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【一生使えるCS道具箱 3/x】サポートデスクBPO移管経験者が教えるカスタマーサクセス業務BPOのはじめ方~How編~

本記事は「【一生使えるCS道具箱 2/x】サポートデスクBPO移管経験者が教えるカスタマーサクセス業務BPOのはじめ方~What編~」の後編です。前編をご覧になってない方は、リンクよりお読みください。

【一生使えるCS道具箱 3/x】と題されていますが、1作目はこちらです。

こんにちは、朝でも夜でも比留間です。経営管理クラウド"Loglass"を開発・販売する株式会社ログラスのビジネス職8人目、カスタマーサクセス職3人目の社員で、現在はカスタマーサクセス部でスペシャリスト職としてお客様対応やCSOpsに近い領域でマルチに働いています。

はじめに(再掲)

2023年12月14日に日本のSaaS/CSを語るうえで欠かせない存在、山田ひさのりさんからカスタマーサクセスのBPOに関するnoteが発されました。

ログラスでも今年からBPOベンダーを用いた、カスタマーサクセス活動にチャレンジしており、そのノウハウをお届けできると日本のSaaS業界/CS界隈に貢献できるのではないかと考え、noteを出すことにしました。

私自身、専門商社のお客様にコンサルタントとしてご支援していた際、SAP社内サポートデスクの立ち上げ(自分でオペレーターもやりました)からBPOベンダーにアウトソースする取り組みをしていたことがあります。このnoteでは当時の経験を生かしつつ、ログラスでカスタマーサクセス業務BPOを行った取り組みのポイントをお伝えしていきたいと思います。

前編のWhat編は山田さんにも取り上げていただきました。山田さんのnoteがWhy編のつもりで構成したので、うれしいです。

Step1. BPO導入の社内合意を得る

まず前提として、個社ごとにBPO導入の目的は異なるかと思いますが、経営アジェンダレベルだと大きくは①生産性改善、②リソース獲得の2パターンに帰着するかと思います。そしてこれは二者択一ではなく、グラデーション・重みづけの話になると考えています。具体的な部分は個社状況に依存するので、あまり深く触れずに進みます。

①生産性改善

山田さんのnoteで顧客育成(ナーチャー)業務はBPO余地がある、アカウントマネジメント(アウトカム創出)はBPO化は難しい(=社員CSで対応)と提起しており、まさにこの文脈です。

一方でアウトカム部分はというと、これは顧客の課題感や社内のパワーストラクチャーの把握、顧客とのリレーションシップ構築などセンシティブな業務の塊であるため、ここをおいそれとBPOする判断はできないでしょう。

つまり難しいのはアウトカムであって、ナーチャー部分ではないのです。そしてカスタマーサクセスの業務において、この2つが不可分になっていることこそが業務のBPO化を阻んでいるのです。

カスタマーサクセスの一部はBPO化していくという話

もちろん生産性を語るうえで生産性指標に触れなくてはならず、社員CSの人件費とパフォーマンス、BPO費用とパフォーマンスといったものは評価しなければなりませんが、そうした部分はIVRy山田さんのnoteに譲ります。

サクセス一人当たりの保有ARRは1億円を目指せ!」という話をちらほら見かけます。日本でここまでの生産性を実現している実例を僕はあまり聞いたことがありませんが、海外のSaaS企業では一般論としてこの水準が語られているのだと考えています。

分母となるサクセスの人員数をどこまでカウントするかによっても前提は大きく変わってしまいますが、保有ARRが1億円であれば単純計算でサクセスの売上原価率(人件費+α)は10%程度のイメージになるものと想像しています。当然、サクセス組織の平均年収次第でパーセンテージは変動します。

昨今話題のカスタマーサクセス生産性とどう向き合うか

比較的成熟したCS組織においては①生産性改善をトピックにBPO導入の議論が走ることが多そうです。

②リソース獲得

これは急成長ベンチャー、スタートアップ最大の経営アジェンダと言ってもいいでしょう。エンジニアチームとプロダクトを作り上げて特定の市場でPMFしプロダクトは売れるようになったものの、支援体制が弱く、サクセスしきれず取りこぼしてしまう、というなんとしても避けたいシナリオです。

