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文豪の休日。

その日は、会社を休みにして、
半日掛けてトランクに荷物を詰める。

家を出て、坂を下り駅舎をくぐる。
駅長は今日はいない。

電車に乗り隣駅まで行く。

特急列車に乗り換えて、
目的地の駅まで1時間半程で着く。

迎えの車に乗り込み
15時には旅館にチェックイン。

身支度や荷物をほどき、
自分の部屋のごとく広げた。

早速浴衣に着替える。
他のホテルや旅館では、
サイズがいつも合わなくて、
裾、特に足が短くて足りないのだが、
ここは、身長178㎝の私に
ジャストフィットする。

まずは、備え付けのお茶と饅頭を頂く。
この和室の雰囲気によく似合う。
床の間の掛け軸も、
水墨画で濃淡を面白く描き上げている。

小腹を満たした後は、
近くの森と庭を散策。

日本庭園は手入れがしてあり、
小径や植栽も歓迎している様だ。

私の好きなサルスベリや、
小振りの松、そして枝垂れ桜があり、
いつ来てもどの樹も賑わっている。

竹林を抜けると東屋があり、
持ってきた原稿用紙とノート、
万年筆を走らせる。

紙が万年筆に気持ち良く引っ掛かり、
カリカリと音も走らせる。

筆がのるとは、こういうことか!
と感心しながら原稿用紙の枚数が
積み上がっていく。

少し暗くなってきたので、
部屋へ戻る。

風呂からは、この辺りの景色が一望でき
じっくりと温まることができた。

離れの個室に夕飯の支度がしてある。

この辺りで取れた、海幸山幸が
わたし好みの器に並んでいる。

器と料理と会話しながら、
少しばかりのお酒に酔う。

そのまま部屋に戻り、
書きかけの原稿を仕上げ、そのまま布団へ。

目を開けると朝がきていた。

静かだとここまで眠れるのかと
質の違いにも驚いた。

離れの朝食は、絶品のお粥だ。
塩加減、出汁加減がまたしてもわたし好み。

再び、原稿用紙とノート、
万年筆を携えて東屋へ。

BGMは竹林を風が吹き抜け、
竹の擦れる音のみだ。

昨日の原稿をいくつか手直しして、
ようやく完成だ。

原稿を旅館から発送し、
そのままチェックアウト。

再び、駅に向かい、駅弁をゲット。
特急列車に乗り、隣駅へ到着。

乗り換えて、最寄り駅に戻ると、 
顔なじみの駅長がにこやかに
迎えてくれた。

あぁ、帰ってきた。
と満足感とお土産を手にして、 
自宅への坂を上る。

何だかいつもより、楽に上れる。

角を曲がると、
1歳の息子を抱えた妻が笑顔で待っていた。

ただいま
おかえりなさい
あー

お土産のあんパンを渡す。
こうして、私の休日は終わりを告げた。


いしかわゆき著
『書く習慣』1ケ月チャレンジ。

好きな休日の過ごし方  Day13

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