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【台湾建築雑観】面積をめぐるゲーム

台湾で建築計画をする際に、日本と違った面積計算上のルールがあります。そのために、建築計画に大きな縛りが出てきます。今回、そのルールのことを概略説明してみます。

バルコニー

台湾では過去バルコニーを室内化する事例が多かったからでしょうか、バルコニー面積に関する規定があります。当該階の10%までは容積対象床面積に含まなくてもよいというものです。このような規定があるために、日本のような横に長いバルコニーはあまり計画しません。この制限以内でバルコニーを処理するよう考えます。

共用廊下

また、共用廊下についても容積対象外となる緩和規定があります。これは幅2m以上の有効な廊下を作らせ、むやみに狭い廊下としないための規定と思われます。これも当該階の床面積の10%までは容積対象面積外とすることができます。
台湾の集合住宅で廊下の長さを短くしたがるのは、こういうところにインセンティブがあります。廊下の面積が大きいと10%を超える部分が容積対象面積としてカウントされてしまうわけです。

バルコニー+共用廊下

このままだとバルコニーと共用廊下で合計20%となるわけなのですが、もう一つルールがあります。それはバルコニーと共用廊下の容積対象外面積の合計は15%以下とするということです。この容積対象外となるバルコニーと共用廊下の面積は、計画する側で面積配分できるわけです。
通常バルコニー面積は販売面積となりますので、これを出来るだけ10%近く取るように計画します。

そして、いかにバルコニーと共用廊下の面積をこの15%の容積対象外で収めるかが建築師の腕の見せどころとなります。

外壁の張出部分

また、以前に台湾の住宅の平面が、柱と梁を外壁面の外側に出すアウトフレームにすると説明しました。その状況で外壁面の凹凸をいろいろデザインしようとすると、梁の上面の奥行きが深くなりがちです。この点にも法規的な縛りがあります。バルコニー面積にカウントしていない梁の上のような場所で奥行きが1.0mを超える場合、それは面積にカウントしないといけません。
最近、外壁面の外側に張り出した横方向の帯状の意匠をすることが多いのですが、よく見るとこの部分は梁との縁が切れています。スラブでつなげてしまうと、上記の1.0mの奥行きを超えてしまうために、構造的につなげていないのです。

塔屋

塔屋の部分は、申請上容積対象面積としていないことが多いです。名称を機械室であるとか階段室として、住宅の機能がないという体にしています。
しかし、実際は住宅のなんらかの機能を持たせていることが多いですね。ただし、作り付けの家具は避けて、必要な場合ただの空間とできるようにしてあります。

地下階

住宅の計画をする場合、地下街に容積対象となる機能空間を置くことはほとんどないです。そして、駐車場や各種機械室、エレベーターホールや階段室として計画します。

防空避難室(防空壕)

日本と異なった法的な要請として、防空避難室(防空壕)を計画する必要があります。全ての建物というわけではなく、都市部にある大規模建物を各地方自治体の条例で定めています。
必要な面積は、建物の建築面積相当となっています。ですので、おおよそ一階の面積と同様の広さの防空避難室が必要になります。
また、防空避難室となった場合に、その天井の、スラブは厚さを200mmとすることが必要になります。また、そのような法的要請があるために、地下に上階とつながる吹き抜けを作ったり、機能を置いたりすることがあまりありません。(住宅の場合で、商業施設であれば地階を商業空間にすることはあります。)

また、この防空避難室は用途としては駐車場としてもよいことになっています。

販売面積(大公、小公と車公)

また、台湾では販売面積に、これらの共用部分の面積をそれぞれの住戸の面積に応分して上乗せしています。日本の住戸販売面積が専有部分のそれであるのに比べ、台湾では専有部分に共有部分を含んでいます。従って、例えば販売面積60m2という物件であった場合そのうち30〜35%ほどが共有部分であり、占有部分の面積は40m2程度になります。
そして、このように共用部分の面積も販売面積としてカウントするために、その部分の面積もミニマム化を図るというインセンティブが働きます。

そしてこの共有部の種類を、住戸フロアの共用部(小公)、それ以外のエントランスホールや共用空間、機械室など(大公)、駐車場(車公)などと分けて面積カウントし集計しています。

設計実務上の大きなクライテリア

僕は日本のマンション設計には疎いのですが、上記のような面積カウント上の詳細な内容は非常に面倒くさく、これをまた不動産登記の際に非常に厳密に当たるので、厳密さも要求されます。設計の際の大きなクライテリアになっています。



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