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起業をしようとして、失敗した話

みなさんこんにちは。
医師10年目で、都内IT企業でエンジニアをしております、飯塚と申します。


約半年前から本年4月の起業に向けて準備をしておりましたが、2022年2月に中止する決定をとりました。理由としては色々あるのですが、ひとえに自分の力不足がすべての原因でした。今回の経緯の中で、人生ではじめて1から事業というものを考え結局無残にも失敗に終わったのですが、その中でも様々な学びがあったので、少しでも誰かの参考になればと願いnoteに記すことにしました。

本記事の想定読者

・これから起業を考えている医師、医学生の方
・医療分野で活躍する企業の方
・働き方改革にドメインのある企業の方
・IT、ヘルスケアビジネスに興味がある方

18000字を超えた長文であり、想定読了時間は10-20分となっております。


日本の医療現場の課題

医療従事者は身体的にも精神的にもかなりハードな職業と言われております。OECD Health Statics2019から、日本の医療体制をみてみましょう。

人口1000人当たりの医師数
人口1000人当たりの病床数

日本は世界で一番人口あたりの病床数が多い一方で、医師の数は2.4人/1000人と、かなり少ないことがわかります。つまり、日本には病院がたくさんあるために、医師や看護師の数が薄まっているといえそうです。

病院の数が増えてしまった理由として、戦後の社会復興のなかで、病床の開設許可もおりやすく経済が好調であったからと言われております。診療報酬が高く設定されたため経営利益が見込まれ、かつ人口も増加傾向で患者さんの獲得に困らなかったため、1950年から1990年まで病床(とくに私立病院)が645床→ 10096床に増加したという背景がありました。

その結果、国民の医療費は膨らみ、1984年以降、「医療法改定」がたびたび行われ、国民医療費を抑制する手が次々と打たれました。しかし、国民医療費を効果的に抑制することができず、毎年1兆円ほど増加していきました。社会医療費はどんどん増え続け、平成30年は33.7兆円の借金(公債金)をかかえていると報告があります。33.7兆円の借金をして、23.3兆円返済しているというわけなので、言い換えると、年収500万円の家庭に1憶円の借金がありこの借金の利子200万円を払うために、また、新たな借金(国債)を繰り返している、という状況です。

病院はこれまで、あらゆる制度改定や、診療報酬改定に合わせ、精一杯の対策を練って、患者さん中心の医療をもとに「病床を埋める」努力を行ってきました。しかしその一方で、病院を倒産させないために、「儲けを減らさぬよう」努力しています。病院が財務改善の努力に励めば励むほど、患者さん一人当たりの社会保障費がどんどん増えるという皮肉な構図がここに成立します。すべての病院がその病院「単体」での「生き残り」に没頭している限り、根本的な問題が解決できず、そこから本質的に抜け出すためには、「地域でまとまる」地域医療構想が提唱されました。病院の機能を再検証し、再編統合を検討するというものです。

公立病院においては、不便な地域や災害時等医療の「最後のとりで」の役割を担っておりますが、多くは不採算で自治体の予算から赤字を補填している状態です。人口減で自治体の税収増が期待しにくいなか、いつまでも公費で補うのは限界があることから、厚生労働省は運営の効率化推進のため公立・公的病院の再編統合を急いでいます。また、医師不足と医師の過重労働も深刻化していることから、役割が重複する近隣の民間病院と統合すれば、同じ場所で働く医師が増え、勤務の交替等がしやすくなり医師の働き方改革も推進されると考えられています。

医療者の課題

医師の働き方改革を議論する厚生労働省検討会の資料を抜粋します。

「医師は、全職種中、最も労働時間が長い」と強調されています。
そして、日本の医師がおかれた現実として

「3.6%が自殺や死を毎週または毎日考える」
「6.5%が抑うつ中等度以上」
「半数近くが睡眠時間が足りていない」
「76.9%がヒヤリ・ハットを体験している」

と言われております。また、2019年に施行された、8937人分の医師の勤務実態調査では、4割の医師が過労死ラインの960時間をこえている結果となりました。

現役医師429名のアンケート調査では

・勤務時間が長い
・休憩が取れない
・当直明けに休めない
・交代人員がいない

などからもわかるように、現場の医師には、強い身体的/精神的な負担がかかっていることが、資料から読み取れるかと思います。

医師の働き方改革の課題


医師の働き方改革は、政府が「一億総活躍社会の実現」に向けた最重要課題として2017年3月にまとめた「働き方改革実行計画」に端を発します。同計画に沿って2018年6月に働き方改革関連法が成立し、一般労働者では2019年4月から時間外労働の上限規制が導入されました。

ただし医師の場合、医療の特殊性を鑑みて
・上限規制の適用を5年間延期する
・2018年度末までに上限規制の内容を固める

ことが実行計画に記されました。その上限規制を決めるため2017年8月に設けられたのが、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」です。検討会ではまず、勤務医が労働基準法上の労働者に該当することを確認し、その上で、医師の労働実態を明らかにしつつ、どのような環境整備や制度設計を行えば医師が健康に働き続けられるのかを話し合ってきました。

