見出し画像

医療界→飲食界に行った話

みなさんこんにちは、4/1 から株式会社dinii でエンジニアとして働いております、飯塚浩也と申します。

実は、就職の前に半年ほど、起業に向けて準備しておりました。しかし、諸事情により断念し、たまたまそのタイミングでご縁があったのが、今の会社となります。


今までの人生99% が医療や健康に関係していた時間を過ごしていたこともあり、なぜ飲食業界に行ったの?と思われたかもしれません。家族の反応も、また然りでした。


医療ベンチャーを起業された先輩方から一緒に働かないか?というお声がけをいただくこともあり、その方々への説明責任及び、これからITを使って医療現場を変えていこうと思っている方々へ何かお伝えしなければと思い、入社エントリーとは少し違った角度から、考えていることを書いていこうと思います。


エンジニアになった理由

2017年、医療現場におけるとある課題を解決する団体を作りました。当時は、熱意しかない生まれたての世間知らずな医療業界しか知らない赤ちゃんでしたが、30人ほどの有志が集まってくださいました。


しかしながらうまく行きませんでした。この団体は、世に何の価値も残すことができず消滅しました。


自分の年収は、周りにいる5人の平均年収になるという言葉があります。類は友を呼ぶ、comfort zone などとも呼ばれておりますが、いずれにせよ、リーダーが熱意しか持っていない状態で、団体を作ったとしても戦うことはできませんでした。


個の力を高めよう。
自分一人でも課題をねじ伏せるだけの力をつけよう。


そう思ったのが2018年のことです。


それからというもの、課題を解決する力はITスキルだと確信し、そこにステータスを全振りしました。ご縁に恵まれ、2019年にエンジニアになります。


(この辺りの経緯としては、以下にまとめております。)


医療業界の同質性の圧力との戦い


医療の世界は閉鎖的であり、ステークスホルダーが多く、伝統的な悪しき風習や日常を変えることは容易ではありません。勤務医時代の地方病院での話をします。当時、人手不足でストレスフルな環境であった病院を少しでも良くしようと、アートを病院に取り入れるプロジェクトを始めました。活動としては、病院の中で最もストレスを感じる場所を選定し、そこに患者さんが少しでもリラックスできるようにをコンセプトとし、低予算で活動を始めました。結果として、病職員、院長/副院長先生、美術大学の教授や外部のデジタルアートに精通された方など、総勢40名弱のご協力をいただきました。

急性期病棟のIC部屋、私達医師がこの狭い空間で、厳しいお話をよくしておりました。
救急外来の待合室
内科外来


結果として、患者さんだけでなく、医療スタッフからもご好評をいただくことができました。病院の理念に、職員の笑顔を通じて、患者さんに笑顔を届けるというものがありましたが、まさにこの理念を肌で感じた瞬間でした。


しかしながら、この活動は半年後に終了することになります。活動が大きくなるにつれ、反対勢力が生まれました。とある診療科のご年配の部長先生からこの活動への苦言を呈されたことを皮切りに風向きは変わった結果、この活動は解散を余儀なくされることとなります。(現在、一部のアートだけ残る形となっております。)


医師の働き方改革に焦点を当てますと、この改革が上部ではなく真の意味で効果を発揮するかは、この同質性の圧力との戦いが命運を分けると思ってます。組織の中で、誰か一人の力、一部の人々に依存するのではなく、経営者と職員全員が同じ気持ちで動き、この同質性の圧力という力学を良い方向へ利用すれば、結果は大きく変わることと思われます。私にも何かできることはないか、引き続き注視して参ります。



話を戻します。
医療の世界を変えるためには、一旦医療の世界の外に出る必要があると、2019年の当時は信じて疑いませんでした。しかし、今振り返ると、正しい判断であったかどうかはわかりません。


課題を解決するにあたり、エンジニアリングを学ばずに起業されてご活躍している諸先輩方を見ると、余計そう感じます。同質性の圧力との戦いに疲弊して嫌気がさし、医療から離れて別の業界に身を置いてしまうことの最大の問題は、自身の医療現場への課題の解像度がおちることです。現場にいることで感じる非効率さ、理不尽さへの怒り、絶望という負のエネルギーは絶大で、起業するにあたり多くの困難や挫折を乗り越える武器となるでしょう。たとえ起業が失敗に終わったとしても、その活動は医療関係者から継続して応援され、失敗を繰り返すたびに強くなり、いつかは大きな課題解決につながることと思われます。


2022年現在、医療現場にいながらも、実践的にITを学べるような組織や教材、サービスがあります。ぜひ有効活用してみてください。何かITで困ることがありましたら、ご相談お待ちしております。


