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研究は「魔王」に挑む冒険RPG -魔王の大切さと魔王たる資質-

研究は、打ち倒すべき「魔王」に挑む冒険RPGです。このように捉えることで、成果が出し易くなるだけでなく、論文や発表資料作成の見通しも随分よくなります

魔王をしっかり見定めて、「私の研究ではこの魔王に挑んでいます」といった具合ではっきりと宣言できるようになることが望ましいです。そう宣言できると、「おお、研究の大事なところをよくわかっているね」ということになります。

さて、魔王って何でしょうか?

魔王とは「研究の難しさ」

魔王というのは、「皆さんが描く理想へと至る道を妨げる元凶」です。簡単にいえば、「研究の難しさ」です。研究には必ず、なんらかの「難しさ」があります。なぜなら、難しさがなければ、大変な苦労をして考えたり調べたりする必要はないからです。

研究の難しさである「魔王」は、非常に大切にすべき存在です。いてもらわないと困るのです。「難しくない方がいいじゃないか」と思うかもしれませんが、何も難しさのない研究をするというのは、いもしない魔王に挑む冒険をしているようなものです。「いったい何と闘っているの?」と思われてしまいますよね。

魔王は研究の引き立て役

研究の価値を誰かに説明するためには、「魔王」にご登場願わないといけません。魔王がいるからこそ、大変な冒険に挑む必要性に納得してもらえるのです。「こんな魔王がいるんです。だから倒さないとだめなんです。」とはっきり言えると、「なるほど、それが難しいからわざわざやるんだね。大事な研究だね。」と納得してもらえます。

もし、魔王の存在をあやふやにしていると、研究の大変さを誰かに理解してもらうのは難しくなります。「この研究は大変で、すごく頑張ったんです!」といったところで、「うーん、でもわざわざやらなくても済んだんじゃない…?難しくは無さそうだし…」という印象になってしまうのです。

魔王は研究の指針を与えてくれる

魔王をしっかり意識できると、研究を進めやすくなるというメリットもあります。魔王(難しさ)が明確に見えていると、「魔王の倒し方を考えて、どんなやり方でどう弱らせられるかを確かめてみよう!」「魔王を少し弱らせられたから、研究はこれだけ上手くいったのだ!」と言えることになるのです。もし魔王が見えていないと、「何をしたらいいか分からない…」「どうなったら研究が上手くいったことになるのか分からない…」と悩んでしまうことになるでしょう。

魔王は、皆さんの研究に「やるべき価値」を与え、「やるべきことの指針」まで提供してくれる非常にありがたい存在なのです。

魔王は探し続けないと見つからない

ただし、魔王は勝手には出てきてくれません。研究を通じて探し続ける必要があるのです。研究というのは、魔王に挑む冒険でありつつも、真の魔王を見極めるための冒険でもあります。始める前には難しいだろうと思っていたことが、やってみると案外簡単で、むしろ想像していなかった部分に難しさがあることに気づくことが往々にしてあるのです。

自分の研究はいったい何が難しいのかを、研究を始める前も、進めている途中でも、また研究をまとめようとするときでも、常に意識して考え続けるようにしましょう。本当に挑むべき魔王を探り当てることができたら、倒せていないとしても、それは大きな貢献になるのです。

なんちゃって魔王は避けよう

というわけで、「私の研究の魔王はこれです」という宣言は、「私の研究の難しさはこれです」ということにあたります。これをはっきり言えると、「おお、研究の大事なところをよくわかっているね」ということになるわけです。

ただし、魔王っぽければなんでも良い訳ではありません。魔王が魔王であるためには、いくつかの資質を備えている必要があるのです。「自分の研究の魔王は何か?」を考えつつ、「その魔王は本当に魔王の資質があるのか?」も問わなければいけません。そこで、大切な魔王の資質を3つ、確認しておきましょう。

魔王の資質①理想への道を塞いでいる

1つ目の資質は、理想へ辿り着くための道を塞いでいるということです。魔王(難しさ)があったとしても、それを解決することなく描いた理想を叶えることができるのであれば、重要ではないのでわざわざ挑む必要はないのです。避けて通ればいいからです。これは、「難しさの重要性」のチェックにあたります。

自分の研究の難しさはこれかな?と考えたあとには、「その難しさがどうにかならないと理想に近づけないことをしっかり説明できるか?」を考えてみましょう。説明できないとしたら、理想と難しさのマッチングがうまくないか、難しさが解消された後の展望をイメージできていない可能性があります。理想を描きなおすか、もしくは、難しさが解消されると何がどうなって理想に近づくかをしっかり考えてみると良いでしょう。

魔王の資質②簡単には倒せない

2つ目の資質は、簡単には倒せないことです。「難しさはこれです」と言ったところで、「それは単にこうやればすぐ解決できるよね?」と言われてしまうと、研究の価値を認めてもらえない恐れがあるのです。ですから、なぜこの難しさは難しいのかをしっかり考えて説明できるようになっておかないといけません。これは、「難しさの本質性」のチェックにあたります。

難しさにも色々あります。よく分かっていないから解決の糸口を探るのが難しい、あちらを立てればこちらが立たなくなるというトレードオフがあるから難しい、資料やデータが乏しいから把握するのが難しい、入り組んでいるから難しい、作業が膨大だから難しい、必要な設備や技術がなかったから難しい、難しさの本丸を突き止めるのが難しい、などです。「単にこうやればいいとお思いかもしれませんが、実際はこうだから簡単にはいかないんですよ」という説明ができるように、どんな難しさなのかをしっかり考えてみましょう。

魔王の資質③まだ倒されきっていない

3つ目の資質は、まだ完全には倒されていないことです。資質の①と②を満たしていても、すでに誰かに倒されきっていたら、もはやその魔王は存在しません。「難しいけど、それはすでにあの研究で指摘されていて、しかも解決されているよね?」と言われてしまうのです。これは、「難しさの新規性」のチェックにあたります。

もちろん、完全な新規性は必要ありません。これまでに誰も扱ってこなかった難しさというのは非常に稀です。ですから、「この難しさは、これまで誰も指摘しなかったものです。」とまでは言えなくても良いのです。

大切なのは、難しさのどの部分がまだ残っているかを明確にすることです。つまり、「こんな魔王がいます。この先行研究でここまではダメージを与えられました。しかし、まだこの部分が残っているので、倒しきれていないのです。」と言えるようにしましょう、ということです。これを明確に言えるようにするには、しっかりと先行研究調査することが大切です。

おわりに

この記事では、挑む研究の難しさ(魔王)をしっかりと考え続けて、大切に扱おう、という話をしました。研究の価値を伝える引き立て役でもあり、また指針を与えてくれる存在でもあるからです。その魔王が「理想への道を塞いでいる」「簡単には倒せない」「まだ倒されきっていない」という3つの資質を備えているかをしっかり確認することも大切という話でした。

この記事では、魔王とはすなわち「皆さんが描く理想へと至る道を妨げる元凶」であり,簡単に言えば「研究の難しさ」だと説明しました。下の記事では、これを研究テーマにおける「問題」と定義しています。研究テーマ決めにおいても,魔王が重要な役割を果たすのです。是非お読みください。

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