その結果、全ての勤務医の時間外労働規制は、2024年4月から原則として
・「年間960時間以下」が上限となる(A基準)
・救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B基準)、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C基準)では、「年間1860時間以下」まで上限とされるなど、新たな時間外労働の上限規制が適用されることとなりました。

一方で、2019年のメドピア社の勤務医3000人を対象とした調査では、55%の医師が、働き方改革の時間規制を遵守できないと回答しました。


上述の長時間労働が予想される医師(B、C水準)を守るために、病院側は労働時間短縮計画書を作成し、28時間の連続勤務時間制限、勤務インターバル、代償休息などの追加的健康確保措置の遵守、面接指導が求められます。これらをしない場合、法令違反となり罰則が科せられます。これは現場にとって、かなり厳しい問題になります。

このほかにも、
・医師の外勤の労働時間をどうやって把握するのか?
・自己研鑽と労働時間の線引きをどうするのか?
・専門トレーニング必要な医師のC2基準の詳細はどうなるのか?
・応召義務はどうなるのか?
・宿日直許可はとれているのか?
・現場へ認知されているのか?
・長時間労働や自己犠牲が善という集団圧力、同質性のマインドセット問題

など、様々な問題があり議論されております。

医師の働き方改革は、診療報酬2020, 2022年の改定で重点課題となっていることから、今後も国全体で力を入れていく分野となります。この先も様々な課題が待ち構えておりますが、改革を実現するには、既存のオペレーションを見直し、適切な課題把握とICTの導入やタスクシフト などの改善活動を行う必要があります。ここに本気で取り組んだ病院は、医療ニーズの変化や、地域の労働人口減少といった局面にも耐えうる組織力が培われ、また働きやすい職場環境・効率的なオペレーションは、優秀な医師の確保や増収に直結するものと考えられます。

働き方改革への疑問

2024年から時間の上限制限や規制が行われ、より厳格に勤怠管理をしなければいけなくなります。複数人の医師にヒアリングした結果ですが、自分の病院ではそもそも勤怠管理をしていないという声が散見されました。
2019年のアンケート調査では、413の病院の内、2.0%がそもそも時間管理をしていないという結果でした。

自分自身を振り返ると、ICカードやタイムカードの勤怠管理が多く、また勤怠管理をめんどくさがったり打刻漏れが多かったりしたのですから、大いにダメダメだったなと反省しております。


一方でこうも思います。
働き方改革は、一体誰のための改革なのだろうか?

当直で夜一睡もできずに、36時間連続勤務、昼休み取れずに食事も取れない医師に、打刻ちゃんとしてください!もれてます! と圧力をかけて、正確な打刻をしていく必要が今後出てきます。医師はもちろんのこと、医事課や医局秘書さん、病院管理者の全ての関係者にとって、大きな負担となります。医師の労働時間への意識の低さやこれまでが杜撰な管理だったことが悪いといわれればそれまでですが、そもそも過酷な労働環境で働く医療者に、労働時間の時間制限を課して守らなければ罰則ですよ!というのは、正しいやり方なのでしょうか?時間制限にひっかかるからと、目の前で困っている患者さんの診療をやめることなどできますでしょうか?

また、以前残業時間が長い病院で働いていた時に、労働基準監督署の介入がありました。それをうけ上層部より長労働時間を改善するよう現場へ指示がなされましたが、患者さんの数が減るわけでもなければ、医療スタッフが増えるわけでもありません。労働基準監督署の介入の結果、医療現場で何が行われたか?それは、打刻時間を実態より短く記入して、サービス残業をするということでした。(給料が減りました)これは果たして、望ましい結果だったと言えたでしょうか?

いろいろこの働き方改革への疑問(怒り)を調べていくうちに、ビーコンを病院内に設置して自動打刻するサービスを知り、これなら勤怠の問題を解決できる!と感じました。

ちょうど、医師の働き方改革構成員である先生が勤められている西日本の病院でこちらのサービスが導入されていることを知り、現地へヒアリングに行きました。結果ですが、いくらビーコンの自動打刻といえど、自己研鑽は自己申告となってしまい、あとから手動で逸脱値の修正が必要になってくるとのことでした。また、ビーコンの打刻は正確すぎるということが逆にデメリットになり、例えばですが移動時間3分などのどうでもよい記録がされて認知負荷が上がり、ユーザー体験としてはかなり悪いとのことでした。 一見筋が良さそうなビーコンも、現場では不満に感じられているというリアルな話に、衝撃を受けました。

課題のセンターピンは何か?

ふと思いました。

そもそも、医師の働き方改革を実行する上で、厳格な時間管理は必要なのでしょうか?

勤務医3000人のうち、55%が、「時間外労働の上限規制を遵守できない」と考えるのはなぜでしょうか?

負担な労働時間の管理をすることが、本来の目的である医療現場の人々を守ることにつながるでしょうか?

