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塾、というものはいつ生まれたのか?
これは定義によります。

塾と対で語られやすい
「学校」のほうが、成立は遅い。

「家族間での教育」はヒトが
生まれた頃から行われていました。
ヒトとは、学び教える動物。
裕福な家では、例えば王族などは
優れた者を「家庭教師」をつけて
帝王学などを学ばせていたことでしょう。
かのアレクサンダー大王の家庭教師は
哲学者アリストテレスでした。

それが「同じ世代の子ども」を
集めて教育したほうが何かと都合が良い、
ということで「学校」が生まれる。
となると、それ以前には
公的な学校という制度に囚われず、
私的に人を集めて学ばせて
謝礼を受け取っていた人もいるはず…。

そう、塾は参入障壁が低いんです。
自分の技能と人集めさえできれば始めやすい。
「ありとあらゆる形態」の
個人的な塾があったはず、です。

例えば日本では、平安時代には
貴族層が和歌などを学ぶ塾があった。
江戸時代にもたくさんの塾があった。
寺子屋しかり、私塾しかり。
「適塾」や「松下村塾」なども有名です。

…ただ、今日の日本での
「塾」のイメージは、いわゆる「学習塾」
これが戦後にどんどん増えていく。

本記事では「戦後日本の塾の歴史」について
主に書いてみたいと思います。

学習塾は、基本は「子ども」に
学習・勉強をさせて「謝礼」をもらう形式です。
当然ながら、その対象の子どもが
いないと成り立たない。

戦後日本ではその子どもが増えました。
いわゆる「ベビーブーム」
これに連動して「塾ブーム」も起こった。

「学歴社会」とも連動します。
いい学校に入り、いい会社に就職する!
通っていた学校の経歴がものをいう時代。
となると、自分の子どもに
「いい学校」に行ってほしい、という
親の願いはよくわかるところ…。

「高度経済成長」も拍車をかけます。

とにかく生き延びるのが大事、という時代から、
「よく生きる」時代へ。
娯楽や教育にかけるお金が増えていった。
「核家族化」も影響があります。
「地域コミュニティの衰退」もあった。
親と子どもだけ、だと人手が少ない。
教育を、家庭から専門家に「外注」する…。

1960年代に「第一次塾ブーム」。
1970年代に「第二次塾ブーム」。

高校への進学率が高まるにつれて、
塾がどんどん増えていきます。
この頃は、まだ高校への進学率は低かった。
高校全入時代ではない。
「中浪」(中学で浪人する)という言葉が
ふつうに使われていたのです。

1980年代、1990年代に入ると、
主に公立の中学校における
暴力やいじめなどの問題も
世の中に広く知れ渡っていきます。
私立の人気が高まる。
「第三次」「第四次」の塾のブームが来る。

…ただ数が増えますと、玉石混交と言いますか、
適当な塾としっかりした塾、
そういうものが混ざっていきます。

当時はまだSNSはありません。
保護者間のクチコミで評判が広がります。
「合格実績」は一番クチコミになりやすい。
それを受けて子どもが集まる。
それがない塾は、徐々に廃れていく…。

「淘汰の時代」がやってきます。

第三次ベビーブームは起こりませんでした。
いわゆる「少子化」。
…となると、強いのは資本力のある
大手塾になりますよね。ガンガン宣伝を打つ。

個人塾は廃業したり、
フランチャイズ契約を結んだりする。
これは全国のパパママショップ、
地域に密着した小売店が廃業したり
「コンビニ」に鞍替えしたりした様に似ています。

2000年代から学校で
「ゆとり教育」が行われたことも
この傾向に拍車をかけた。
学校と塾は合わせ鏡です。陽と陰。光と影。
学校で教えてくれないなら、塾で学ばせる。
学力低下を心配する保護者の方は、
子どもを塾に通わせようとします。

少ない子どもの奪い合い…。
そうなると、大手の塾が有利になります。

戦後の塾ブームの頃に乱立した頃には、
個人塾が多かったことでしょう。
しかし今では、全体の割合で言えば、
「大手進学塾約80%」「中小個人塾約20%」
とも言われています。

主な学習スタイルも変わりました。
「一斉授業」から「個別指導」へ。

とにかくたくさんの生徒に向けて
一斉に同じ内容で授業を行う。
多くの生徒が集まってきていた頃は、
そうしないととても回しきれなかった。

「大手の大学進学予備校」などでは
「名物講師の授業」を売りにして
がんがん「集客」を行っていましたよね。
地域の小学生・中学生対象の塾でも、
名物塾長のキャラ、授業こそが生命線だった。

それがだんだん立ち行かなくなる…。
一人一人に合ったスタイルが求められる。

大手予備校では大講義室での
授業が成り立たず、撤退が相次ぎました。
一人一人の子どもにあった学習。
それが個別指導です。
オーダーメイドだと、人手も時間もかかる。
ゆえに「指導料」もたくさん取れる。
塾側としても採算が合いやすい…!

とはいえ。

やはり全体の「市場」の縮小はあります。
そもそも子どもが減ってきているのです。

過当競争で廃業したり
大手の傘下に入ったりする塾も増えている。
合格者の水増し、教材の著作権の侵害、
そういった問題もありますし、
何より「SNSの普及・発達」によって、
悪いクチコミは一気に拡散する。

ここまでが戦後の学習塾の歴史の概要です。
簡単にまとめますと、

◆戦後のベビーブーム、進学率増加で塾ブーム
◆子どもが減って淘汰、大手が増えていく
◆一斉授業から個別指導へ
◆全体としては市場は縮小へ

といったところでしょうか?

本記事の最後に、これからの塾の
「生き残り策」を考察して終わります。

まず、子どもは少なくなっていますが、
大人はまだ多いですよね。高齢者もたくさん。
人生百年時代、生涯学習、キャリアシフト、
「学ぶ需要」はむしろ増加してきています。

となれば、子どもだけに限らず、
「大人へのサービス」を考えてはどうか?
「学び直し」「リスキリング」ニーズも高い。
ビジネススキルだけではなく、
文章力とか義務教育レベルの基礎知識とか
そういったものを学びたい大人も多いはず。

次に、補習塾・進学塾といった
「学校の補完」的な発想を止めればどうか?

補習塾は学校の授業の「補習」。
進学塾は「受験のための指導」を行う塾。
どちらにしても、学校補完。

そうではなく、学校のカリキュラムを無視して
その人に合ったことを学んだり、
興味関心そのものを増やしたり、探究させたり、
そういった方向にシフトしてみてはどうか?

そもそも塾は最初は「王族の家庭教師」など
オーダーメイドでフリーダムな形で
生じてきたものなのですから…。

(その一例の塾「探究学舎」は、
探究や興味関心に全振りした塾だそうです。
詳細は、下記のリンクからどうぞ)

さて「令和の日本型学習塾」
どんな展開を見せるのか?

読者の皆様はどう思われますか?

※現在の塾業界の市場規模と展望はこちら↓

※「探究学舎」についてはこちらの記事を↓

※note版はこちら↓

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