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デジタル時代の企業内大学に重要な4つの要素とは?

中堅・大企業の多くは、社内に人材開発機能を設けています。人材開発機能が、組織において戦略的に重要であると認識されている場合、リーダーはしばしば、その活動をコーポレートユニバーシティ、コーポレートアカデミー、またはリーダーシップセンターとしてブランド化します。そのブランド名は、様々なステークホルダーに対して強いメッセージを発します。そのメッセージとは、コーポレートアカデミーがビジネス戦略の重要な要素であるというものです。

デジタル時代の到来により、コーポレートアカデミーへの期待は大きく変化しています。ビジネスのスピードに合わせて、従業員のスキルアップやリスキルを行うことの重要性が高まり、企業への大きなプレッシャーとなっています。コーポレートアカデミーがカバーする範囲は組織によって異なりますが、デジタル時代において高いパフォーマンスを発揮するコーポレートアカデミーは、Four-partモデルに従います。Four-partモデルを用いることで、コーポレートアカデミーはオンプレミスで、かつビジネス戦略と整合性がとれた教育を従業員に提供することができるのです。

デジタル時代におけるコーポレートアカデミーのモデルは4つの要素で構成される

コーポレートユニバーシティの起源は、1960年代までさかのぼります。当時、ゼネラルモーターズ (GM)やゼネラルエレクトリック (GE)といった企業は、従業員のスキル習得を目的とし、標準化された社内研修プログラムを開始しました。1956年にGEはクロトンビルリーダーシップセンターを、1961年にはマクドナルドがハンバーガー大学を開設しました。そして今日では、アップル、ボーイング、デロイト、ディズニーなどのグローバル企業が学習機関を開設しています。今日のように、多くの企業が本格的なアカデミーを開設することは、当時の人々にとって想像もつかなかったに違いありません。

今日のコーポレートユニバーシティは、企業がデジタル時代に向けて変貌を遂げるのと同様、新しい段階に入りつつあります。企業は、従業員のスキルアップやリスキルの需要に応えることがますます求められています。つまり、企業は定型的な学習を提供するだけでなく、知識の共有や従業員の交流を制限なく促進するツールやプラットフォームを開発・導入する必要があるのです。その結果、L&D部門とその専門家は、デジタル時代に必要とされる能力、テクノロジー、プロセス、そして戦略を変革する必要があります。

デジタル時代において、高いパフォーマンスを発揮できるコーポレートアカデミーの特徴は、4つの戦略的要素にあります。

1.モバイル学習プラットフォーム

COVID-19のパンデミック下で明らかになったように、デジタル化は企業の学習を変革し、現状の不備に対処する大きな機会を提供します。学習コンテンツがクラウドに収容されたことで、複数のデバイスや教育環境からアクセスできるようになり、ユーザーはそれを生成、共有、そして継続的に更新できるようになりました。クラウドベースの学習・体験プラットフォームの統合は、新しい学習プログラムや便利なスマートフォンアプリ以上のものを可能にします。

先進的な企業では、クラウドベースの学習の利用を拡大し、大規模なオープン・オンラインコース、小規模プライベート・オンラインコース、教育用ビデオ、学習ゲーム、eコーチング、バーチャルクラスルーム、オンライン業績サポート、オンラインシミュレーションなど、パーソナライズされた学習アプリケーションを実行できるようにしています。デジタル・ラーニング・ソリューションは、あらゆるコーポレートアカデミーの最大規模の学習フォーマットとなる可能性があります。

2.臨場感を高めた対面型教室

対面型学習を重視する企業の中には、人間工学をベースに設計された家具、十分な照明、学習に特化したインテリアデザインなど、ますます充実した学習専用施設を整備している企業があります。成功する教育開発プログラムでは、従業員がいつでも業務から離れて、息抜きできる環境を整えています。

このように、日常業務から物理的に離れることの重要性は、決して軽視できるものではありません。もし従業員が遠隔地やバーチャルな職場環境から離れる機会を失えば、より内省的で熱心な学習の機会が失われることになります。ハーバード大学のロナルド・ハイフェッツ教授は、これを「バルコニー・モーメント」と呼んでいます。これは、リーダーが定期的に“ダンスフロア”を離れ、まわりで何が起きているか冷静に観察することが重要であることを意味しています。

対面型学習プログラムは、通常3ヶ月から12ヶ月かけて行われるコーポレートラーニングの一部であるべきで、その中で学習者は専門知識を身につけ、スキルを開発・実践し、マインドセットを変えていきます。学習したことを繰り返し、業務に適用することが、効果的な学習につながります。

3.企業文化のコアとなる職場学習

公式的・計画的な学習は、従業員の能力開発のために、非常に重要な役割を果たします。しかし、このような学習は、個人の能力開発のごく一部に過ぎません。世界的に見ても、労働者が公式的な学習に費やす時間は年間平均35時間です。私たちは、ほとんどの学習が業務の中で自然発生する職場学習であるべきだと考えます。従業員は、年間約1,840時間を職場で過ごします。この時間は、週40時間労働で46週間分に相当します。職場学習を実現するために、リーダーは、人々が専門知識を共有し、協力し、リアルタイムでフィードバックを交換し、ネットワークを作り、役割を変え、タスクフォースやプロジェクトグループに参加し、OJTやメンタリングを楽しむ文化を促進する必要があるのです。

4.パフォーマンスを高め、インパクトを測定するための学習と分析

他のビジネス部門と同様に、L&D部門の意思決定を導き、従業員の学習体験を最適化するためには、人材のビッグデータを活用して予測分析を行う必要があります。例えば、人材データは、組織がどこで最も大きな能力格差を経験しているかを示し、特定の学習プログラムを開始するのに役立ちます。また、ビッグデータによって、例えば興味や役割、予定表にある活動などに基づいて学習コースを推奨することで、より効果的な学習プログラムを実現することができます。さらに、学習プログラムの受講とパフォーマンス向上との相関関係を分析し、リーダーに示すことができます。コーポレートアカデミーは、その取り組みがビジネスと整合しているか、ビジネスによって優先されているか、そして、ビジネスに影響を与える専門知識の構築や新しいスキルの開発にどの程度成功しているかを示す必要があります。ビッグデータと予測分析は、これを可能にします。従って、ビッグデータと予測分析は、あらゆる企業向けアカデミーのコアコンピテンシーとなるのです。

デジタル時代の到来は、今後もコーポレートアカデミーに大きな影響を与えるでしょう。アマゾンが小売業にもたらした革命のような次のレベルの変化を達成するには、アジャイルで、アクティブで、データ駆動型の学習組織に加えて、デジタルツール、学習プログラム、介入方法のシフトが必要になります。これからのコーポレートアカデミーは、効果的なデジタル学習と、学習に集中できる対面型学習のバランスをとる必要があります。リーダーは、オンプレミスのソフトウェアソリューションに別れを告げ、クラウドベースで、プラグアンドプレイの学習アプリケーションを素早く立ち上げることができる、オープンラーニングアーキテクチャへと移行していくでしょう。そして、職場学習を最も効果的に形成するために、未来のコーポレートアカデミーのリーダーは、タレントマネジメントのメンバーと協力する必要があります。

デジタル時代のコーポレートアカデミーのモデルから得られる知見は、次のような分野に活用できます。

  • コーポレートアカデミーの既存の焦点と能力を評価する。

  • コーポレートアカデミーの将来の方向性と特定された能力ギャップに基づき、アクションの提案と戦略的プランを作成する。

  • コーポレートアカデミーの新しい方向性と戦略に対する理解と積極的なスポンサーシップを得るために、上級管理職との関わりを深める。

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