自己研鑽や外勤の労働時間は、自己申告性で把握する以上、私には、どうしても、正確で厳格な労働時間の把握が必要とは思えませんでした。


過酷な医療現場で働く医療者を守るために、現場に真の意味で必要とされることって、一体何なのでしょうか?


何が、この課題のセンターピンなのでしょうか?


検討を重ねた結果、以下の結論にたどり着きました。

[課題のセンターピン]
医師の働き方が不透明で、わかりずらいこと。


一体、今、どこで、誰が、何時間働いてるの?疲れてるの?
疲労や精神的なストレスは、目にみえない。
チームのみんながどれだけ疲弊しているか、わからない。

わからないから、配慮ができない。サポートができない。
わからないから、自分が疲弊して休みたくても、その人に迷惑をかけると思ってしまい、仕事をお願いしにくい。

わからないから、医師の時間意識が低い。
わからないから、マインドセットが変わらない。
わからないから、効率的な時間配分のアイデアがうかばない。

「働き方の可視化」 が、今何よりも現場に必要なことだと判断しました。
すでに医療現場で可視化を取り入れた施策は一定の効果をあげているようです。

横浜市立大学附属病院産婦人科◎2年間で時間外労働が13%減少
働き方改革、スタートは「仕事の可視化」から!【今日から始める「医師の働き方改革」】
「ユニフォームの色分け」というシンプルな施策で看護師の時間外労働を大幅削減

非医療者の方々には、以下の内容がわかりやすいのではないでしょうか?

デスクトップ・ソフトウエア会社のリーダーは、8世紀の小売業のレンズで
経営を見る。売上数値やチャネルごとの販売量は、事後報告として受け取る。最善を尽くして事業の先行きを予測しようとするが、目に入るのはバックミラーに映る景色にほぼ限定される。

対照的に、クラウド・ベースの会社はいま何が起きているかを知ろうとする。今週、新たなサブスクリプションが何件あったのか。トライアル中のユーザーはどれだけいるのか。コンバージョン率はどれくらいか。顧客がグーグル検索でオンライン・プロダクトを見つけ、マーケティング資料を読み、少し試してみてから購入するまで、10分もかからない。 リーダーがそれについていこうと思えば、日々状況を確認しなければならな い。EBSとしてはホールセール請求などの新機能の開発を進めつつ、リアルタイムのレポーティング、データ、アナリティクスへの対応を検討しなければ ならない。このニーズはすでにトップレベルの目標になっている。

Measure What Matters

マネーフォワードMEのお金の動きがみえるようなサービスのように、労働の動きがみえるようなサービスあれば、働き方改革の問題は解決するのではないかと考えました。

起業を考えた理由

2014年長崎の病院で循環器内科で勤務していた当時33歳の男性医師が過労死しました。男性は直前1カ月の残業が159時間、死亡直前ではないものの数カ月前に84日連続で勤務。男性が病院に申請していた時間外労働時間よりも実際の院内滞在時間が大きく超過していたにもかかわらず、こうした勤務状況を正確に把握せず、勤務体制も見直さなかったとして、病院側の安全配慮義務違反を認めているとあります。

こういう悲しい事件はもう2度と、起きるべきではないです。
疲弊した医療者を救うため、未来の医療現場をよくして次世代の人々が安心して医療者になる選択ができる世界を作るために、2019年にエンジニアになりました。

ITを駆使すれば医療現場はもっと楽になります。これから先の未来、1人2人とITに強い医療者が現場で活躍することで、医療の現場はもっとよくなるという確信を持っております。

一方で、想いだけでは物事は前に進みません。
純粋な腕力、すなわち戦闘力、思考力が必要になります。

まずはじめに、医師の働き方改革の課題を解決することが、そもそも事業としてなりたつか?を考える必要がありました。

ペインポイントや課題はターゲットセグメントとセットで考えます。ペインポイントの深さによって、そのプロダクトがNice to have (まああったらうれしいかな程度)なプロダクトであるか、Must have (ないと本当に困る!)なプロダクトかが決まり、すなわち、売りやすさ、マネタイズのしやすさが変わってきます。深いペインポイントがあるものはいくつかの特徴があり、その掛け算でペインポイントの深さが決まります。

a. 緊急性/必要性
「避けられない」課題こそペインポイントが強い課題です。緊急性と必要性、この2つがあるります。

緊急性とは"今すぐに"そのペインポイントを解決しないといけない、というものです。例えば昨年よりコロナによって突然リモート化が求められ、オフィスで働く人にとってはビデオ会議やワークフロー、コラボレーションツールが"今すぐ"必要になりました。

必要性は、法的に"必ず"行わないといけないことや、法制度が変わったことで"必ず"行わないといけなくなることです。freeeの会計、SmartHRの労務などは、「うちはやらなくてもいいかな」という会社はないはずです。

b. 経済インパクト
一度の課題による経済的な損失/利益もペインポイントの深さをよく表すということはわかりやすいかと思います。製造業への調達を行っているCADDiは一度のオーダーが大きく、CADDiを使うことの経済的なインパクトが大きいと言えます。その他、採用なども成功/失敗した時のインパクトが大きい領域と言えると思います。

c. 頻度
また、頻度が高く訪れる悩みもペインポイントが深くなります。経済的なインパクトが大きくても、冠婚葬祭、不動産、金融機関の選択、個人の転職など人生で何度かしかないライフイベントはいくら面倒でもその面倒さは忘れてしまうかもしれません。一方で、freeeやLayerXのような毎日行う経理作業、CADDiが解決する毎日の調達業務は、頻度が高くペインポイントが深いと言えます。

