「売れる ハンドメイド」とはマーケティング
モノをつくるという記号論
良いものを作ったら、たくさん売れるんだろうか。
そもそも良いものというのは、みんなに愛されやすいものか、特定の一部に向けた個性の光るものなのか。
ハンドメイドを始めてから色々と耳にするようになった。
ブランディングとかマーケティングとか。
そこに注力し過ぎて、実は市場に搾取される形で活動してはないだろうか。
個人的には、良いものというのはメッセージ性が強い場合か、もしくは意味を排除した無駄なものに特化した場合だと思っています。
製作時間の長さとか、かかった手間とかは、作家の都合。
そこに存在する意味とか記号が大切になるんじゃないかなと思っています。
シニフィアンとシニフィエ、つまり意味されるものと意味するものの、両者の性質の遠いもの同士をなるべくインテグレイトする作業がものづくりにおいては重要ではないかと思っている。
象徴交換
天然石のパワーストーン、そこには紐の種類とか結び方とか色々な技術があるっていうのは聞いた事あるんだけど知らない人からしたら、丸い石が繋いであるブレスレットとしてしか見れない。
もちろん、プラスチックじゃなくて天然石なので、それなりに天然石としての原価や価値とか、「まあ一応宝石だし…」というお客さんの納得があるものの、逆に言えばそこで差別化(例えばすごい珍しい石を使う)としても、その石の希少性であって、作家自身の希少性やオリジナルを出せているとは言えないわけです。
ただ水晶の…というよりも、素材は水晶で、水晶には浄化のパワーがあるとか、そういうストーリーや浄めの記号としての天然石である事を書いてあげると意味が生まれる。
何年か前はレジンに「本物のお花をいれてます!」は差別化の対象でしたが、いまやみんなドライフラワーを手に入れる事が出来て、本物のお花アクセサリーはハンドメイド市場に溢れていて。
なので、そこに花言葉を添えたり、イメージとしての詩を乗せたりすることで、差別化が図れたり、お客さんが自分の生活と重ねるストーリーが生まれます。
花は花じゃなくて記号なんだ。
表象と意味の等価交換のシステムが、わかりやすく「ものづくりのストーリー」とか言われている。
等価交換しない販売は消耗する
天然石ブレスレットはじめ、アクセサリーって単純に表面積というか、身につけるという特徴から表現可能な大きさや範囲は限られてしまう。
そうなると技法や素材での差別化は結構難しいと思います。
例えばオーダー(この作品のひとまわり小さいもの作れますか?とか、この花の色を青に出来ますか?とか。)できる人は一見強そうだけど、注文が殺到した時にパンクする。
オーダーを受ける形での活動の場合は単価をかなり上げないと消耗します。作家側はこういう場合はこの位が限界という事がわかっているけど、お客さんは悪気なく、でも作家の当たり前をわからないので、1から説明しなくちゃいけない。やり取りでリソースを割くということは時間を切り売るわけなので。
価格設定の問題もよく聞くけれど、やっぱりそこに記号(メッセージ)が含まれているかどうかで決まると思う。
複製可能なものの面白さ
なんとなくオーダーは高いもので、複製可能なものは安価なイメージ(アパレルとかで考えると既製品という呼ばれ方)だけど、偶発的な一点物と同じくらい複製可能なものの作品も現代アートに近くて面白いなとは思う。
要は向き不向きがあって、オーダーものはお客さんの意見を取り入れられるから、やり取りでお客さんの望みが分かるのがメリット。ただあくまでも文章のやり取りがメインとなるので、「イメージと違った」は少なからずあるけれど。
複製可能なものは作家の作ったものがお客さんに受け入れられるかとか、どんな熱量で購入してくれたかがわからないので、不安だなという人も多いと思う。(なんとなく良いと思ってなのか、めちゃくちゃ気に入ってなのか、どこかで作品を見てオンラインショップに来てくれたのか、お互いの認知がどれくらいズレるか不明)
多分、自分がどう売りたいかよりも、自分が売りやすい方で販売した方が活動を続けやすいと思う。
複製可能、量産向はアートの彼岸にあって、確かに一点ものの方がなんだかアートっぽいし、温かくて貴重でというイメージ。
でも価値は作業量ではなくてメッセージ性にある。
お客さんの意見を聞きたいからオーダー方式をとるのではなく、オーダー方式の方が向いていると思うならオーダー方式を。(忙しくて量産が難しいとか自分のペースで受注したいとか)
複製可能な受注生産型もじっくり時間をかける余裕があるなら、たまにはオーダー方式を取り入れてみたり。
世の中の流れや市場に振り回されてないで、自分軸で選択したら良いと思う。
私たちはマーケティングするか、されるか
ハンドメイドを始める前は、アパレル店員や納棺師として働いてました。
全然畑違い。
だからハンドメイドの技術も売り方も独学でやって、失敗をたくさんしながら作ってきました。
売れるハンドメイド作家になるには…っていう本が、色んな所から立て続けに出版された時期がありましたよね。
その頃とか、その少し前に作家になろうと思った人は、そこの所の影響が大きそう。
さっき、販売方法の向き不向きの話をしましたが、みんなゴールってどこに設定してますか?
