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スペイン語ことわざ手ぬぐい(茜)/解説

イスパニカのオリジナル、「スペイン語ことわざ手ぬぐい」の第2弾を製作しました。今回はまた別の16のことわざをとりあげ、“茜色”で染め抜きました。

今日から<こちら>のイスパニカストアにて販売しています。

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この記事では、とりあげた16のことわざを解説します!


En boca cerrada no entran moscas
[エン ボカ セラダ ノ エントラン モスカス]
訳:閉じた口にハエは入らない

問題が起きることを防ぐため、思慮深くなるよう戒めるときによく使われることわざです。日本語の「口は災いの元」に相当しますが、スペイン語では「ハエが口に入る」という表現が使われています。


El buey solo bien se lame
[エル ブエイ ソロ ビエン セ ラメ]
訳:一頭でいる牛は自分の体をよく舐める

solo(一頭でいる)の代わりにsuelto (つながれていない)もよく使われます。「くびきでつながれていない牛が好きなだけ自分の体を舐める」様子を描写した表現です。もともとは「自由でいることのありがたみ」を伝えるものでしたが、現在では意味をそこからさらに一歩深め、「ひとりでいることの気楽さ」を表すようになりました。


De aquí a cien años, todos calvos
[デ アキ ア シエン アニョス トドス カルボス]
訳:100年後は皆が禿頭

時が経てば必ずみんな、されこうべになる(死を迎える)の意味から、「人生の困難はずっと続くものではない」ということを伝えるときに使われます。同義の言い回しにNo hay mal que dure cien años(100年続く不幸はない)があります。また、逆説的に時間の大切さに焦点を当て、「今を存分に楽しむべき」という意味でも使われます。


Zapatero, a tus zapatos
[サパテロ ア トゥス サパトス]
訳:靴屋は自分の靴

「人は自分の専門分野に専念すべきで、専門外のことに口を挟むべきではない」という意味。日本のことわざ「餅屋は餅屋」とほぼ同義ですが、スペイン語では戒めの意味合いがあり、しかも「自分がつくる靴」に限定されているので、より厳格な印象を与えますね。

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Por el hilo se saca el ovillo
[ポル エル イロ セ サカ エル オビジョ]
訳:一本の糸から糸玉をたぐり寄せる

「物事の一部を見たり聞いたりするだけで全部を理解できる」という意味で、日本語の「一を聞いて十を知る」と同義。『ドン・キホーテ』で使われている表現です。



En todas partes cuecen habas
[エン トダス パルテス クエセン アバス]
訳:どんな場所でも人はそら豆を茹でる

そら豆が安価で動物も食べるポピュラーな食材であることから転じて、「どこへ行っても苦労はつきまとう」という意味合いです。「あなただけに困難が降りかかっているわけではない」と励ましたり悟したりするときなどに使います。「隣の芝生は青い」にも近いと言えるでしょう。



La cuerda se rompe siempre por lo más flojo
[ラ クエルダ セ ロンペ シエンプレ ポル ロ マス フロホ]
訳:縄はいつも一番弱いところで切れる

情け容赦のない表現ですね。意味としては「往々にして強い者が弱い者に勝つ」、「弱肉強食」とほぼ同義ですが、使い方によっては、弱点を克服すればそれだけ強くなれる、という含みを持たせることもできます。



Más vale pájaro en mano que ciento volando
[マス バレ パハロ エン マノ ケ シエント ボランド]
訳:飛んでいる100羽より手の中の1羽の方が価値がある

「実現したら利益は多いが達成できるか不確実なことよりも、利益は少なくても確実に得られることの方が良い結果を生む」という意味で、日本のことわざ「明日の百より今日の五十」とほぼ同義で使われます。1羽の鳥を捕まえた犬が、池に映った100羽の鳥を池の上にいると勘違いして捕まえようと池に飛び込み、100羽の鳥はもちろん捕まえられずに、先に捕まえた1羽の鳥も逃してしまったという故事に基づく表現です。

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Agua pasada no mueve molino
[アグア パサダ ノ ムエベ モリノ]
訳:過ぎ去った水は水車を動かさない

