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バリューをむやみに出さないという選択

「バリューを出す」という言葉はなかなかに奥深いものだと思っている。
例えば、転職したばかりだと、転職バイアスというものが発動するケースがある。
これは僕がこう言っているだけで、そんなバイアスはないかもしれないが、転職後の3ヶ月はどうしても、

「せっかく転職したのだからどうにかしてバリューを発揮せねばバイアス」

が発動してしまう。
これはある意味大切なバイアスのタイプだとは思うが、難しいのが、余計なことをしてしまうケースがあるということだ。

どこか自分のバリューが出せる場所がないか、何か刷新することで自分のバリューとなる場所がないか、など、重箱の隅を突くような作業をしてしまうことがある。

不要な REAME.md の肉付けや、あまり必要とされていない何かライブラリの使い方を Wiki にまとめるなど、頑張り屋さんやいい人ほど何かチームに組織にコミュニティにとって、良いとされるであろう何かを頑張ってしまい、その結果、自分で穴を掘って、その穴を埋めるのに近い行動をしてしまう。
ただ、それだけなら被害は少ないが、多くの人にとって影響のあるものの場合はかなり状況としては厳しくなるだろう。

個人的にはこういうのを防ぐためにも、 Good First Issue が用意されていると良いとも思っている。
Good First Issue は不要なものではなく、初学者・初心者が入門編としてやりやすいタスクとして切り出されているものなので、無価値なわけではない。
なので、達成感もあり、自己肯定感も体感できるだろう。

少し例として、あまり良くないようなバリューの出し方について考えてみたい。
例えば、新しく人事的な人が入社した場合でその人が頑張り屋さんだとする。
目標設定がすでにされている会社だが、その時のフォーマットが適切に設けられているわけではなかったとする。
ここに自分の過去の経験から活路を見出して、目標設定のフォーマットを新たに作ったとしよう。
そのフォーマットは、スプレッドシートで3シート分あったとして、今期の目標を何個、そしてなぜか会社の OKR にも新たに紐づけて、いい感じの目標設定をすることがゴールであるかのように、刷新してしまったとする。
さらに上司からの一言コメントコーナーも追加されてしまった。
問題は、これに会社の上層部が、すごく良いと勘違いしてしまい、この功績を誉めてしまい、全社的にこの目標設定のフォーマットで行くことになったとする。
空中戦の議論などと言われるが、このような刷新行為はマネージャー層や経営層には受けがいいが、現場レベル・メンバーレベルではただの余計なことになってしまう場合がある。
そして、メンバーからは目標設定に使う時間が増大して、不平不満が徐々に溜まり、大きな波紋を呼び、少しずつ悶々をしたものが不穏な匂いとして充満し始める。
組織が多ければ、この匂いはどんどん大きくなる。

つまり当たり前ではあるが、バリューが出ているかどうかは、誰かから見たという意味で相対的なのだ。

ここで重要なのは、目標設定をきちんとしたフォーマットでやっていないがうまく行っているというケースを分析して、その方針のままいくのか、いかないのか、または他にどんなパターンがあるのかを文章でまとめて、それを議論するなら意味がありそうだ。
そして、刷新はしようと思ったが、やっぱりメンバー層で不要な刷新だとしたら、辞めるという判断も大きなバリューとなる
つまり、結果的には何も変化していないが、これは大きなバリューだ。何も追加しなかったというバリュー。

こういう結果的に何も足さないバリューが評価されない時は、そのバリューが出るまでの過程を報告していない場合がある。つまり自分の考えを否定してみたり、熟考しているところもちゃんとみてもらい、その上で、やっぱり辞めたという判断に評価をしてもらう。ここまでがワンセットなのだ。

何かを足す、何かを刷新する、何か理由づけをして良くしようとしてしまう。
こういったことは、いろんな職種でも起きてしまう。
アーキテクチャがせっかくシンプルなのに、少し自分の得意領域を盛り込んで、複雑化させてしまって、自分の知識を盛り込んだことをバリューとしてしまうことは僕もやってしまいがちだ。

こうならないためには、やはり人生経験が豊富なマネージャーがいてくれると良いと思っている。
バリューの本質というものがわかっていて、寄り添ってくれて、道標にもなってくれるような人だ。
そういう人がもし組織にいるのなら、みんなで大切にしてほしい。そういう人は目配りを多くしている分、やはり疲弊の量も多い。
でもそういう人がいるからこそ、不要なバリューがある程度なくなり、本質なバリューが出せる環境が作れているはずだ。

あまり無駄に気負わず、本質に向き合える組織作りを、僕は頑張っていきたいと思っています。

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