見出し画像

読書で学ぶ

僕が中国語を学ぶ上で大きく役に立ったのが読書です。半年の留学の間に中国語の本を簡単なものから読み始め、段々と難しいものも読めるようになっていきました。今は現代文の文章であれは問題なく読み進められます。
どのようにして中国語の文章に慣れ親しんでいったのかを書いてみます。

語言交換の際の教材

留学している時に、今の家内と語言交換として相互勉強会を続けていました。その時に選んだ教材が中国語版のReader’s Digest 讀者文摘でした。大体において4ページから8ページくらいの短い文章で書かれているものです。話題もあまり難しいものはなく、日常生活に密着したものが多く、とっつきやすかったように思います。
学校の授業や会話の練習とは別に、留学の初期からこのような教材を使って中国語の文章を読み始めました。

短編小説

讀者文摘を読んだからといって、それはすらすらと読書を楽しむというものではありませんでした。一つの文章にいくつも分からない意味の単語が現れるので、それを一つ一つ辞書をひきながら確認するという読み方でした。
それが、ある日雑誌の短い小説、10ページくらいのものだったと思います。これを辞書を使わずに読み通すことができました。内容は恋愛もので、難易度もそれほど高くはなかったから不意にそんなことができたのでしょう。
しかし、それがある種の自信になりました。自分は中国語の小説をそのまま読んで楽しむことができるんだと。
それ以降、気になる内容の本は中国語のものでもどんどん買って読むようになりました。

建築の法規、条例

仕事で台湾の設計事務所に勤めていると、少なからず建築の法規に関わる調べ物をしたり、根拠を確認したりすることが必要になります。これはなかなかハードルが高かった。法律の文章というのはなかなかとっつきにくいもので、きちんと勉強しないと読解できません。これについては、僕は2つの方法で克服しました。

一つは筆写です。建築の法規や、それに準ずると言われる"建築技術規則"を全文ノートに書き写すということをしました。これは、法文の呼吸、リズムを体得するという効果があったように思います。書くことで、中国語の構文の作られ方を身につけることができました。

もう一つは、建築師試験のための予備校に行ったことです。台湾で建築師事務所で働くのだから、試験を受けるわけではないのですが、台湾の建築師が学ばなくてはならないことを、学校に行って直接中国語で学ぶことにしました。
ここでは、法律用語の使われ方などを勉強することができました。これは法規を読み解く際にキーとなる概念です。ある助詞がどのような意味合いを持つものなのか、そういうヒエラルキーを勉強することができました。

歴史読物

日本にいる時から歴史小説や読物を読むのが好きでしたので、台湾で出版された歴史関係の本も読み始めました。
曹永和
まずハマったのが曹永和氏による台湾の17世紀の歴史に関する論文です。
この時代の台湾は原住民による部落統治の時代から、オランダ東インド会社による植民地統治を経て、鄭成功による漢民族の統治に代わるという大変動の時代です。曹永和氏はこの時代の歴史を、オランダを中心に、その他各国の歴史資料を読み解くことで論文にまとめています。
この歴史観は台湾島史観と呼ばれ、それまでの大陸中国の歴史を主とする考え方から離れ、台湾独自の歴史を紐解くというものです。それを中国以外の多方面の資料に当たり構築しています。

林佩芬
このようなノンフィクション系読物と合わせて、長編歴史小説にもチャレンジしました。
満州族の作家林佩芬による「努爾哈赤」(ヌルハチ)全6巻と、「天問」全8巻です。ヴォリューム的には吉川英治の「宮本武蔵」と「太閤記」を読むようなものですね。

これがとても面白かった。満州族の作家が自分の民族の英雄を描くのですから、感情移入の度合いが違います。当時の明朝の辺境で少数民族がどのような迫害を受けていたのか、そしてそのような逆境からどのように清王朝を作り出していったのか、それを血肉の通った物語として描いていました。

一方、「天問」は明清交代の時代を滅びる方の明朝側から描いた小説です。こちらは、個人の力では如何ともし難い、王朝が崩壊していく過程を、主に王族と軍人の視点から描いています。
これは留学後の3年目の頃でしょうか。このような大部の小説も読みこなすことができるようになっていました。

中国語の古文

そして、このような現代文の歴史読物に飽き足らず、明清交代の時代の歴史資料を直接読むことも始めました。台湾の書店には、そのような古文の歴史資料が比較的安価に大量に置いてあります。それで、何冊か買って明清の時代の文献資料にチャレンジを始めました。
中国語の古文は、時代によりかなり難易度が異なります。春秋戦国時代の文章など、今もって太刀打ちできませんが、清朝時代のものだと、慣れるとかなりなところ読み進めることができます。少なくとも、内容はどんなテーマで、おおよそこんなことが書いてあるとはつかめます。その上で、もう一段階熟読すべきかどうか判断して、必要であれば辞書を使って確認するという具合にしてます。

また、この練習をしたことで、中国の歴史ドラマを見ることがかなり容易になりました。歴史ドラマ独特の言い方も、清の時代の文章の呼吸をつかめていれば、だいぶ理解しやすくなります。

中国語の読書を直接楽しむ

中国語は表意文字としての漢字を使う言葉です。日本人は中国語を学ぶにあたって、日本語でも大量の漢字を学んでいるというアドバンテージを持っています。ですので、外国人としては中国語を最も学びやすいのではないかと思います。欧米人が漢字に取り組むのと比べると、その容易さは雲泥の差です。なので、中国語の読書はかなりな程度克服しやすいように思います。

そして、漢字によるヴォキャブラリービルディングは、視覚によるのでかなり容易です。読書によるトレーニングで、中国語の語彙はかなり増えたように思います。

なによりも、中国語でも自分の興味のあるテーマの本であれば、どんどん読み進められることができる。そこからは日本語の本だけではない新しい知識を得られるし、それがまた中国語の能力を高めることにもつながる。一石二鳥です。

簡単に言って、"好きこそものの上手なれ"、ですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?