ビジネスの構造的な問題


医療は、IT業界やデスクワーカーと違い、労働集約型の構造をしており、マンパワーがあって初めて成り立ちます。対人業務が主体のため、一部を除きリモートワークは難しく、ビジネスの形態も固定費が大きい先行投資型(大量の人材と医療器具、建物、土地などが必要)で、損益分岐点が高い収益構造となっております。


この収益構造の中で病院の経営が成り立つためには、医業収入をあげ、費用を削減する必要があります。

医業収益を上昇するには

・来院患者数を増やす (前方連携)
・退院調整をスムーズにして、在院日数を短くする (後方連携)

ことが大事です。特にコロナ禍で、来院患者数が深刻な打撃を受けており、かつ診療報酬が年々厳しい査定を受けていることを鑑みますと、ここに強いバーニングニーズがあることがわかるかと思われます。


コロナ禍において患者数が減少し、患者単価が下がりつつある中で、いかに収益を上げていくか?近隣病院や開業医の先生方と良好な関係性を構築し(ファン化)、アンバサダーのように新規の患者さんを紹介していただくか?難易度は高いですが、既存の収益にとらわれない新たな第3の収益源を作れるか?


実は、こういった戦いに挑んでいるのが、現職のdiniiになります。


dinii でしていること


飲食業界は医療界と性質が極めて似ております。
労働集約型産業であり、設備や食費、人件費などの固定費の割合が多い収益構造をしております。


コロナ禍で客足は伸び悩み、物価の上昇につき仕入れ価格が上昇しております。新たなお客さまを獲得するコストが上がり続ける中で、いかに既存のお客様がリピートしてきてくださるか?ファンになってくださるか?そのお客様が別の新たなお客さまを連れてきてくれるか?ということが、最重要項目になっています。

さて、このリピーターの獲得ですが、飲食業界においてとても苦労してきた歴史があります。

[顧客計測の問題]
- お客様の情報を収集するには、ヒアリングやアプリの登録等が必要であり、網羅的に収集することが難しい。
- お客様の情報が収集できても、飲食経営の心臓である POS(販売時点管理システム) への取り込みがシームレスにできず、データをフル活用できない。

[タッチポイントの問題]
- お客様とオンラインで繋がる手段が限られているため、飲食店外での訴求手段が限定されてしまう。
- 代替手段として、会員証・メルマガ・会員アプリの活用があるが、顧客計測の問題同様、網羅的なお客様との接点とはならない。

これまで

いつ、どれだけ、何が売れたか?

という情報は取得できてましたが
肝心要の誰に?という情報を取得できておらず、リピーターづくりは難しいと考えられてきました。また店内の施策のみでは効果は限定的で、店外でのお客様の属性、購買データに基づく適切な訴求が重要になってきます。この課題に対し、弊社ではどうやって解決を目指しているのか?また、飲食店における既存の収益構造にとらわれない新たな第3の収益源の獲得を、いかに目指しているのか?以下の記事をご覧ください。


強い組織とは?

これまで、組織に所属したり組織を作ってきたりした中で、どんな組織が強い組織と言えるのだろうか?とよく考えてきました。その中で、重要だと思ったこと、これからも大事にしていきたいと思っていることを中心に、書いていきます。

会社の理念やミッションビジョンバリューが浸透している


多くの会社や組織で、このミッション・ビジョン・バリューを定めていることかと思います。私自身何度も設定したり、どうやって広めようか?浸透させようか?など、さまざまな書籍をもとに、模索してきました。


ミッション、ビジョン、バリューを設定した後でよく起きてしまうのが、これらが実態とかけ離れ一人歩きしてしまうことです。すると、組織はどうなってしまうでしょうか?


一人歩きした結果、組織は優秀な人に依存するようになってしまい、変更の効かない、変化に弱い組織になります。一部の優秀な人が集まって初めて成り立つため、その人が抜けてしまうと、途端に組織全体が脆くなってしまいます。それは、社員だけでなく、経営者にも当てはまります。

会社が100年、200年と続くことを前提に考えますと、未来永劫経営者が変わらないということはあり得ません。必ずどこかのタイミングで変わる時が来るのですが、もしその会社が、カリスマ社長一人の存在に依存してしまう組織だと、その人が抜けた時に会社は衰退の一途をたどります。


では、会社が永続して発展し続けるためには、どうすれば良いでしょうか?