なんとなく「売れっ子ハンドメイド作家」って言葉に引きずられたりしてませんか?
ブランディングやマーケティングを念頭に置くと、無理しがちです。当然一般論でしか言われていない事に自身のライフスタイルが合致するかというと難しいわけで。
ハンドメイド作家さんは子育てしながらという人も少なくないのに、みんな深夜まで活動したり、めちゃくちゃ朝早く起きたり。
あとは旦那さんがおやすみの日は篭って作業したり。
お店を持ちたいとか、絶対ハンドメイドだけで生計立てたいとか、大きい目標があるなら良いのですが、「売れっ子ハンドメイド作家」という記号に引っ張られて活動してないか振り返って見て欲しいです。
自分自身でゴールを決めて、自分のペースで走って欲しい。
何の為に働いているか
体を壊したり、家族との時間を取れなかったり、ハンドメイド活動をする事でなにか代償を払っていないか。
月商3桁万円を目指すとかだと、寝る間も惜しんでやる必要があるかもしれないけど、主婦の人だと実は月に5.6万円くらいあればいいなーって人が多いんじゃないかなと思っています、勝手に。
もちろん欲を出せばキリがないし、そりゃあ10.20万円とかあれば貯金とかもすごい出来るけど、そうなると子育てとの両立は結構ハードじゃないかなと思います。
月並みな言葉にはなるけれど、この世で1番大切なのは「時間」だと思っていて、さらに健康に暮らす、家族との時間を大事にするなら、振り返ってみるとがむしゃらに働く事で失ったものが大きかったりするんじゃないかなと。
この文章はもしかしたら頑張っている作家さんに水を差すようなものかもしれないけど、取り戻せないものってたくさんあるわけなので、1度自分の目指すべきゴールみたいなものを再考して、そこから逆算した活動をするのもおすすめだよ、という話でした。
もちろん活動をゆっくりにしたりすることでの機会損失がストレスになるなら思いっきりやるべきだけど、自分の気持ちや身体をどうか大切にしてください。
辛くなって作家を引退してしまう事が1番悲しい事だと思ってます。
休んだり立ち止まってみたり、途中で違うなと思ったら全部ひっくり返して再スタートしたって良い。
何の為に働くか。
目的と手段がごちゃごちゃになってないか、配送に追われてイライラしてないか、注文が入ったら忙しいなとか製作を心から楽しめてないとか、何となく違和感を感じた時に少し休もう。
あなたの替わりはいないんだよ。
おまけ
ゆるっと話せるオープンチャットやってます。
slack にてゆるゆる相談もあり。基本的に世間話したりしています。無料コミュニティなので、是非話しかけてください!
アクセサリー 製作や諸々のクリエイター活動に還元させて頂きます。応援よろしくお願い致します。新しいこと。新しいもの、勉強していきます。