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流麗なる一族 ~服部良一さんから百音さん~

NHKの朝ドラでは『らんまん』の次、
2023年10月から『ブギウギ』が始まります!

本作のヒロインは、
「東京ブギウギ」の笠置シヅ子さん
モデルにした「花田鈴子」です。

演じるのは、趣里さん。

水谷豊さんと伊藤蘭さんのお子さんです。
四歳でクラシックバレエを習い始め、
怪我でバレリーナの道を断念するも
「アクターズクリニック」という
演技学校で役者の道を自ら志して、
ついに朝ドラヒロインの座を射止めた!
という女優さんです。

このドラマの音楽を担当されるのは
服部隆之さん。
本記事では、この服部さんの
「流麗なる一族」を紹介します。

◆服部良一さん(1907~1993)

服部隆之さんの祖父、おじいさんです。
この方が、笠置シヅ子さんが歌った曲、
「東京ブギウギ」を作曲された方!

大阪生まれ。父親は土人形師。
ただ、その道には進まなかった。
家族が芸事が好きだったので、
「江州音頭」や「河内音頭」などの
民謡を子守唄代わりに育った、とのこと。

1926年、19歳の頃に
大阪フィルハーモニック・オーケストラに
入団することになります。
ここで「歴史が動いた」!
ウクライナから来日していた名指揮者、
エマヌエル・メッテルに見出されるのです。

メッテルは、ロシア革命の前、
ロシアから亡命した音楽家。
妻が宝塚音楽歌劇学校で
教授を務めていたので、来日していた。
(なお、彼の門人には他にも、
90歳を超えて指揮した伝説の指揮者、
朝比奈隆さんもいます)

彼から作曲・指揮を学び、
オーケストラとジャズ喫茶で腕を磨く…。
1936年にはコロムビアの専属作曲家に就任、
ヒット曲を次々と生み出していきます。

この流れで戦後に名曲、
『東京ブギウギ』が誕生したのです。
1947年のこと。
作詞は鈴木勝さん、歌は笠置シヅ子さん。

当時は歌手は「直立不動」で
歌うのが常だったのですが、
笠置さんは舞台を所狭しと
動きながら歌い踊りました。

(今の「アイドル」スタイルですね)
「戦後の解放感」を反映した歌い手です。

◆服部克久さん(1936~2020)

この良一さんの長男が、克久さんです。
音楽の英才教育を受けます。
パリ国立高等音楽院に留学!
1958年に卒業し、帰国します。

ちょうどこの頃「三種の神器」の一つ、
テレビが世の中に普及しようとしていた。

1958年~1959年と言えば
『ミッチー・ブーム』ですね。
現在の上皇后、当時の正田美智子さんが
当時の皇太子、明仁親王と婚約、ご結婚。
その実況中継を見よう、見せようと
テレビの売上が爆増していた時代です。

この方の曲も、もう数えきれないほど
たくさんあるのですが、
創世期から円熟期にかかるテレビ業界に
楽曲を提供してこられたために、
ジャンルを問わず、幅広く作曲している。

『新世界紀行』の「自由の大地」。
『ザ・ベストテン』のテーマ曲。
『サンダーバード』のオープニング。…

さだまさしさんや山下達郎さん、
竹内まりやさん、谷村新司さんなど、
錚々たる顔ぶれの編曲も手掛けています。

なお余談ながら、彼の曲の中で私が
一番記憶に残っているのが、
1980年、日曜日の「世界名作劇場」
『トム・ソーヤーの冒険』の主題曲、
「誰よりも遠くへ」
です。
(ちょっとマニアックですみません)
作詞は山川啓介さん、歌は日下まろんさん。

凄く勇気づけられる曲と歌詞…。
大人になってから聞くと、涙が出る。

克久さんは、テレビアニメ創世期にも
大きく関わった方なのです。

◆服部隆之さん(1965~)

この克久さんの長男が、隆之さんです。
高校を中退、パリ国立高等音楽院に留学。
帰国後の1988年から活躍されます。

隆之さんもまた、たくさんの楽曲を
世に送り出した方なのですが、
最近で言えば、ドラマ『半沢直樹』の
テーマソング
などが有名でしょうか?
あの重低音から始まる名曲!

NHK大河ドラマで言えば、
三谷幸喜さんの『新選組!』や
『真田丸』の主題曲
も手掛けています。

他の民放ドラマならば
『王様のレストラン』『HERO』
『のだめカンタービレ』『華麗なる一族』
『ルーズヴェルト・ゲーム』
『下町ロケット』など、おそらく皆様も
一度は耳にしたことのある曲ばかり…。

偉大なる祖父の良一さんと父の克久さん、
そのお二人の「七光り」ならぬ
「十四光り」だと自嘲気味に語られますが、
音楽の才能は遺伝というより
ご自身の興味と努力と研鑽のたまもの。

隆之さんの思い出を、引用しましょう。

(ここから引用)

『「6歳から、先生について
ピアノを始めましたが、
その年ごろの男の子にとってね、
ピアノってつまんないですよ(笑)。

祖父の誕生日とクリスマス、
正月には親戚が集まって
『歌唱コンクール』が開催される。
歌い手は僕と妹やいとこたち。
服部克久が審査員、
服部良一が審査委員長ですから、
たしかにスゴイ(笑)。

でも、音楽一家らしいエピソードは、
逆にそれくらい。
祖父とは別に暮らしていて、
ふだんはそんなに交流はなかったんです」

一方、父の克久さんは
前述の音楽番組に加えて、
郷ひろみや山口百恵らトップスターの
ショーの音楽作りなどに
慌ただしく過ごす日々。

「父は、『最近、サボってるらしいな』と
ソフトな口ぶりでしたから、
そのゆるさが僕にはありがたかったですね。

ただし僕も音楽自体は好きで、
中高ともブラスバンドをやり、
仲間とバンドも組んでましたから。
音楽を決定的に嫌いにならずにすんだのは、
『家業を継げ』と
強制されなかったことが大きい」』

(引用終わり)

そう、高校を二年で中退して
フランス留学へと踏み切ったのも、
隆之さんご自身の決断だったんです。

決して、強いられたわけではない。

流麗なる音を世に響かせてきた一族も、
ご自身の選択と意志によって
自身ならではの音を響かせてきた
のです。

最後に、まとめます。

本記事では、服部さんの
「流麗なる一族」を紹介しました。

なお、服部隆之さんの娘は
1999年生まれの百音(もね)さんです。
隆之さんの妻、百音さんの母親は
プロヴァイオリニストのエリさん。

百音さんは5歳でヴァイオリンを始めて、
8歳でオーケストラと共演!
10歳でポーランドの国際コンクールで
第一位と特別賞を受賞されています。
ヴァイオリニストとしてご活躍中。

ただ、父親の隆之さんからは
百音さんが自宅で
ヴァイオリンを練習している時に、
「今、変イ長調で曲を書いてるから
ト長調はやめて!」

言われたこともあるそうです。

音楽は「音を楽しむ」もの。
決して、強制はしない。
「自分から」「自分なりに」楽しむもの…。

まず自分が楽しみ、他人をも楽しませる、
これこそが音楽の本質なのだ、
と思わせてくれるような、
流麗なる一族だと、私は思いました。

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