このa.緊急性/必要性 x b.経済インパクト x c.頻度が、ペインポイントの深さを表現していると思っています。セグメントを絞ると"市場"が小さくなる感覚があるかもしれませんが、市場の大きさとは、ユーザー数だけでなく、ペインポイントの深さも重要になります。

・k

これを踏まえ、今回の場合、以下のように考えました。

a. 緊急性/必要性
・2024年から法制度が新たに始まること
・働き方改革を守らないと、罰則になること
b. 経済インパクト
・国が重点課題に設定し、働き方改革への取り組みで診療報酬up
・医療スタッフの休職/離職リスク低減で、人件費改善
c. 頻度
・勤怠管理やは毎日、シフト作成や健康確保措置/面接指導などは最低1か月毎に行うこと

上記経済インパクトの補足ですが、1人の医師の退職や欠員は、少なくとも5人の看護師の余剰を生み出し、その余剰人件費は、年間3000 ~ 4000万円前後と想定されます。一方で、1人の医師の退職による収入ダウンは、年間1億万円~2億円前後です。人材紹介会社への紹介料もかさみ、必然的に人件費は高くなります。


以上から、働き方改革は、病院の管理者にとってペインポイントが深い課題だと判断しました。過酷な労働環境にいる医療者にとっても同様に深い課題となります。

どうやって解決するか?

課題のセンターピンがきまったため、

・労働の可視化
・自動打刻

この2つを中心に、サービスを考えました。

前者については、Ycombinator出身のCafeを参考にしました。医療従事者がスマホを見た瞬間に、誰がどこで何をしているかがわかる。アイコンをクリックすると、自分と他人の合計労働時間やスケジュールを確認できる。誰が当直明けなのか、helpが必要なのかがわかる。

後者については、時間管理は厳格さを目指すのではなく、ある程度の不正確さは許容してもよい、しかし、現場の医療スタッフには最小限の負荷になる自動打刻を考慮した結果、GPS打刻がよいのではないかと考えました。

病院の位置情報を事前に登録すれば、出勤/退勤はスマホで自動で行われ、かつ外勤の自己申告の問題も解決されます。(既存サービスでは、スマート勤怠管理freee などが導入しております。)


以上を元に、Figma のプロトタイプ機能で、以下を作成しました。

mobile:

Desktop:


プロトタイプには、可視化機能と自動打刻機能という一見良さそうなものがついております。しかし、このままコードをかいてリリースをしたとしても、まず間違いなく失敗するでしょう。良い機能であっても、良いプロダクトではないのです。


よいプロダクトとは?

以下の記事に素晴らしい内容が書かれておりました。

いいプロダクトとは何でしょうか?
まずは、「ユーザーのタスクを完結させられる」ということです。例えば、クラウド会計のソフトを使うとき、各銀行口座/カードなどと自動連携できる、というのは素晴らしい機能ですが、それだけでは会計作業は終えられません。経理会計作業が終わる段階になって初めてプロダクトになるのだと思います。機能はユーザーのある一つのペイン(e.g., 銀行口座の連携)を解決しますが、プロダクトはユーザーのある行動そのもの(e.g., 経理作業)を解決します。

次に、 メインの機能のおかげで「他の製品よりも10倍いいとユーザーが感じている」ことが挙げられます。いい機能やいいプロダクトは、遅かれ早かれ真似られてしまいます。その中で、他の製品よりも10倍位以上いい、とユーザーに思ってもらえるかどうか。

最後に、「単独機能から複数機能に発展しうる」ことも大切かと思います。Instagramも初期は多くのユーザーは、写真をInstagram上で編集した後、Facebookに編集後の写真をポストしていました。「写真の編集」だけではユーザーのタスクは終わらず「共有する」ことが必要だったためです。その後、コメント、Like、フォロー機能をベースにユーザーが増えInstagram上での共有に価値が出始め、メッセージ機能が付き、買い物機能がつきプロダクトとしての完成度が増していきました。
Twitterもただ140文字以内でポストする、という機能から、リツイートが追加され、リンク、画像、動画などの機能により、今のメディアとしての立ち位置を確立していきました。

今回の場合、医療者は勤怠というタスクを完結でき、労働時間が把握できることで既存の勤怠管理サービスや給与サービスと連携できると考えました。また、当直のワークフロー改善(希望日の確認、複雑なシフト作成、伝達、カレンダーへ自動登録)、Helpを出した人を手伝うことによるピアボーナス機能など、複数の機能へ発展できると考えました。よいプロダクトになる可能性は満たしていると判断しました。

良い会社とは?

