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2021年の一月に出された中央教育審議会答申。
その中に「令和の日本型学校教育」という
言葉が出てきます。

正式名称は、以下の通り。

「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して
~すべての子供たちの可能性を引き出す、
個別最適な学びと、協働的な学びの実現」

…うん、タイトルだけを読めば、
素晴らしい、これぞ令和、新しい時代!
という感じですね。

しかしながら、教育研究家にして
学校業務改善アドバイザーの
妹尾昌俊(せのおまさとし)さんは、
「減らす視点」からこの答申を考えています。
※下記の引用元記事をぜひ。

本記事では、この答申について
妹尾さんの記事を紹介しつつ、考えてみます。

「減らす視点」というのは、
多いから「減らしましょう」ということ。
この答申については、
文部科学省のホームページで読めます。
全文を読むのは長そうですので
「概要」のPDFをポチっとしてみましたが…

13ページにわたってびっしりと資料が…!

何が大事なのか、一読では難しい。
※リンクからぜひ↓

妹尾さんの記事を踏まえ、この答申では
何が大事なのか、何が変わったのか、を
紹介していきます。

一言でビジネス用語で例えるならば、
「プロダクトアウト」から
「マーケットイン」に変わった
、とのこと。

要は「作る側、教える側の論理」から
「受ける側、教えられる側の論理」に変わった。
そう言えば「アクティブ・ラーニング」という
言葉もありました。
子ども側からアクティブに学習する。

…どうしても中年世代が抱く
学校教育のイメージと言えば、

「講義形式」「先生のお話を聞く」
「言われたことを着実にやる」

というイメージがありますが、
どうもそうではない感じ…。

「転換」をはっきりと示したのが、
この2021年の答申
らしい、のです。

…ただ、素朴な疑問なんですが、
今までにもこういう感じで
「生徒の個性を伸ばそう」とか
「一人一人に合う教育を」とか
やっていたのではなかったか?
それをあえて言葉にするということは
これまではできてなかったということ…?

妹尾さんも、こう指摘します。

◆過去の反省と検証が十分に
なされているのか、見えてこない。


今までやってきた教育とどう関係して、
なぜこのように変えたのかがわかりにくい。
例えば「アクティブ・ラーニング」と
今回の「個別最適な学び」はどう違うのか?

妹尾さんは、答申ではICTなどを活用しながら
「ティーチング」(教える)ではなく、
「ファシリテート」(手配し準備する)
を行う割合が増えていくのでは、と指摘します。

◆デメリットや副作用の検討が不足している

こうも指摘されていますね。
確かに、ビジネスやイベント企画・実施などを
されている読者の皆様なら、

「自分『だけ』で完結することより、
他者を巻き込んで
『複数の人間』をファシリテートするほうが
準備や手配、気遣いが倍増して
色々と大変なんだよね…」

そう思われるのではないでしょうか?

自分一人で完結するティーチングではなく、
ファシリテートしろ…?
うん、先生たちは、大変そうだ。
慣れている先生なら良いかもしれませんが、
「講義形式」で授業をしてきた先生たちは、
「転換」するのが大変そう…。

他のクラスとのすり合わせも必要になる。
労力も神経も倍は使う。
とかく公教育では同調圧力がありがち。

かつ「個別最適な学び」を突き詰めてしまうと、
地域や家庭ごとの「格差」が拡大するのでは?
と、妹尾さんは指摘します。

一人一人に最適、ということは、
「個々人の背景に最も適した学び」ですから、
「意欲的にどんどん取り組める環境の子供」と
「最低限で良いという保護者の子供」とでは
当然ながら差が出てくるはず…。
教育にかけられるお金も、家庭によって全く違う。

そして、第三の懸念として挙げられたのが。

◆「減らす」視点が見当たらない

これですね。これが一番問題だと私も思います。

ビジネスであれば「選択と集中」が
とても大事だ、と言われます。
利益を生まない行動は壊しやすい。
スクラップ&ビルド。

しかしながら、学校教育においては、
なかなかこれができにくい。
教員の多忙化、労働環境のブラック具合、
それを忌避する教員志望者の減少…。
こんなニュースを聞いたことはありませんか?

これまでの「答申」や「学習指導要領」では、
さまざまなことが「増やされて」きました。
まさにビルド&ビルド。

「ICT活用を進める」と一口に言っても、
使いこなしている先生ばかりではない。
依然として「紙ベース」の教材も多い。
入試だってテストだって、パソコンやスマホで
入力して終わりとはいきません。
「紙に手書きで」書かなくてはいけない状況が
多いことに変わりはない。

『教育の「理想」のハードルが
上がる一方で、学校や教師が抱える
「荷物」は重くなっている』

妹尾さんは記事内でそう指摘します。
荷物を背負ってハードルを跳ぶのは難しい…。
仮に「ICTの活用」ができたとしても、
授業そのものが興味を惹くものでなければ
学びには向かっていかない…。

いずれにしても、教員の「研鑽」が必要です。

ただ、研鑽するためには、時間と余裕が必要。
何かを「減らす」ことなしに、
その時間も余裕も生まれないのではないか?

…それぞれの地域や学校には
異なる歴史と地理がありますので、
全国一律、同じように、というのは
そもそも無理がある。

この答申や、次に出てくる指導要領を
かみくだいて、現場のメンバーを踏まえて、
どのように運用をしていくのかは
校長先生や教頭(副校長)先生に
かかってくるのです。

妹尾さんの意見を、引用しましょう。

(ここから引用)

『個人的なおすすめは、
校内研修などでこの答申を扱い、
話し合いを深めることです。

まずは、個別最適な学びや
協働的な学びがなぜ大事なのか、
今までは何が不十分だったのか、
あるいはこれまでやってきて
よかった点はどこかを
実情に応じて話し合い、

これらの点を十分に検証した後に、
今後は何をすればいいのか、教職員から
アイディアを募るのもいいでしょう。

こうした現場レベルの議論を行うなかで、
ぜひとも管理職のみなさんに
もっていただきたいのは、

前述した「減らす」視点です。

お伝えしてきたように、教育の現場では、
これまでずっと、ビルド&ビルドの視点で
改革が行われており、
現在進行形でその傾向は続いています。

こうしたことを続けてきたツケが、
教職員の異常な多忙化や
疲弊につながっているのです』

(引用終わり)

最後に、まとめます。

本記事では「令和の日本型学校教育」に
関する答申について、
妹尾さんの記事を紹介してみました。

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