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医療とIT の未来についての考察


こんにちは、BeatFit でCTOをしております、飯塚と申します。
簡単な自己紹介をします。
私は、医師として8年ほど働き、2019年からエンジニアへ転職しました。

 


現在、エンジニアリングとしては、フロントエンド からバックエンド、インフラなどを担当するようになり、それ以外に、採用、マネジメント、経営などに携わっております。


普段あまり記事を書くことはないのですが、CTO になって1年が経ち、明日7月1日から 医学生エンジニアインターン という、新たな取り組みを始めるため、ここで一筆未来に向けて、考えをまとめたいと思います。



長くなるかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。 
まずは、自分の歴史から振り返りたいと思います。


過去: 医療者時代


なるべく感情を抑えて書こうと思ったのですが、なかなかそうもいかず、不快な思いをさせてしまうかもしれません。ごめんなさい。


この時代に辛い思いをした身としては、どうしても感情なしには語れません。


愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ」という格言にあるように、我々大人には、過去の失敗にきちんと折り合いをつけ、これからの未来につなげる責務があります。特に、30、40歳代のリーダーで、これから時代を引っ張っていく同世代の人は、過去の失敗に対し、禊をすませてなければいけません。


平成の時代、医療とIT は間違った方向に行きました。

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こういうのです・・・笑


最先端技術がポコポコ生まれ

「VR が、医療をかえるんだ!」
「未来の医療はブロックチェーンがよくするんだ!」
「いやいや、AI だ。AI が活躍して医者が不要になるんだ!」


という議論が巻き起こりました。勉強会や、オンラインサロンなどが乱立していたことかと思います。


しかし、当時、勤務医として病院で働いていた頃の率直な感想としては、これの世論に対し、強烈な違和感を感じてました。

AI, ブロックチェーン、すごいのはわかる。
なんかワクワクするよね。

ただ、今現場で疲弊感を感じながら働いている医療者の中で、誰が一体、
これらの技術で、医療現場の負担が減ると考えるんだろうか?
・Fax やめる。
・手書きの紹介状やめる。
・薬手帳の内容を、パソコンに記入するのをやめる。
・画像データをCD ROM で管理するのをやめる。

こういうのが本当に困っていることなんだ。

目の前の小さな困ったことや現場の意見から目を背け、すごい技術に期待して夢を見てるのは、現実逃避なだけではないだろうか?
こんな有様で、日本の未来の医療はよくなるんだろうか?



なんで、課題 ドリブン の議論じゃないんだろうか?

そのIT 技術で、一体誰が幸せになるんだろうか?


なんで、医療現場で働いていない人が、医療とITの未来を語ってるんだろうか?

なんでIT できない人が、IT の未来を語ってんだろうか?



疑問と怒りで頭がいっぱいになりました。また、

「日本の医療は外国に比べて、IT化が遅れている」


と発言するだけの、無責任な批評家への怒りが止まりませんでした。


なんで、人ごとなんだよ。何様なんだよ?
なんで、自分で行動しないんだよ。
なぜ自分の手で、IT 化を進めようとしないんだよ。


過去: 医療者  が  エンジニアと手を取る

当時は、忙しい病院で働いていたため、なんとか一つ現場で困った課題を解決しようと、団体を作ることにしました。


しかし、自分は、IT が全くできませんでした。
そこで、思いました。


餅は餅屋だ。
医者が医療の知識を提供し、エンジニアがIT を提供する。
お互いがお互いの利点を活かすことができれば、きっと、どんな課題も解決できる。

フリーの握手アイコン

そう考え、エンジニア探しの旅にでました。
 (ああ、なんと浅はかだったことでしょう・・・)

エンジニアの知り合いはいなかったので、ネットで検索したり、メールを送らせていただいたり、仕事終わりに会社訪問したり、様々なことをしました。(医療者は基本的に、知り合いはみんな医療者なんです・・・)

ある仮想通貨の取引をする会社に訪問に行った時のことです。
 

「あなたたちが困っていることは分かったけど、協力はできません。私達は株式会社なので、営利目的です。お金にならない、あなたたちのサークル活動などに協力することはできないです。」 