ログラスのリソース獲得・採用は代表布川も圧倒的コミットメント・行動量を見せていますし、HRだけでなくビジネスサイド・エンジニアサイド全員採用で臨んでいます。

LayerX代表福島さんも「リソース配分の前にリソース獲得。」とポストしています。

ここで「採用」や「資金調達」と言ってはおらず「リソース獲得」と表現している意図が感じられます。私が言いたいことはBPOも「リソース獲得」のひとつの手段であるということです。

BPOは業務委託の方に1,2名、月40時間で働いていただくことも「リソース獲得」であり、その延長線上ではあるので、至極当然のことですがBPOで月1ケタ~2ケタ人月稼働いただくというのは「リソース獲得」であると堂々と言っていいものでしょう。

立ち上げ期を過ぎ、成長期に入ったカスタマーサクセス組織においては採用計画・人員計画とも見合いながら、BPOによるリソース獲得もひとつの手段として打ち手の候補に入れておくとよいでしょう。

いずれの目的としても、タスクとしてはおおよそ以下のように進められるかと思います。

  • 社内ステークホルダーとのミーティングをセットし、BPO導入について議論する

  • 現状の課題やBPO導入対象業務、定量・定性の期待成果・メリット/デメリット・リスク、運用イメージなどを整理する

  • 社内ステークホルダーから追加調査を進めてほしい、と言われるところまで合意形成する(価格やBPOベンダー側の体制などは提案を受けてみないと具体化できないため)

Step2. 提案できそうなBPOベンダーを探す

複数社検討しなければ、社内ステークホルダーに対する説明根拠が弱くなってしまうので、少なくともStep3.で2社は具体的な提案・見積を得られるよう、BPOベンダーさんを探しましょう。

Step2-1. Google検索する

王道ですね。

Step2-2. CSコミュニティで質問する

いずれのコミュニティでも質問させていただき、BPOベンダーさんをご紹介いただきました。ご紹介いただいた方々ほんとうにありがとうございました…!(実際に質問した投稿のスクリーンショットをSlackに取りに行ったのですが、90日以上前でSlackでアクセスできなくなっていました。。)

CSKOMMONSさん

CSHACKさん

私が検討したBPOベンダーさんをnoteでリスト化するのは、憚られますので関心ございましたら、面談依頼を投げてください。可能な範囲でお話しできます。

Step2-3. 投資家や顧問、他社のCS知り合いに訊く

Step2-1.と2-2.で充足しそうであったため、これは私は実際にはやらなかったのですが、シンプルに周囲を頼るといいでしょう。カスタマーサクセスの領域は、インサイドセールス代行やセールス代行、採用代行のようにBPOベンダーが数多くいる訳ではないのが2024年の現状かと思いますので、Step2-1.と2-2.の結果とあまり差はないのではないかと思います。

Step3. 提案依頼書(RFP)を作成する

BPOベンダーの購買/調達に必ずRFPが必要な訳ではないですが、Step1.を踏まえながら、提案依頼書(RFP)を作ることをオススメします。情報の非対称性(クライアント⇔ベンダーおよびベンダーA⇔ベンダーB)を減らし、妥当性の高い提案を得るための手段としてRFPは有効です。

商談に出てくださるBPOベンダーさんの営業担当の、RFPの理解度・理解スピードや、質問内容というのは長期的なパートナーとなるBPOベンダーさんを評価するリトマス試験紙になります。

RFPを作らず口頭のみの説明や社内議論をサッと整理しただけのスライドを用いたような説明だと、商談相手が得る情報・内容理解にバラつきが出るため、評価がしづらく、正しく購買/調達することが難しくなります。

私もRFPを作るのはひさしぶりだったため、お作法を復習しながらこんな構成がいいだろうということでまとめました。

提案依頼書(RFP)

