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安心してください、ネタバレしませんよ!

映画『君たちはどう生きるか』を観ました。
まだ観ていない方もいらっしゃると
思いますので、ネタバレは
できるだけ避けて書きます。

私が、観終わった後に思ったのは
「わかりやすいストーリー」と
「わかりにくいストーリー」との対比。

『君たちはどう生きるか』は
「わかりにくいストーリー」だと思います。

逆に言えば、色々な解釈が可能な作品。
地域も国も飛び越えた普遍的なテーマ。
観る人の事前の知識や思考により、
様々な感想や元ネタが思い浮かぶ映画…。

本記事では、この作品を紹介します。

「わかりやすいストーリー」と言って
私が真っ先に思い浮かべるのは
『天空の城ラピュタ』です。

スタジオジブリの名作!
何回か観たことがある方は、
もうストーリーが「手に取るように」
わかるのではないでしょうか。

◆空から少女が降りてくる
◆勇敢な少年が一緒にラピュタを探す
◆敵だった海賊一家と協力する
◆天空の城にたどり着く
◆ラスボスのムスカと対決、決着する

もちろんこの作品においても
色々な解釈や見方はできますが、
とても明快なストーリーですよね。
「解釈違い」があまりない。
冒険活劇。主人公と悪役がはっきり明快。
はじめは敵だった海賊一家が
味方になるのも「お約束」的な物語。

これに対して、少し前の
『カリオストロの城』や
『ナウシカ』は、少しわかりにくい
複雑というか、割り切れなさというか、
そのあたりが残っている。

それもそのはず、ルパンは『城』では
宮崎駿テイストでロマンチストに
改変されていますけれども
原作では殺人も辞さない悪漢です。
映画『ナウシカ』も
「自然と人間」のテーマがあるので
すっきり明快な話ではない。
(漫画版はもっと複雑ですが)

それらに対して『ラピュタ』は、

「次第に高年齢向けになっていく
アニメに対して、マンガ映画の
復活を目標に小学生を対象に、
『古典的な冒険活劇』として企画。
それが『結果的に』
大人の鑑賞に耐えうる作品になる」

そんな宮崎監督のコンセプトがありました。
わかりやすいのも道理です。

…『君たちはどう生きるか』で私は、
これと真逆のコンセプトを感じたんです。
いわば、

「本来、低年齢向けの
アニメという手法を使いつつ、
あえて「全年齢層」を対象にして
『複雑な冒険活劇』を企画、
それが『結果的に』
子どもの鑑賞にも耐えうる作品」

となっているのではないか?

タイトルの「君たち」は子どもだけを
対象にしているのではない。

「宮崎監督作品を観て育った
『大きいお兄さん、お姉さん』たち
(いわゆる中年世代)も対象。
それ以上の鉄腕アトムなどに親しんだ
ご高齢の観客をも対象にしている…。

私は、そう感じたのです。

ゆえに、人間であれば誰しもが
考える問題が出てくる。
「どう生まれ、どう生き、どう死ぬのか」
これ以上ない根源的なテーマ!
これを宮崎駿監督が、今までの作品によって
磨いてきたファンタジー的な手法を
惜しみなく注ぎ込み、作り上げている…。


ここで、宮崎駿監督の略歴と
作品群をおさらいしておきましょう。

◆1941年 東京生まれ
◆アニメーターとして東映動画に入社
◆1965年『太陽の王子 ホルスの大冒険』参画
◆1972年『パンダコパンダ』参画
◆1974年『アルプスの少女ハイジ』参画
◆1978年『未来少年コナン』事実上の監督
◆1979年『ルパン三世カリオストロの城』公開
◆1984年『風の谷のナウシカ』公開

◆1985年 スタジオジブリ設立(徳間書店出資)
◆1987年『天空の城ラピュタ』公開
◆1988年『となりのトトロ』公開
◆1989年『魔女の宅急便』公開
◆1992年『紅の豚』公開
◆1995年『耳をすませば』公開(近藤喜文監督)
◆1997年『もののけ姫』公開
◆2001年『千と千尋の神隠し』公開
◆2004年『ハウルの動く城』公開
◆2005年 ジブリが徳間書店から分離独立
◆2008年『崖の上のポニョ』公開
◆2013年『風立ちぬ』公開

◆2014年 ジブリ制作部門休止、スタッフ退職
◆2017年 新作アニメ映画のためスタッフ募集
◆2023年『君たちはどう生きるか』公開

10年ぶりの宮崎駿監督の新作映画、
ということで『君たちはどう生きるか』は
公開されたのですけれども、ここで
鈴木敏夫プロデューサー、大胆な手を打つ。

「一切宣伝がなかったら、
皆さんどう思うんだろうと考えてみた。
僕の考えですけど、
これだけ情報があふれている時代、
もしかしたら情報がないことが
エンタテインメントになる。
そんなふうに考えました。
うまくいくかどうかわかりません。
わからないけど、
それを信じてやる、ということです」

情報をいっさい事前に出さなかった。
すでに知名度抜群の宮崎駿監督作品
だからこそできる、逆張り広告…!
2023年2月の試写会でも箝口令が敷かれた。

と、いうことで本記事でも
ネタバレはしないのですが、

私がもう一つ思い浮かべたのは、
宮崎駿監督と覇を競った
「高畑勲監督」の死去のことでした。

1935年~2018年。宮崎監督より6歳年長。
1988年『火垂るの墓』、
2013年『かぐや姫の物語』などで有名。

ともに、ジブリ創設に参画した人です。
というか高畑監督から宮崎監督や鈴木さん、
ナウシカ後にスタジオを探していた二人に
「いっそ、自分たちでスタジオ作らない?」
と呼びかけたのが、ジブリの始まり。


ただ高畑監督は、作り手は経営に携わらない
という信念のもと、役員就任はしなかった。
ゆえに、ジブリ=宮崎監督のイメージが強い。

この高畑監督、一言で言えば
「妥協を許さない芸術家」タイプでした。
ファンタジーより、リアリティ。
公開延長も辞せず、作品の質を突き詰める。

1976年に監督を務めた世界名作劇場の
『母を訪ねて三千里』の中では、
子ども向けなのに容赦なくシュールで、
一種トラウマ的な描写までしている…。
とにかく「世界のリアルと怖さ」を見せる。
(ちなみにこの作品では宮崎監督や
ガンダムの富野由悠季監督も参画しています)

高畑監督と宮崎監督は、
ジブリの合わせ鏡のような一対だった。

…私には、このリアリティを追求した
高畑監督に向けて、宮崎監督が、
「観客を魅せるファンタジー」の手法で、
自分なりの「わかりにくいストーリー」で
あえてつくったように感じた
のです。

縛りを無くし、自分の好きなように。
高畑さん、観てますか、という感じで…。

最後に、まとめます。

本記事では『君たちはどう生きるか』の
私なりの紹介をしてみました。
ネタバレしないように書いたため、
「わかりにくい記事」ですみません…。

ぜひ読者の皆様も一度、
情報がネット上であふれる前に
映画館で直接観ておいて、
自分なりの感想を持つ
ことをお勧めします。

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