と門前払いされました。己の無力感に、絶望し、涙した日を思い出します。


精神的に辛いことも多かったですが、諦めずにコンタクトを取り続けていくうちに、熱心に話を聞いてくださるエンジニア2名の方に出会うことができました。


しかしながら、うまく行きませんでした。
熱意だけが取り柄の医療者では、物事を前に進めることはできません。
力が足りないんです。
 

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餅は餅屋だ、ではないんです・・・。


医療者が無知の状態では、エンジニアと話を進め、開発を進めることはできないんです。最低でも開発がどうやって進むかのプロジェクトマネジメント力、最低限のプログラミングスキル、予算などが必要になってきます。
これなしに、医療者お得意の、ビジョンとか熱意とか綺麗事だけ語ってればなんとかなる!予算はクラウドファンディングすれば大丈夫!って考えでは、いろんな方に迷惑をかけてしまうんです。
(このプロジェクトも、これ以上は難しいと判断し、断念しました。)
 

私の力不足のせいで、多くの人々の時間を無駄にしてしまいました。
本当に情けないですが、この時に協力してくださったエンジニア、デザイナーの皆さまへのご恩は、忘れません。本当にありがとうございました。


こう思いました。


医療従事者が、現場の課題を解決するにはITが必要になる。しかし自分たちではIT ができないから誰かにお願いをしたい、でも、多額のお金がかかる。そもそも、ビジネスにならないから無理と言われる。誰も医療従事者が現場で感じた身近な課題を、解決できないのか。

いや違う・・・。
誰かに最初から助けを求める前提だから、ダメなんだ。まずは自分自身に圧倒的な力と覚悟がなければ、誰も協力しようとしない。他人を巻き込んだとしても、やり抜く力がない人に巻き込まれたら、たまったものではないな。
課題を解決するのに必要なのは、たとえ自分一人でも課題をねじふせてしまう圧倒的な個の力と、誰からも賛同されなかったとしても、一人で突き進んでいく覚悟なんだ。



そう思い、エンジニアになろうと思いました。


身近な課題は、医療者が自分の手で解決できるんだよと、証明しなくてはならないと思いました。

医療者がエンジニアリングを学ぶことで、一体どういう未来が待っているか。いいのか、悪いのか、白黒はっきりさせて、次世代の人たちに何かを残さなくてはと思いました。

自分のように課題をなんとかしたいと、一人で奮闘する医療者を、エンジニアとしてサポートできるようにならなくてはと思いました。


過去: まとめ

平成の時代、医療とIT は、現場を知らない非専門家同士が、メディアという錯覚資産を利用し、課題ベースではなくプロダクトアウト、技術ありきの非現実的なマーケティング受けする話を広めることで、間違った方向へ進んでしまった。


故に、IT の話では、医療現場で医療者が切に感じる様々な課題に焦点が当たることが、極めて少なかった。


また、これらの身近な課題に対し、営利を目的とする 既存のIT企業は、ビジネスとして美味しい話とは感じず、医療者の話に共感と一定の理解はするものの、積極的に自社資源を使って解決しようという取り組みには結びつかなかった。


故に、医療現場の身近な課題は、平成の時代に、技術の進歩とは裏腹に、どんどん積み重なっていった。


医療しか知らなかった医療者が、いざ病院外の世界へ出て、外部のエンジニアに協力をお願いして身近な課題を解決しようと動いても、人、金、スキル面で、あまたの困難がまち構えていた。医療者の、餅は餅屋という発想では、失敗に終わる可能性が高かった。


しかし、本当は、これらの課題を解決するのに、AI やブロックチェーンなどの最先端技術が必要になることは少なく、もっと基礎的な IT技術で解決できるはずであった。


現在  


令和の時代になり、プログラミングがより身近なものになりました。

Progate やドットインストール、Udemy などのおかげで、学習ハードルが下がり、多くの医療者の間でプログラミングを学ぶ人が増えてきました。


医大生の中で、IT サークルができたり、


デジタルハリウッドでは、医療者のためのプログラミング講座ができたり、



医師が運営するプログラミングスクールができたりしております。



私たち BeatFit もヘルスケアテックカンパニーとして、何か医療者のためにできることはないか、ずっと考えてまいりました。


私たちのVisionに、この世から不健康をなくすというものがあります。
ヘルスケア領域が抱える課題は数多くありますが、それらに対し、テクノロジーの力で解決する、そのソリューションを提供する責務が、我々にはあります。そのために、この時代の先頭を走るリーダーとして、挑戦したいと思います。


7月1日から、その小さな第一歩が、始まります。


前例がないため、どういう結果になるかわかりません。

医学生なのに、IT を勉強していいのか?
医療の勉強をする時間が減ってしまうのではないか?