結論からお伝えすると、依存関係を逆転させて、人が組織に依存する仕組みを作れば良いです。

こうなれば、入社した社員は会社を迅速に理解することができ、判断に迷った時、自分がどういう行動を取るべきか?を、上司の顔色を伺うことではなく自分の頭で考えて判断するようになります。人ではなく、文化やミッション、バリューに依存しているため、たとえ優秀な人が一人退社しても、仕事に大きな支障がきたすことは少なくなります。経営者が変わったとしても、この依存の向きが同じ方向を向いている以上、文化が滅びることはなくなり、会社が衰退する可能性は低くなります。


さて、ではこの矢印の向きをどうやって維持するのか?

その工夫は、会社の日常生活の至る所に隠れてます。

例えばですが、slack のスタンプを作る、Tシャツを作る、評価制度の一部に入れる、日常会話の中に入れるなど、潜在意識の中に会社のミッション・ビジョン・バリューを入れることで、人々が同じ方向を向くようになります。


採用の際にこうしたカルチャーが浸透されていることで、選考のミスマッチや入社後の期待値のずれが少なくなることでしょう。人が増えてきても、全員が同じ方向を向いた強い組織になります。


経営者は、マイクロマネジメントをするなどの具体ではなく、抽象に依存して制度設計することで、より会社の強度に磨きがかかります。

そんな、ミッション・ビジョン・バリューが隅々まで浸透し、それらが評価制度にも組み込まれ、会議の中でvalue talk という時間が存在し、社員と経営者が同じ方向を向いているような会社は、日本にあるのでしょうか?


はい、浅草橋の駅徒歩1分の場所にありました。ご応募お待ちしております。


仮説検証を高速に回せる


前例のないことをする上で、失敗はつきものです。
そうした時に、いかに仮説検証を高速で回せるか?
各部署のプロフェッショナル達の集合知をもとに、低予算で市場の反応を見るためにはどうしたら良いかなどを考える必要があります。


一旦仮説が立てられた後は、その仮説がバーニングニーズを適切にとらえ、製品がまだ作られていない段階でも、プレセールスで売ることができるか?


プレセールスで売れる状況が確認できたら、デザイナー、エンジニア、PMが協力して、高速に開発できる体制ができているか?

開発ができたらその製品の質を担保できるQA体制が整っているか?

その製品を顧客へ届けた後にオンボーディングをする体制が整っているか?

問い合わせが来ても大丈夫なCS体制が整っているか?


そういうことを考えなければいけません。
そんな少数精鋭で、ミッション、ビジョン、バリューが浸透され、適切な戦略をもとに仮説たて、sales, CS, デザイナー、PM、エンジニアが最大火力を発揮できる組織なんて、日本にあるのでしょうか?


はい、浅草橋の駅徒歩1分の場所にありました。
ご応募お待ちしております。


現職に決めた理由

飲食業界と医療業界の構造は非常に似ており、ここで培った知見を活かせると判断したことが最終的な理由でした。


これは医療業界だけでなく、労働集約型の産業をする、全てのレガシーな産業に言えることと思います。それゆえに、たとえ飲食業界での経験や、一生を飲食業界に骨を埋めるつもりがない人でも、dinii  で培った知見を、他分野へ応用することが可能と考えてます。


現職での魅力的な話になりますが、経営者が優秀、社員が優秀、事業が優秀、プロダクトが好き、ミッション・ビジョン・バリューが素敵など、理由を探せばいくらでもあります。


が、やはり、株式会社俺、が叫ばれる世の中で、会社と社員の関係は極めてフェアであるべきであり、職場を選ぶ中で重要なのは、正解のない未知の領域の中で、各プロフェッショナル同士が120% 力を発揮できる環境と考えてます。


ベンチャーは、所属する一人一人が、戦国武将です。


そういう武将が、会社の文化を大切に守り、顧客を大事にし、世に大きな価値を提供し、課題を解決する。会社の器は、経営者ではなく、社員が大きくする。そんな場所だと思ってます。


会社が、社員についてこれるか?


それが今、求められているわけです。


許可を求めるなら、謝罪せよという考えがあります。

私はあまり許可を求めないかもしれません。
これから、いっぱい謝罪させてください😊

よろしくお願いします。

最後に


私は医療者です。
必ず、この業界で培った知見をもとに、医療業界へ還元することをお約束します。


今いる環境で、ちゃんと花を咲かせ、どっぷり飲食業界の課題解決に努めてまいります。そして、人が抜けても問題ないくらい、強い組織にします。


その後、医療業界に戻ります。
それまでしばしお待ちいただければ幸いです。


今回のことでお声かけくださった医療の先輩起業家の皆様、またいつも応援してくださる同僚後輩の皆様ありがとうございました。


引き続き、皆様のご指導をよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?