4社を表します↓。
おそらくインターネットが世の中に出た最初は、エレベーターと同じように、「便利かもしれないけど…本当に必要?」と懐疑的な人が多かったと思います。それが、情報+ビジネスとなり、ビジネスモデルや巨大IT企業が生まれたことにより、「あって当たり前」の世界になっているのです。
3、AI
それでは、AI(人工知能)はどうでしょうか?
最初の頃のエレベーターのように、「何それ?」と思いませんでしたか?
最初の頃のインターネットのように、「便利だけど、どうビジネスに結びつくの?」と思いませんでしたか?
正直、すごい技術なんだろうな、とは思えるものの、具体的にどうなるのか、世界がどう変わっていくのかは、想像がつきにくいと思います。私もそうです。新しい技術というものは、ビジネスと結びつき、普及していって初めて、後になって振り返って初めて、世の中を変える画期的なものだったんだなあ、と思えるものです。
おそらく、「学習まんが 日本の歴史 令和時代」が刊行されたとき、インターネットと同じように、「AIの歴史と特徴」が先生と生徒との対話形式でわかりやすく説明されるのではないでしょうか。
では、そろそろネタバレです。
今回のnote記事は、東大の松尾豊教授の『AIバブルの崩壊は、いつか起きる』という記事の一部を、私なりに解釈したものです(ごめんなさい、会員登録していないので、記事は全部読めてません)。最初の導入、エレベーターとインターネットとAIを比較して挙げるところが、さすがの発想だなと感銘を受けて、この記事を書いてみました。よろしければどうぞ↓。
4、AIが無くても(まだ)喰ってゆけます。
現在は、特にAIがなくても大丈夫な世の中です。ですが将来的には、エレベーターやインターネットのように、AIがない世界など考えられなくなるのでしょうか? 皆さんはどう思われますか?
最後にもう1つネタバレを。今回の記事のタイトルは、この本から取りました↓。『きのう何食べた?』でも有名な、よしながふみさんの漫画です。すっごい食べ物が美味しそうなので、もしよければぜひ↓。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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