私も自信を持ってそれらに応えることはできません。


しかし、独学では得られない、IT の実務経験を積むことで、確実にエンパワーされます。平たくゆえば、アイデアを現実のものにする力が手に入ります。


将来、医療現場の課題に遭遇した時に、自分一人の力で解決できる可能性が上がります。そういう強い個を持つ人々が、同じ目的、同じビジョンを持って集団を形成し、この時代の医療を良いものへと導いてくれるものと信じております。


未来

人と繋がるとはどういうことなのか?
医療とIT という2つの異なる分野が、1つに融合するとはどういうことなのか?を考えてきました。


1つはっきりしているのは、餅は餅屋 という考えではうまくいかなそうです。


ずっと2者が疎結合のままでは、うまくいかないんです。
ある程度、お互いがお互いのことを知っていなければ、最終的に密結合の関係にはならないんです。では具体的にどうしたら良いんでしょうか?


ちょっとテクニカルな話になりますが、最近、Typescript という言語を勉強して、この答えを見つけたような気がしましたので共有させてください。


or の関係性にあるものが、and の関係性になるには? 
という話になります。


A or B
      (A | B) が、
A and B   (A & B)

になるには、以下の型を書きます。

type UnionToIntersection<T> 
  = (T extends any ? (arg: T) => void : never) extends (arg: infer U) => void ? U : never

type Or = A | B
type UnionToInterSection<Or>   →  A & B


最初に UnionDistribution という分配がおき、unionの構成要素を関数の引数という反変の位置に適応することによって、or の関係が、and の関係になります、難しいですね😅)
 

Union Distibution とは、何らかの目的を持った or の一つ一つが、それぞれの組織内、それぞれ個別に、奮闘している様子を意味します。

それらが関数の引数という、強制的な場所に適応されると、みんなで協力して、or の関係性が and の関係性になります。

つまり、こう言い換えられると思います。

A = 医療
B = IT

医療をずっと頑張ってきた医療者(A)が、IT をずっと頑張ってきたエンジニア(B) と、and の関係性になるには、関数の引数のようなものや場所が必要である。

では、現実世界の中で、 or から始まり、最終的に and の関係性になるような、この関数の引数のようなものはなんでしょうか?


結論から言います。
私は、それこそが、ミッションだと思います。


つまり、
or の関係性を持ったもの同士が、疎結合の関係で、最初から繋がることを意識せずに、まずはそれぞれの組織内や自分自身で頑張る。 医療者がエンジニアと繋がりたいのであれば、まずは、自分である程度頑張って勉強してみる。頑張って結果が出てくると、その人物には魅力がまし、周りの人からその対象に対し、respect の気持ちが生まれます。そういうもの同士が、同じ医療現場の課題を解決するというミッション、つまり、関数の引数のような場所を見つけると、or のUnion が、ある一箇所に集まり、and の関係性で繋がることになります。
私は、これが、「繋がる」ということだと思います。


これからの未来、or の関係性 (Union) が主流となってきます。
Union という言葉には、本来、連合とか組合という意味がありますね😎
 

最後に


正直な話をしますと、私たちの会社はまだまだ小さく、何人もの学生や医療者を同時にお受けすることはできません。


もし、この文章を読んで、私たちのミッションに少しでも響くところなどありましたら、是非一緒に、取り組みができればと考えております。


引き続き、エンジニアの皆様、ご指導よろしくお願いいたします。
医療関係者の皆様、ご指導よろしくお願いいたします。


めちゃめちゃ頑張ります!


2021年 6月30日

BeatFit CTO 医師
飯塚 浩也

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