先の記事を抜粋します。

まず、「いいプロダクトだけれどマネタイズできない」とはどういうことでしょうか。ユーザーが毎日のように使い、課題も解決してくれているプロダクトだけれども、その使用頻度に比べると収益化が難しい事例は、天気予報、スケジュール調整、計算機、RSSなど数多くあります。
それらに共通している点は、英語で言うNice to have (あると便利なもの)だけれど、Must have(なくてはならないもの)ではない、ということです。ユーザーがお金を払うほど困ってはいない。お金を払って使うくらいなら他の手段を考える。ペインポイントの深さが鍵となります。

そして、「真似られたとしても収益化できる優位性(Moat)」。多くの優れたプロダクトは、それ自体どんどん後発品が出てきます。その中で、会社としての競合優位性(Moat)を保ち、収益化を進める必要があります。
Googleはとにもかくにも様々な機能、プロダクトを無料でローンチしていきます。メール、カレンダー、地図。このように大手がどんどんプロダクトを無料でローンチしていく中で、明確な競合優位性がなければ長期的に"利益"を確保できる企業を作ることはできるでしょうか。

今回の場合、ペインポイントが深い課題と考えており、病院の決済者にとってmust have なプロダクトになるだろうと考えました。全国の病院8000施設のうち、DPC病院は1500施設ありますが、ここのシェアがとれると考えました。クリニックは102600施設ありますが、ゆくゆくはここへも展開が可能でした。病院にリーチできて面をおさえれば、医師32万7210人の対象から、ゆくゆくは看護師121万8606人に拡大可能でした。働き方改革から燃え尽き症候群の予防を会社のテーマに、国内862万人の医療者、次のステージとして世界中の医療者へとTAMを拡大できると考えました。燃え尽き症候群は、バーンアウトが最も進んだ臨床的うつ状態になることによって増加する病院の経済損失は看護師一人あたり1カ月で12000円と算出されるといわれております。燃え尽き症候群を防ぐ施策の第一弾として、医師の働き方改革にのぞみ病院にリーチできればVertical SaaSの王道戦略として、HRTechやFintechへの拡大ができると考えました。海外SaaSのCedar のように、医療費未払い予防のために医療費後払いサービス、事前予約システムの構築、医療従事者/医療機関のデータが得られれば保険サービスや医療機関への融資など、無限の広がりが考えられました。

Moat が築けるかに関しては、そもそもこの事業領域に課題意識をもつ人が少数であること、および病院決済者と連携して医療現場を改善するためには膨大なエネルギーと人脈が必要であり、Vertical にこの市場をせめるのはハードルが高いだろうと考えました。技術に関しては、機械学習/MLの利用は考えておりませんでしたが、可視化するためのリアルタイム機能、およびGPS機能などは、迅速に実装可能と判断しました。高速な技術スタック(Typescript, Hasura, GraphQLなど)を選定し、開発スピードでも優位性を担保できると考えました。


以上から、医師の働き方改革、燃え尽き症候群を最初の事業としてVertical SaaSを提供する会社を作ることに勝ち筋があると予想をたてました。


本当にビジネスになるか?

今回のドメインでビジネスをすすめる中で、to Bのビジネスにするか to Cのビジネスにするかで大きく戦略が変わってきます。

to Cの場合はマネタイズ方法が限られており、かつ、疲弊した医療者から課金をする流れにするのは本末転倒です。ビジネスモデルを検討する上で以下の本を参考にしました。広告をのせる、差別化した有料オプションをつける、PLG戦略で個人は無料にチームプランで有料になどを考えましたが、うまく方針が決まりませんでした。


以上から、to B(正確には、B to B to C)で方針を考えました。
to Bビジネスの場合、考えることはsimpleです。バーニングニーズを見つけ、それを解決すれば良いわけです。

BtoBで売れる製品は、基本的には2種類しかないと言われております。
1. 顧客の利益を上げる製品
2. 顧客のコストを下げる製品

弱小ベンチャーが提供するフワッとしたnice to have なサービスが、法人相手に売れることはまずないのです。

では、具体的にどのようなビジネスモデルを作れば良いでしょうか?


医業収益を上げるには?

病院の収益構造をおさらいしましょう。
病院の収益は、医業収益、医業外収益、臨時収益にわけられます。

https://www.kawahara-group.co.jp/pr/SmartNurse_2010.11.pdf


収益の規模感としては、2019年のデータでは、平均30-40億円/年、大規模な医療法人で500億円/年程度といわれております。


さて、これから医業収益の大部分を占める入院収益を考えていきます。

入院収益 = 患者1人あたりの入院収益 * 入院患者数 
患者1人あたりの入院収益 = 1日入院単価/平均在院日数

1日入院単価が固定だとすると、分母である平均在院日数が短ければ短いほど病床回転率があがり、患者1人あたりの入院収益は上昇します。
しかし現実には病床回転率が上がると、病床利用率がへります。病床利用率が減るということは入院患者数がへることなので、収益は落ちます。よって、病床利用率をなるべく高い数字で維持しながら、在院日数をへらし単価が高い治療が必要な患者さんの受け入れをすれば、医業収入はあがるわけです。