  • 要件

    • 提案依頼の背景

    • 業務の範囲

    • 業務の詳細説明

      • CS関連業務システム

      • 業務の詳細

    • 業務の目的、目標、KPIなど

    • 執務条件

      • 執務場所

      • 執務頻度

      • 執務時間

  • 提案の要件

    • 提案書の提出形式

    • 提案書の構成要素、必須項目

    • 提案書の提出期限、提出先

  • 提案審査の基準

    • 審査者の構成、担当業務

    • 提案書の評価項目、評価方法

    • 提案書審査後のプロセス

  • 契約条件

    • 契約期間、更新条件

    • 品質管理、サービスレベル、SLA

    • サービスの提供体制、報告書の提出、運用上の規定

  • 保証、契約解除

  • 補足事項

    • 備考

    • 注意事項

    • 問い合わせ先

読めばイメージできる項目かと思いますが、2点だけ補足します。

【補足①】提案書の構成要素、必須項目
以下に構成要素を示します。ただし、必ずしも全ての項目を採用する必要はありません。内容に応じて、必要な項目を選択、追加してご提案をお願いします。
1. 概要:提案内容の概略、提案の背景や目的、提案者の資格や経験など
2. 提案の詳細:業務内容、スキル要件、人数、作業スケジュール、品質保証、情報セキュリティ、顧客サポート、料金、支払条件、契約期間など
3. 提案者の紹介:提案者の企業情報、過去の実績や成功事例、提案者の強みや独自性など
4. 提案後の手続き:契約手続き、サービス開始時期、その他の手続きに関する情報

【補足②】提案に幅を持たせたい項目・要件を絞り込みきれない項目・こだわりがない項目
「任意とします。貴社状況に応じてご提案をお願いいたします。」
のように記載すれば良いと思います。乱発すると、それはもうRFPではなくなってしまうので、

NotionでもGoogle ドキュメントでもWordでもよいので、このRFPを作り切ってPDFに保存し、リストしたBPOベンダーさんに送付します。

Step4. BPOベンダーから提案をもらう

RFPを送付すると、BPOベンダーの営業担当の方から返信がきます。①繁忙で人員がおらず提案できないためまたの機会に、というパターンと②詳細をヒアリングしたいので、お打ち合わせセッティングさせてください、というパターンに分かれます。

提案してもらいたい稼働があまりに少なすぎる場合(BPOベンダーさんの規模にもよるが0.6~2人月)、BPOのビジネスモデル上、好ましいビジネスではないので、提案せずに下りることも往々にしてあります。(カンタンにいうと営業効率や管理効率が落ち、BPOビジネスとして魅力が低いためです)

その際は、いつかの時のために、何人月くらいからそのBPOベンダーさんの提案可能な稼働ボリュームになるのか訊いておきましょう。クライアント側が知っておいて損はないですし、ベンダー側も伝えるデメリットはほぼない情報ですので、ストレートにコミュニケーションできると思います。

②詳細ヒアリングの打ち合わせをすると、当然BPOベンダーさんには順々にお会いすることになります。できるだけ、先にお会いしたBPOベンダーさんから出た質問と回答は、次回以降にお会いするBPOベンダーさんにも伝えるようにしましょう。

質問がバラつくということは、その営業担当のRFPの理解度合によって脳内で補完されるようなことだということを示しています。私たちが成したいことは、営業担当の評価ではなく、①生産性改善と②リソース獲得のために自分たちのビジネスパートナーを選び、最善の購買/調達をすることです。なので、情報はたくさん得てもらい、良い提案が返ってくるように努めます。

どこまでできるか次第ではあるものの、先にお会いしたBPOベンダーさんに後から出た質問と回答をまとめてメールしてあげると優しいです。なお、RFPがリッチだとこうしためんどくさいコミュニケーションも起きづらいという副次的効果もあります。

Step5. BPOベンダーを選定する

この評価項目は、目的や個社状況、ドメイン・プロダクト特性によって変動するので、ログラスの事例紹介までに留めます。

BPOベンダーさんから受領した提案書や提案プレゼンテーションを評価します。

評価項目

  • 信頼性:顧客組織情報など機密情報を扱うため

  • サービス提供範囲

  • 便益・付加価値

  • 価格

  • 専門性・実績

  • 運営管理体制

各評価項目に、相対評価の〇△×をつけて、定性コメントを付し、どのBPOベンダーさんをビジネスパートナーにすべきか考えます。

社内ステークホルダーへの説明を行い、合意済み・想定通りであった点、合意や想定から外れた点について分けて議論をします。議論の結果、必要に応じてBPOベンダーさんにリクエストするなど調整を行います。

