見出し画像

旧称ロイヤル・ダッチ・シェル。
シェル、という会社は
『セブン・シスターズ』と呼ばれる
石油・エネルギーの分野で
世界的に大きな力を持つ会社の一つです。

ロンドンを本拠地に持つ、多国籍企業。
そこから由来のロゴマークは
日本でもおなじみのことかと思います。

そう、旧称「昭和シェル石油」です。
ガソリンスタンド。
あの「貝殻のマーク」の看板!

…ただし、この看板も徐々に
「apollostation」(アポロステーション)
へと一本化されていくそうです。
2019年、出光興産の完全子会社となり、
2020年に「RSエナジー株式会社」
商号変更しています。
2023年までには一本化を完了する予定。

…しかし、なぜまたシェル、
つまり「貝」のロゴだったのでしょうか?

これは、シェルという会社が元々は
ロンドンの骨董品店からスタートしたから。
カスピ海の「貝殻」の工芸品を
主に扱っていたそうです。

それが、貝殻の供給元を押さえるべく、
アジア方面に積極的に進出。
骨董品店を始めた創業者の息子、
マーカス・サミュエルという人が
東南アジアのボルネオ島で油田を発見!
父親の商売にちなんで自分の会社を
『シェル・トランスポート・アンド・
トレーディング・カンパニー』

名付けたのが始まり、だそうです。

このシェルのロゴマークは、
最初は「ムール貝」だったそうですが、
1904年に現在のマークの原型である
「ヨーロッパホタテ」に変更されました。
出資者の家紋がこの貝だったから。

すみません、前置きが長くなりました。
本記事はこのホタテ(ホタテガイ)
歴史と地理のあれこれを書いてみます。

ホタテ、と言えば、やはり北海道!
貝柱、ホタテのバター焼き!などを
すぐ私はイメージするのですが、

シェルのロゴにもなったように、
日本だけではなく
ヨーロッパでもおなじみなんです。

考えてみれば、ルネサンス期の
ボッティチェリの有名な絵の一つ、
『ヴィーナスの誕生』でもヴィーナスは
「ホタテの貝殻」に乗っていた。

スペインのキリスト教の聖地の一つ、
サンティアゴ・デ・コンポステーラ
巡礼する巡礼者は、
ホタテの貝殻を身に付ける風習を
現代でも続けている、とのこと。
(聖ヤコブ、という聖人の象徴だそうです)

このようにホタテは
ヨーロッパの人にもとても親しまれている。
ホタテの美味しさは
ヨーロッパでもメジャーなんです。
フランス料理でも、よく使われている。

特にノルマンディー産のホタテは有名です。
イギリスとフランスとの間の海峡では
両国の漁業者同士がホタテを巡って
小競り合いが起きたほど…。
(2018年「ホタテ戦争」とも言われます)

喧嘩のタネになるほど美味しいホタテ!
「洋食」にも使われる…! もちろん、
「養殖」も盛んに行われています。
(強引な展開ですみません)

日本においても、ホタテの養殖
(放流して育てて獲る漁業)は盛んです。
その地域の一つが、北海道の猿払村。

…さるばらいむら?

いえいえ、「さるふつむら」です。
日本最北端の村。
北海道の北に突き出ている宗谷岬の近く。

この猿払村、凄いんですよ?

何と、全国の各市町村の
平均所得ランキングベスト10の常連!
ちなみに2022年の結果は、こちら。

1位:港区(東京都)
2位:周防大島町(山口県)
3位:千代田区(東京都)
4位:渋谷区(東京都)
5位:中央区(東京都)
6位:猿払村(北海道)
7位:芦屋市(兵庫県)
8位:目黒区(東京都)
9位:文京区(東京都)
10位:世田谷区(東京都)

東京23区がランクインは、わかる。
お金持ちが多い兵庫の街、芦屋も。
そこに堂々と猿払村が食い込んでいる…。
(ちなみに2位の周防大島町は
「瀬戸内のハワイ」と言われる町。
海外で事業を展開する高額納税者が
転入したからの結果だそうです)

もちろん「平均」ですから
人口が少ないと平均は上がるのは確か。
猿払村の人口は、約2,700人。
北海道内で一番広い村で、
約八割は森林や湿原、という過疎地域。

それでも平均所得が全国上位は凄い!
この猿払村の産業を支えているのが、
名産の「ホタテ」なのです。

ただし、その道筋も決して
一直線ではありませんでした。
昭和の初め頃は、普通に獲っているだけ。
大漁に取れたらラッキー。
獲れるだけ獲る、という漁業をしていた。

この乱獲によって徐々にホタテは姿を消し、
1960年代には、完全にいなくなる…。
それに加えてこの頃、村にあった炭鉱も
「エネルギー革命」の余波で
次々と閉山していく…。

そうなんですよ、1960年代の猿払村は
全国上位どころか
貧窮のどん底にまで落ちていた。
村が消滅してしまっていたかもしれない。

しかしここで再起をかけて
村の運命を打開したのが、そう、
「ホタテ稚貝の大規模放流事業」

1971年からの10年計画。
村1年分の予算と同じ額をぶっこんで開始。
消えてしまったホタテを復活させるために、
ちまちま、とではなく
どかん、とたくさんの稚貝を放流した。

これが、うまくいきました。V字回復!

徐々にホタテの水揚げ量が増えていき、
今では、北海道の東の北見市や
北の稚内市などとともに
毎年トップクラスの水揚げ量を誇ります。

猿払村のホタテは四年貝。
稚貝を放流してから「四年後」に獲る。
海の中で四年間しっかりと育っているから
肉厚で美味しいホタテが獲れるそうです。

最後に、まとめましょうか。

本記事では、ホタテの歴史と地理、
そのあれこれを書いてみました。

ホタテとは「帆立」と書きます。

二枚ある貝殻のうち、
一枚を帆のように立てて、
もう一枚を船にして走る、と
信じられていた
ことからついたそうです。
(実際には殻を開閉させ、
噴射する水の勢いで移動するのですが)

扇に似ていることから「海扇」、
秋田の久保田藩佐竹氏の
家紋に似ていることから「秋田貝」とも
呼ばれることがあるそうです。

…さて、読者の皆様は、この一日を
どのような帆を立てて過ごしますか?
どのような扇を広げますか?


ホタテは低カロリーで高たんぱく、
コレステロールを減らすタウリンも
牡蠣と同じくらい含んでいます。
栄養がとても豊富、疲労回復にも効く。
お腹が空いたらぜひ、
ホタテのバター焼きでも食べて
頑張りましょう! 私も頑張ります。

よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!