見出し画像

「分人」を意識したバーティカルな価値が、顧客に深く刺さる

エレウォンの棚は、ウェルネス関連の食品や飲料、サプリメントのブランドの出発点として長らく羨望の的だったが、健康やエコに関心の高い富裕層の顧客をターゲットにした美容ブランドの人気の場所として、ますます重要な位置を占めるようになっている。

LA拠点の高級スーパーチェーン、エレウォンの ビューティ への野望の内幕

現代において百貨店は成立しない

スマートフォンによって過度にパーソナライズドされた経験をした顧客にとって、「みんなにとって良いものは、みんなにとってどうでも良いもの」になっているからだ。

この時代の大きな変化の波は、不可逆的だ。もう2度と戻ることはない。このトレンドはしっかりと深く理解する必要がある。

人は一つの人格ではなく、複数の「分人」が併立した存在であることが、スマートフォンによって明確化された。

それはもちろん古来から本来はそうであった。家族といる自分、友人といる自分、仕事をしている自分、趣味と向き合っている自分・・・。コミュニティやシチュエーションによって、自分の人格はそれぞれ少しずつ異なるはずだ。

しかし外部との接点がリアルに限られていた時代は、それが統合された一つの人格しかないかのようにみんなが誤解していた。外部接点が限られているがゆえにそれで問題なかった。

スマートフォンが普及し、SNSが普及し、一人が複数のアカウントを使い分ける時代になり、分人が文人として存在することができるようになった。人々は常にアカウントを切り替えるように(と同時に)、複数の人格を切り替えながら生きる時代になったのだ。

だからこそ「みんなにとって良いものは、みんなにとってどうでも良いもの」が不可逆的なトレンドとなったのだ。

そう、百貨店はビジネスとしての成立性は、今後どんどん弱まっていく。

必要なことは、自分達のブランドが「誰にどんな価値を提供しているのか」を明確にすること。そしてそれをなるべくシャープに尖らせていく。それが尖れば尖るほど、大多数の人には刺さらないが少数の人にとてつもなく深く刺さるブランドができあがる

もちろんあまりにも尖らせすぎれば母集団の少ないマーケットを定義することに繋がるので、ビジネスとして成立しなくなる。その良い塩梅を探ることが今後のマーケティング活動そのものといっても良いだろう。

百貨店は、百貨ある店としての存在から、尖った十貨の集合体としての百貨店という形に、今後は変化が迫られている可能性は大いにあり得る。

セレブリティやインフルエンサーが殺到し、自然環境保護的なブランディングからシックなブランディングへと進化を遂げた。ヒップな要素に加え、エレウォンは「非常に信頼できる情報源」であることから、この小売店の棚は「認められた証」

エレウォンは、関連する常連顧客層にブランドを発見してもらいやすく、またエレウォンのお墨付きが得られるというメリットがある。

エレウォンのブランドパートナーシップ・チームは、自社のイメージに合う美容ブランドを探すため、小売パートナーシップにまだ参入していないD2Cブランドに焦点を絞り、「つねにトレンドを見て調査している。私たちは、必ずしも特定のものを探しているわけではないが、適切なブランドは見ればわかる」。



お薦めコラム

最新コラム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?