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地方の風景の変化 ~四つの転換を踏まえて~

1960年代の「エネルギー革命」
1970~80年代の「モータリゼーション」
1990年代の「コンビニ普及」
2000年代の「平成の大合併」

戦後日本の「地方」の風景は、
これらの現象によって
大きく変わっていきました。

本記事では、この四つの転換について、
まとめて書いてみたいと思います。

◆エネルギー革命(1960年代)

「石炭」から「石油」へ!
主要なエネルギー源が、変わりました。

それまで「蒸気機関車」いわゆる
「SL」に代表されるように、
石炭を使って機械を動かしていたのに
石油を使って動かすようになる。

…となると、それまで
石炭を産出していた地域は
方向転換をせざるを得なくなりました。

そう、昔は日本全国各地に
「炭田」「炭鉱」があったのです。

例えば北海道の「夕張(ゆうばり)」
「炭鉱から観光へ」の
キャッチフレーズの下、
大規模なリゾート施設が開発された…。

例えば北海道の「猿払(さるふつ)」
閉山を機にして
新たなホタテの養殖に全力を注ぎ、
「獲る漁業から育てる漁業」へと
村ぐるみで方向転換していった…。

例えば福島県の「いわき」
炭鉱の鉱泉から発想して、閉山から
「ハワイアンズ」という
新たなスパリゾートをつくった…。

これらはあくまで代表例です。
大小無数の炭田、炭鉱地域が
方向転換を迫られていきました。

成功例もあれば、失敗例もある。

…猿払村は現在では、住民の平均所得が
全国市町村の中でベスト10に入るほど
「ホタテの村」として有名になっています。
その一方で、
「元は石炭産業で栄えたけれども
いまはさびれている」
という市町村が
全国各地には無数に存在しているのです。

◆モータリゼーション(1970~80年代)

さて、明治時代の近代化以降、
「鉄道」と、それを支える「石炭」は
交通の大動脈とそのエネルギー源として
活躍をしていったわけですけれども、

「モータリゼーション」の進展によって
その地位が脅かされていきます。
内燃機関、ガソリンで動く自動車。
「鉄道から自動車へ」の変化!

ただ、一気に変わったわけではない。

「三種の神器」と言えば
高度経済成長期の必須アイテムです。
「カー、クーラー、カラーテレビ」。
大衆車が生産されるようになり、
「一家に一台」のマイカーが普及する。
しかし、1970年頃はまだ
道路舗装などのインフラ整備が
追いついていませんでした。そのため、
交通事故も多く「交通戦争」と呼ばれた。

これが1980年代に入ると、
国鉄赤字問題、民営化問題なども絡んで
ストライキなども頻発し、
「鉄道離れ」が生まれていきます。
その一方、
田中角栄さんの日本列島改造論以来の
「道路整備」「高速道路網」が進んで、
徐々に貨物輸送の主人公が
鉄道からトラックへと変わっていく…。

となると、街はどうなるか?

駅前から郊外のロードサイドへと
中心地、繁栄地が変わっていきますよね。
車中心、駐車場必須、駅前の衰退…。
ガソリンスタンドの増加…。
東京などの鉄道網が完備された
少数の大都会や都市の中央部を除いて、
日本は「車社会」へと変貌していくのです。

◆コンビニ普及(1990年代)

1974年に、セブンイレブンの
1号店が開店しました。
1982年に、セブンイレブンは
全店舗に「POSシステム」を導入。

コンビニが全国的に
大々的に普及していったのは
平成時代、1990年代頃からです。

平成元年の1989年は「約一万六千店」。
これが2000年頃には
「約四万店」になっています。倍増以上。
全国に無数にあったパパママショップを
フランチャイズ化して、取り込んだ。
過疎地域にも積極的に進出。
「コンビニの無い市町村」が徐々に
無くなっていきました
よね。

これは地方の車社会化、道路網の整備、
トラック輸送網の整備と無縁ではない。
常に新鮮な商品を店頭に並べていく…。
時間に縛られない、柔軟な
自動車輸送だからこそできた芸当です。

お客さんも、自家用車でやってくる。

地方では「一家に一台」から、
「男女共同参画社会」の影響もあり、
(女性の社会進出もあって)
「一人に一台」へと変わっていきます。
交差点などの目につく場所に
広い駐車場を整備して開店、
文字通り「便利に」使いやすくする…。

「24時間眠らない明かり」は、
大都会だけではなく、地方、
過疎地域にまで生まれていった。
本屋が無かった地域でも
雑誌や単行本が買えるようになる。
おでんも買える。コピーも取れる。
果ては銀行機能まで備え持ち、
配達物もコンビニで受け取れるようになる。

このコンビニが都会と地方との
「文化格差」「便利格差」を
埋めていった点は、あると思います。

◆平成の大合併(2000年代)

そんなこんなで旧来の経済圏、
鉄道による固定的な経済網が
徐々に崩れていきます。
もちろん、県庁所在地や
昔から発展してきた都市などは
それまでの既得権益もあって栄えますが、
「新しい経済の流れ」も生まれていった。

折りしも「少子高齢社会」となります。

栄えるところ、少しでも便利なところに
人は集まっていき、そうでないところは
徐々に人が減っていく…。
過密と過疎の地域が、如実に分かれていく。

それを現況に即して「整理」した
象徴的な事件(事件レベルです)が、
「平成の大合併」ではないでしょうか?

1999年(平成11年)~2010年(平成22年)。
市町村数が、3232から1821になった。
実に約1400ほどの市町村が消えた。
これは読者の皆様にも
まだ記憶に新しいかと思います。

住民の綱引き、地名存続合戦…。
新しい市町村名をめぐる紛糾…。
そのごたごたの中で、表舞台から
静かに消えていった地名も多い。
当然ながら、市町村合併によって
市町村立の学校の「廃校」も増えました。

このように地方の風景は、
時代の流れの中で
緩やかに少しずつですが、はっきりと
変わっていった、と言えるでしょう。

最後に、まとめます。

本記事では四つの転換から
地方の移り変わりを書いてみました。
本記事ではあまり触れませんでしたが、
「バブル経済」「ハコモノ行政」
「バブル崩壊」「ケータイ、SNSの普及」

などの影響も、大いにあるかと思います。

…この私自身も「石炭から石油への
転換による街の産業の変化」や、
「自家用車の出現」「コンビニの出現」
「市町村合併の衝撃」などの事件を、
幼少期~青年期にかけて
リアルに体験してきました。

初めてコンビニでおでんを買った時の
衝撃は、今でも忘れません。

読者の皆様は、いかがでしょうか?
どんなご経験がありますか?

◆以下、よろしければぜひ!

ホタテの村、猿払村の歴史はこちら↓

夕張市の歴史はこちら↓

いわき(の笠間藩領)の話はこちら↓

モータリゼーションについては↓

モータリゼーションとSNSリゼーション↓

コンビニという不夜城↓

ネット、コンビニ、キャリアの変遷↓

セイコーマートが届ける光↓

ヘリテージ・ツーリズム↓

廃校とその活用については↓

コンビニの再編の歴史の動画↓

合わせてぜひどうぞ!

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