社内の稟議ワークフローがあると思いますので、それを通していきます。

稟議が通ると意思決定となりますので、選定結果を、提案してくださったBPOベンダー営業担当の方に連絡します。

落選してしまったBPOベンダーさんにも時間をかけてくださった感謝を伝え、伝えられる範囲で落選理由を伝えます。今後自分たちのビジネスが成長した際、またいつか支援いただくかもしれませんので、ポジティブな関係、少なくともニュートラルな関係を作りましょう。

Step6. 受け入れロジを準備する

ここから多数の部署と協働しながら受け入れロジを準備します。

Step6-1. 契約締結

稟議時点で法務部、管理部のレビューは通っているかと思いますので、電子契約などを適切に取り交わすといったタスクとなります。

Step6-2. 入場手続き

総務部や情報システム部、コーポレートIT部に入場する日付や入場者の氏名、貸与PCの要否・台数、入館証の要否・枚数など必要な情報を伝達します。

GoogleワークスペースやMS365のようなスイートのほか、カスタマーサクセス業務に必要なシステム・SaaSのユーザーアカウントを作成、業務範囲によって適切に権限設定します。

情報システム部(・BizOpsチーム)で対応できる範囲は個社によって異なり、対応できない場合カスタマーサクセスチームで対応することになりますので、適宜確認ください。

Step6-3. 入場オンボーディング

入場日の午前中に時間を取って、入場いただいた方々に様々お伝えしていきます。

入場いただいたいら、個社ごと・BPO対象とした業務ごとに必要なドメイン知識やプロダクト知識をインプットします。

セキュリティなど会社として守らなければならないルール、沿うべきガイドラインがあると思いますので、そうした点もインプットします。

そのほかBPO対象業務のオンボーディングコンテンツがあれば受講や読み込みを行っていただき、それ以外はOJTのかたちを取りながら並走しつつ、徐々に完全に離してお任せするタイミングをはかります。

Step6-4. 報告/改善体制立ち上げ

BPOベンダーさんの営業担当やスーパーバイザー(SV)が定例会の実施を打診してきますので、日程を確保して対応しましょう。

BPOベンダーさんの報告フォーマットがあると思いますが、自社でカスタマーサクセス以外で業務委託チーム(エンジニアや採用BPO(RPO)など)と協働しているときは、そこの報告フォーマットもあると思いますので、参考にしながらアジェンダの過不足を微調整しましょう。

インシデント発生時の対応、エスカレーションパスといったところはしっかりと認識合わせすることをオススメします。カスタマーサクセスはお客様に直接関わることが多いですので、お客様からのご指摘・クレームを受けやすいポジションでもあります。

お客様満足度やNPSを高めるためには、お客様接点を磨き込む以外にありません。インシデント対応の巧拙・初動によって、お客様の私たちSaaSベンダーへの印象・評価は大きく変わりますのでしっかりとBPOベンダーさんとも連動して動けるように建付けましょう。

おわりに

前編【一生使えるCS道具箱 2/x】サポートデスクBPO移管経験者が教えるカスタマーサクセス業務BPOのはじめ方~What編~」でも書きましたが、狙いは単なる生産性の改善だけではありません。リソース獲得だけでもありません。

ログラス社のカスタマーサクセス職のキャリアが、より魅力的な存在になるため、その思いを持ってこの取り組みを推進しました。

ログラスをご契約いただいている名だたる企業の企業価値を上げることがログラスのカスタマーサクセスの価値であり、経営課題のラストワンマイルを埋め、価値を実現する存在がログラスのカスタマーサクセスだと思っています。

そうした取り組みに集中するため、これからログラスにカスタマーサクセスとしてご入社される方々にご活躍いただくため、適切な体制・リソース配分を整えつつあります。

いっしょにはたらく仲間を探しておりますので、もし少しでもご興味ございましたら、YOUTRUSTでもXでもお声がけください。

求人票・応募はこちら

株式会社ログラス
比留間


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