水車を流れ去った後の水は、いくら水力が強くてももう水車を回すことはできないことから、日本語の「後の祭り」と同義で使われることもありますが、さらにそこから意味を深めて「チャンスを逃してはいけない」という意味でよく使われます。molino(水車)はスペイン人の苗字にも多く、言い回しにもよく登場します。水車が古来、暮らしに深く根付いていたことがうかがえます。



Del árbol caído todos hacen leña
[デル アルボル カイド トドス アセン レニャ]
訳:倒れた木から皆が薪を作る

大木を切るのは至難の業ですが、倒れている木であればいかようにでも手を加えられます。このことわざは、人の不幸を利用する者が多いこと、そして「木」を「人」に投影し、「人間は落ち目になると寄ってたかって食い物にされる」という意味でも使われます。



Quien fue a Sevilla, perdió su silla
[キエン フエ ア セビジャ ペルディオ ス シジャ]
訳:セビーリャへ行った者は自分の席を失った

「一度特権や地位を手放すと、それを取り戻すことは難しい」や「欲を出すと高い地位どころか元の地位も失う」という意味で使われることわざです。セビーリャに転出した司祭が元居たサンティアゴ・デ・コンポステーラに戻ったときに司祭のポストに戻れなかったという史実に基づきつつ、Sevillaとsillaが韻を踏んでいます。



A la tercera va la vencida
[ア ラ テルセラ バ ラ ベンシダ]
訳:三度目に勝利は訪れる

「一度や二度目の挑戦では達成できなくても、三度目には良い結果が得られる」、つまり日本語の「3度目の正直」と同じですね。1499年発刊の作家フェルナンド・デ・ロハスによる小説『ラ・セレスティーナ』で使われた表現で、現在でもよく使われます。

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Palabra y piedra suelta no tienen vuelta
[パラブラ イ ピエドラ スエルタ ノ ティエネン ブエルタ]
訳:投げられた言葉と石は戻らない

「発言や行いには思慮深くいなくてはならない」という意味で使われます。日本のことわざ「後悔先に立たず」や「覆水盆に返らず」と同義です。palabraとpiedra、sueltaとvueltaが韻を踏んで心地よい響きをつくっています。



Siempre llueve sobre mojado
[シエンプレ ジュエベ ソブレ モハド]
訳:いつも濡れているところに雨が降る

「災難の上にさらに災難が起きる」、つまり日本のことわざ「泣きっ面に蜂」と同じ意味です。もう濡れてしまっているのなら雨に降られても構わないような気もしますが…!?



El que hace un cesto hace ciento
[エル ケ アセ ウン セスト アセ シエント]
訳:ひとつカゴを作る者は100作る

「何かをひとつ上手にできる人は、同じことを何度も同じレベルでできる」という意味です。日本のことわざ「昔取った杵柄」と似ていますね。『ドン・キホーテ』に出てくる表現です。


No es oro todo lo que reluce
[ノ エス オロ トド ロ ケ レルセ]
訳:輝くもの全てが金ではない

良く見えるものが本当に良いものでないこともあるので、「外見を信用しすぎるのは禁物」という意味で使われます。日本語の「人は見かけによらぬもの」と同じです。

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いかがでしょうか。限定100本の製作です。水車の下を水が流れ去ってしまう前に、ぜひお買い求めください!

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※上記の解説は、主に以下のサイトを参考にして作成しました。

Centro Virtual Cervantes
https://www.cervantes.es/default.htm

RAE
https://www.rae.es/

Hombre Refranero
http://hombrerefranero.blogspot.com/

コトバンク
https://kotobank.jp/

El blog para aprender español
https://blogdeespanol.com/

Significados
https://www.significados.com/

ECom
http://ja.myecom.net/spanish/blog/2014/041190/

世界の音楽と言語
http://bringinfo.net/archives/4595

SpinTheEarth
https://www.spintheearth.net/spanish-proverb/

アデランテ
https://adelante.jp/noticias/aprender/modismo-20/

Sacha【スペイン語×英語×日本語】
https://note.com/sacha_lab/n/n62b8944b7d82

Español Avanzado
https://www.espanolavanzado.com/

福岡大学人文論叢第40巻第2号『REFRANERO ESPAÑOL (36) スペインの諺辞典』Bernardo Villasanz, 新井藍子
https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp


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