外来収入にも同じことがいえます。

まとめると、医業収益を上昇するには

・来院患者数を増やす (前方連携)
・退院調整をスムーズにして、在院日数を短くする (後方連携)

この2つが、医業収益上昇に大きく貢献する要素といえそうです。

前者の代表的なサービスとして、foroCRM, medigle, Dr.Prime
後者の代表的なサービスとして、carebook 
がありますね。

他の手段として、訪問看護や通所リハビリを充実し、送迎も含めてスタッフで対応する、人間ドックを充実させるというような増収策も有効と言われてます。差額ベッド代や診断書などの作成料などの医業収益を上げる戦略は、全体からすると規模が小さいので、これ単体でビジネスとしてやっていくのは難しそうです。

費用をおさえるには?

つづいて、病院費用をおさらいしましょう。


費用は、医業費用、医業外費用、臨時費用にわけられます。
大部分をしめる医業費用をどうおさえるか?ということを中心にみていきます。

医業費用は、下記の順に割合を占めており、一般的に給与費率が全体の60%をこえると経営が苦しくなると言われております。


では、最も割合の多い給与費を抑えるにはどうしたら良いでしょうか?
一番素直に考えれば、職員の給与を下げたりボーナスをカットしたり、リストラすれば、給与費が抑えられると想像がつくでしょう。しかし当然ながらこれは職員の反感を買うため、できる限りこの選択はしたくないという経営者が多いとのことでした。当然の反応ですね。そうではなく

・人件費の変動費率をあげる
  パートやアルバイトを採用するなど
・常勤医を採用する。
  単価の高い非常勤勤務医が多いと給与費が大きく膨らむ傾向がある。
  診療曜日と時間帯の集約で非常勤の勤務時間を減らす
・働き方改革に積極的にとりくむ。
  看護補助者や医療クラークを雇用し、人件費の高い医師や看護師が本来 
  の業務に集中できる環境を整備する。(タスクシフト )
  院内全体の生産性向上と時間外勤務を減らし、給与費を削減できる。
・人材紹介会社に払う、紹介料を下げる。
・ITや院内の環境整備で、問い合わせや受付/案内の業務そのものを減らす。

まとめると、

・採用を頑張る。
・働き方改革を積極的にすすめる。

ことが、給与費を大きくさげることにつながるといえます。
(非医療業界も一緒ですね。)

その他の費用削減の有効な施策として、重要度は下がりますが、材料費を下げる、経費を下げるなどがあります。

・経費を削減する。
  医薬品や診療材料費の無駄を省く
  使える設備は長持ちをさせる
  掃除洗濯、保守管理はなるべく委託に出さずに自分たちで行う
  水道光熱費、消耗品を見直す

・在庫を管理して材料費を減らす。
    高額な薬剤は購入を絞る
      期限管理のため、一覧表を作成する
      月末に在庫チェックする

ビジネスになるか?

本題に戻ります。

今回B向け法人サービスが、院内決済者のバーニングニーズを解決しているかどうか?つまり、医業収益を上げるもしくは、費用を下げるのどちらかの役割を担っているかを冷徹にジャッジする必要があります。

今回の場合、働き方改革関連サービスを提供することで

1. 診療報酬加点対象、医師採用強化による収益上昇
2. 給与費低下

この2つの経済合理性が見込まれ、十分ビジネスとして成り立ちそうと判断しました。懸念としては、マーケット(TAM)が国内8000の病院しかなく、そのうち、DPC対象病院が1500施設、そのうちよくてシェア10%をとれたとしても、150施設となります。Vertical SaaSなのでTAMが小さいのは当然ですが、10%の面をとれたあとに拡大ができるか?そもそも5%もとれるか?アップセルやクロスセルを見込めるか?などが懸念として考えられました。

また、Vertical SaaSの戦略を考えるときに、カミナシ社の記事が大変参考になりました。


今回の場合、複雑性の高い領域(③)をせめることになり、難易度があがってしまうことが予想されました。

また、

SaaS の強さ = 課題 * 単価 * 再現性 * 市場規模

という方程式を考えたときに、日本の国内に特化した医師の働き方改革対象サービスは、再現性が低く海外に展開が難しいこと、国内の病院の数が限られており市場規模も小さいことから、苦戦が強いられることが予想されました。


ヒアリングを進めた結果

今まで10年ほど医師として働いてきて、現場の医療者の課題については嫌というほど見てきました。この分野のドメイン知識は、他のどんな起業家にも負けない自信があります。

しかしながら、病院経営者や部長クラスの方々が、日々どういう課題を感じて頭を悩ませているかについて、恥ずかしながら医療者時代に興味や関心をもつことはありませんでした。

仮説検証を終えた段階で、まず何より重要だと判断したことは、院内決済者の方々がその課題に対し、本当に頭に火がついた状況なのか?の確認でした。とはいえ、平凡な一勤務医がそういう院内決済者の人脈など持っているはずもなく、まずは、以前働いた職場の院長先生、および知人の事務長さん複数人を対象にヒアリングを行いました。

