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車の通りもまばらな山村に、
ナビがあってもたどりつけないような
隠れた蕎麦の名店があります。
あるんですよ。

店名は、伏せます。

メニューは、2種類のみです。

蕎麦オンリーで、天ぷらなどは、ない。
ましてや「蕎麦屋のカレー」なども
あるわけがない。

ワンオペでの営業です。
接客はあまり良い、とは言えない。
というか、ちょっと悪め…?

男性の店長、俺が掟だ、的なお店でした。
一人か二人かの来店に限られており、
「グループ来店はご法度」なのです。

調理も平行では行わずに、
一組ずつ、一つずつ、進めていくために
提供はとてもゆっくりです。
席もたったの二組分しかないため、
三組めからはひたすら待つことになります。
1時間待ちはざら、とのこと。

いわゆる街中のチェーン店や
愛想の良いおかみさんがいるような
大衆食堂とは正反対
なのです。

過剰なサービスは、全くありません。
むしろお客の方が、気を遣うほど。

子どもの入店も禁止されておりまして、
ネット上のクチコミには
賛否両論が乱れ飛んでいます。
すっごく批判しているクチコミも、多い。
「せっかく山中に来たのにこれはないわ~」とか
「こんなのは飲食店ではない」とか。

…ただ、そういうお店を
経験してみると、ですね。

逆説的に、お客に気を遣って
色々と快適な接客に
努めていくお店の良さと、
そのための気苦労の大変さを
想像することができます。


ぶっきらぼうな接客に接して、
初めて、快適な接客の良さが、わかる。
人はいつしか慣れてしまって、
快適な接客、スマイルゼロ円が
「当然のことだ」と思い込み、
その裏側にある気苦労を想像しなくなる…。

ただ、誤解を招かないように書きますと、
このワンオペ蕎麦屋を
ディスるために本記事を書いている
わけではありません。

蕎麦の味は、とても素晴らしかったのです!
「どうだ!」とばかりに出す店長の顔が
誇らしげにすら、見えた。

ワンオペなので、人件費もかからないでしょう。
『怖いもの見たさ』もあるでしょうが
山中なのにお客も途切れずに来ていました。
たぶん、悠々と店長は無理せずに、
自分のペースでやっていると思われます。

これはこれで、一つのカラー、
キャリアなんだな
、と感じました。
飲食店は、店長の「王国」でもあるのですから。

全く、お客に媚びない。
マイルールを貫く。
嫌なら、食べなくてもいい。

自分にできる範囲でしか、接客しない。

『いらっしゃいませ〜!』『はい、喜んで!』
などの、マニュアル通りのチェーン店的接客に
慣れている身にとしては、
なかなかに刺激的な経験だったのです。

良い悪い、というよりも、
私は、これもありかな、という気がしました。

あまりにサービスを良くすると、
あまりに過剰な接客をしてしまうと、
逆に勘違いして、甘えて図に乗ってしまう
お客もいるでしょうから…。
(もちろん、最低限の配慮は必要です。
このお店も、決して不愉快なレベルではない。
むしろ、自然体、という感じでした)

時間に余裕がある時しか来れない。
自分と蕎麦にとことん向き合うような
ストイックなお店。

頑固一徹な『お山の大将』のお店!

繰り返しますが、
蕎麦は、とても美味しかったです。
塩、つゆ、わさび、大根おろし、
もう全部、美味でした。
蕎麦湯もとろとろで絶品!

でも、妙な緊張感がありました。
あまり、気は休まらなかった。

わさびや大根おろしのせいだけではなく
ピリッとした感じを受けます。
何だか戦場で食べているような
気になったことも、正直に書いておきます。

このお店に、誰かと一緒に
行く気持ちにはなりませんが、
(同行した方の気分を
害させてしまっては悪いので…)

たった一人でこっそりと行って、
蕎麦を無心に味わうにはいいお店。


読者の皆様は、こういうお店に
入ったことはありますか?
皆様の心の中に「詳細は教えられない
秘密のお店」は、ありますか?

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