本音と建前

病院経営コンサルとをつとめる元事務長さんにヒアリングをした結果、これまでの計画に暗雲が立ち込めてきました。

そもそも、このご時世で医師の労務管理を全くしていない病院もあるくらいです。コロナで来院患者数が減り、経営赤字が深刻な医療機関で、働き方改革に力をいれて取り組む余裕はあるのでしょうか?労働基準監督署は、積極的に病院が働き方改革に取り組んでいるかを監視するのではなく、基本的には受身のスタンス、つまりなんらかの違反報告が職員からされてはじめて動くため、それまでは、病院経営者も重点的に働き方改革に取り組まないのではないのか?というご意見をいただきました。

確かに考えてみると、キャッシュフローに現在進行形で悩む経営者が、働き方改革に積極的に取り組んだ結果、時間外手当をより多く払わなければならない可能性があり、給与費が逆に上昇してしまうこともありうるわけです。建前では労働環境を改善したい、業務改善したいと外部に向けて発信するものの、本心では、サービスの導入に消極的な考えを持つのではないかという意見でした。


中小規模病院の現実

以前勤めていた病床数300床の病院の院長先生に、ヒアリングをさせていただきました。結果として、医師の働き方改革対策を進めてはいるものの、そこまで別に困っていないということでした。会話の中で衝撃だったのは、自院がA、B、Cのどの水準にあてはまるのか即答できないとのお返事でした。

確かに中小規模の病院では、医師の数も少なく、大規模病院と比較して相対的に医師の労務管理の負担も少ないと言えます。残業が少なく定時で帰る医師が大半を占める病院であれば、なおさらのことです。「年間960時間以下」が上限となるA基準に相当する病院には、働き方改革サービスの需要はないと確信しました。


大病院

以上から、働き方改革サービスを展開する上で対象となる病院は、大規模な病院であるということがわかりました。大規模な病院を言語化すると、医師の数が100人以上の病床数500以上の高度急性期、地域がん診療連携拠点病院、臨床研修指定病院などの機能がある病院です。その対象病院数は一気に減少し、401施設となります。


Vertical SaaSでは、Enterprise企業むけに、弱小ベンチャーがサービスを提供してビジネスを成立させるには、圧倒的なクオリティで提供価値が高く単価が高いサービスを提供するのがセオリーです。

SaaSの成功といえるARR100億を目指すには、大規模病院のシェア10%をとれるとすると、40施設の病院になります。つまりARPA2億5千万円の計算となります。これは、Palantirほどではないものの、少なくともリリースまでに年単位の開発が必要になることが予想されました。

また、大規模病院の決済者とつながる人脈を持っておらず、ヒアリングが難しい状況でした。20ほど首都圏の病院にメールで問い合わせ連絡をしましたが、返信はこない状況でした。コロナ禍で面会制限をしている現況を鑑み、これ以上積極的に病院とコンタクトを取っても、迷惑をかけてしまうだけだと考えました。


意思決定

共同創業者候補と2人で数ヶ月ほど一緒に動いてましたが、この現実にぶつかり話あった結果、これ以上アクセルは踏まないという意思決定を下しました。

to Bのビジネスをする上で、バーニングニーズを確認できないまま、年単位の時間をかけてサービスを作りこむ、というリスクを冒す勇気はありませんでした。情けない話ですが、収入0の状態で数年間も、妻と2歳の子供に迷惑をかけるわけにはいかないという気持ちもありました。あらためてリスクをとって挑戦する起業家へのリスペクト、および、会社が給料を払って従業員を雇えているということの有り難さを実感しました。

今後

to Bは難しいのですが、to Cでサービスを提供できる可能性は残っていると考えてます。ひとまず個人開発という形で、FIgma のプロトタイプのような機能の実装を続けていきたいと思います。(もしこの記事をよんだ方々で、共同開発に興味がある方がおりましたら、ご連絡お待ちしております🙇‍♂️)
今後の状況次第ですが、α, β版という形で医療者の声を聞かせていただければと考えており、その時は皆様のご協力をいただけますと幸いです。

最後になりますが、少し先の未来について今の考えを共有させていただき、この文を締めたいと思います。

医療現場の構造的な歪み

そもそもなぜto Bでサービスを提供しようとしたか?それは、医療者から利用料を取るというお金の流れが、本末転倒な気がしたからです。

しかしそれは本当でしょうか?
何か別の方法でマネタイズができることはないのでしょうか?

今回事業を考えていく上で、医療現場の構造的な歪みに気づくことができました。

[医療者の現状]
・だらだら残業すればするほど、給料up
・勤怠を正直につければつけるほど、給料down
・労働時間の残業上限規制により、サービス残業化、給料down
・紹介多い・手術や外来が多い医師の給料が一定
・時間に余裕がある医師が多忙な医師を手伝っても、インセンティブがない
・診療科毎に忙しさが違うが、給料のインセンティブがない

[病院の現状]
・医師の劣悪な労働環境が表沙汰になるまで、働き方改革に積極的に取り組む直接的なメリット(医業収益upなど)は少ない
・当直室や休憩室が汚なく、そこに設備投資しても費用対効果薄い

このような現状では、医療者は残業して小銭をかせごうと思ってしまいますし、病院経営者にとっても、働き方改革に本腰をいれようとは思いません。これはシステムエラーだと考えられ、なんらかの仕組みで解決できそうです。

理想の医療現場

10年、20年先に、医療現場で働くスタッフや経営者が、お互いどういう状態になっていれば理想的なのかを考えました。

[医療者の理想的な未来]
・残業時間が短ければ短いほど、インセンティブがつく
・紹介多い・手術や外来が多い医師がhelp だす → 時間に余裕がある医師が多忙な医師を手伝うほど、インセンティブがつく
・診療科毎に労務管理をしっかりすればするほど、インセンティブがつく

[病院の理想的な未来]
・医師の労務環境がよければよいほど、インセンティブがつく
・働き方改革に積極的に取り組むほど、インセンティブがつく
・当直室や休憩室等の設備環境が良いほど、インセンティブがつく

1人主治医性がチーム主治医性になる動きが加速されます。データベースのテーブルにたとえると、患者さんと医療スタッフ/機関との関係は、1:1から1:多 の関係が主流になってきます。

病院もまた、地域医療構想により、地域単位でまとまって統合再編する未来となります。1つの医療機関に在籍する医療者数は増え、働き方が可視化されたことで、お互いのサポートや連携のしやすさの重要性は増すばかりです。病院が集約し、医療スタッフ1人当たりの労働時間が最適化することで、厚生労働省は、2035年までにB水準は廃止されA水準に移行するような計画で動いております。

医療スタッフがお互いを助け合えば、診療科全体の労働時間は削減され、従来であれば給料が減ってしまうところですが、削減に応じてインセンティブがつく設計は美しいと思いました。また医療機関も、労務環境や設備環境に積極的に改善すればするほど、キャッシュフローを圧迫するのではなくむしろインセンティブにつながるのであれば、安心して働き方改革にとりくめそうです。

では、どうすればこの理想的な状態に近づくことができるでしょうか?

Web 3の可能性

2021年、ブロックチェーン上に作られたNFTゲーム(ブロックチェーン)が注目を集め、「Play to Earn」という言葉を耳にした方も多いと思います。

「Play to Earn」とは、遊んで稼ぐという概念で、NFTゲームをプレイしてお金を稼ぐことを意味します。近年、「Move to Earn」つまり、動いて稼ぐという概念のNFTゲームが登場しました。 

STEPNは、スマホのGPS機能を利用することで、歩数に応じて、仮想通貨が貰えたりポイントが貰えたりする仕組みになっています。
今回、この概念を拡張し

Rest to Earn

つまり、自分やチームメンバーの休みに貢献すればするほど、お金が稼げるという概念を考えました。

従来、お金とは働いて稼ぐものですが、これとは逆に、きちんと休めば休むほど、お金が稼げるということになります。具体的には、働き方改革の施策である、勤務インターバルや連続勤務時間制限の遵守、代償休息の確保、面接指導の徹底、残業時間の削減など、きちんと守ることで、インセンティブがつく仕組みです。従来はこれらを守らないと罰則になっていたものを、ちょうど180度真逆にした形とも考えられます。

医療者の労働時間が短くなれば、必然的に休む時間が増えます。
多忙な人がhelpをだせば、手伝った人にインセンティブが発生します。helpを出した人も、労働時間が短くなり、結果的にインセンティブがつきます。

診療科全体で残業時間の削減が達成されれば、インセンティブの倍率が変動します。

診療科全体で労働時間を減らせれば、病院側はその分の給与費がういて、積極的な設備投資や採用費などに回せます。

労働時間が短くなると医療者の給料はさがってしまいますが、この休むと稼げるインセンティブの仕組みがあれば、それをある程度カバーできます。また、休むためには、良質な環境が必要ですが、STEPN のスニーカーのレベルアップや耐久性のように、設備環境が悪ければ悪いほど、インセンティブのポイントが落ちるなどの要件が考えられます。デジタルとリアルが一つとなったOMOという概念のように、実際の設備環境とNFT上の環境を結びつけるなど、アイデアは無限に湧き出てきます。医療現場の歪んだ構造をWeb3のシステムに落とし込むことようなC向けのサービスが展開できるのではないか?と最近考えるようになりました。

もちろん just ideaであり、現時点での私自身のブロックチェーンへの知見はほぼ0です。しかし、私はエンジニアなので、source code を読むことができ、実際にシステムを作ることができます。まだ死ぬまでに多くの時間が残ってます。

起業はその人が折れなければ、何度でもやり直せます。
医療者が安心して医療現場で働けるために、これからも引き続き、すこしずつ動いていきたいと思います。

長文をお読みいただき、ありがとうございました。
引き続き、皆様のご指導をよろしくお願いいたします。


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