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noteで企業アカウントを運用したい「BtoB広報担当者へ」ご提案があります

最近私は、note運用に関する「神回」を見つけてしまった。

顧客を巻き込むコミュニケーション」と題されたその企画は、note運用の代表的存在「キリン」さんと、ステークホルダーとの関係構築のお手本ともいえる「食べチョク」さんが登場する広報イベントだった。

要点は記事にまとまっているが、ぜひアーカイブ動画も併せてご覧いただきたい(記事内に埋め込まれている)。

ほんとうに「神回」なのだが、1点気になることがあった。視聴者から1:32:00頃に投げかられた質問だ。そこには業界の深い悩みがあった。

中小企業かつBtoBのため、どうしても事業報告になりがちです。BtoB企業はどのような発信を増やしていけば、企業理念や事業内容に反応してくれる人が増えるでしょうか。

これは、BtoB企業の「広報あるある」だと思う。特にソーシャルメディアの発信にあたまを悩ませている担当者は多いはずだ。なにせ、事例をどんなに探しても、そのほとんどがBtoC企業のものばかりだからだ。

「うちでもnoteを始めよう」という機運が高まり、いざ発信がスタートしても、数回記事を書いて終わり……。という状況は少なくない。

そこで今日は、BtoBの広報担当者の目線に立って、企業のnoteアカウントをどうすれば効果的に運用できるのかを考えてみたので、私なりの結論をここでシェアしたいと思う。

少しでもお役に立てれば幸い、と祈りながら。

BtoB企業が直面する2つの課題

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①プロモーションサイトとの混同
②オープン社内報という思考停止

色々な課題が考えられるなか、この2つは特に重大だと思っています。

ここでの「プロモーションサイト」は、SEO対策をした記事や、商品紹介、プレスリリース的なお知らせ、ホワイトペーパーに載せるコンテンツなどが該当します。その反対が「メディア」としてのサイトです。

どちらかに絞ればよいのですが、これらをごちゃまぜにしてしまい、最終的に何を届けているのか自分たちも不明瞭になり、発信の意義を失い、閉鎖へと向かうアカウントが多いように感じます。

個人的な見解ですが、プロモーションサイトであれば自社メディアの運用がよいのではと考えています。状況にもよりますが、検索対策を施すのであればnoteである理由があまりないからです。

とはいえ成功事例がないわけではなく。HeaRさんなどはBtoBの「プロモーションサイト」として非常にお手本的な運用をされていると思います。

なんと、ほぼすべての記事が「ホワイトペーパー」レベルのクオリティー。note開設初期は、1ヶ月間毎日発信されていました。この質と量をマネするのは大変かもしれないですが……。

一方で「メディア」としてnoteを活用している事例はどこかというか、やはりキリンさんだと思います。私も色々と調べてみましたが、ここまでのクオリティを出せている企業はほんとに少ないです。

どこがお手本的かというと、同社の目指すCSV経営のために「ブランド」を徹底的に意識している点と、営業や採用にも活かせるようなマルチユース性が際立っているからです。

大企業ゆえの課題、社内コミュニケーションやインターナルブランディングの観点からも非常に有益な存在だと思います。

ここまでの結論です。もし「プロモーションサイト」としてnoteを運用するのであれば、TIPSはインターネット上にごろごろ転がっています。この記事はこれ以上読み進めなくていいでしょう。

でも、「メディア」としてnoteを運用したいとお考えであれば、ぜひ一緒にこの先の内容にお付き合いください。BtoB企業の広報としての考察を深堀りしていきたいと思います。

オープン社内報は本当に面白いのか?

ここでは2つめの課題、「オープン社内報」に触れます。

おそらく多くのBtoB企業がnoteの運用方法として、この「オープン社内報」に行き当たるのではないでしょうか。代表メッセージ、社員インタビュー、社内の取り組みをレポートする、などです。

これも「採用広報」の位置づけであればいいと思うんです。スカウトメールにURLを貼ったりすることで、価値観マッチングなどを有効に進めることが期待できます。

ただ、ベンチャー企業の場合、そもそも採用フェーズではなく、どちらかというと「認知獲得」が主目的のはずです。その場合、「オープン社内報」は最適解でしょうか。私はどうしても、そう思えないんです。

致命的な課題が2つあります。

1つは「つまらない」こと。あなたは他社の「オープン社内報」を積極的にnoteで読んでいますか。社員インタビューを読みますか。私は正直、あまり読もうとは思いません。

よっぽど大きな話題があって注目している前提か、自分が好きな商品やプロダクトを扱っているならべつですが、それでは「認知獲得」より「ファンの深化」が中心になってしまいます。

「誰トクなの?」と質問されたとき、たぶん「オープン社内報」に答えはないと思っています。同時に「自社メリット」も薄い。これは先ほどの認知の話と一緒で、本来の目的からズレてしまっているわけです。

2つめの課題が「インタラクティブ性」です。

おそらくnoteのメディア運用を思いついた背景には、「広告」では補えない効果を狙っていたはずです。もう消費者は、企業からの一方的なメッセージにうんざりしている。だから広報を考えた。ちがいますか?

しかし「オープン社内報」は、一方的なメッセージです。双方向のブランドコミュニケーションに期待したはずが、結果的に「広告」でやっていたことと同じになってしまう。

・誰トクなの?問題
・インタラクティブ性の欠如

この2つが「オープン社内報」の欠点だと私は考えています。結果として、BtoB企業の広報担当者は、noteで発信を続ける意義を失い、再び広告などのマーケティング施策のほうへと意識を向けざることになってしまう……。

では、どうすればいいのか?

マガジン機能を使った「#特集」の活用

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ナラティブカンパニー―企業を変革する「物語」の力』(東洋経済新報社)著:本田哲也 P.105より引用

 上記の図は、情報露出から認識の変容が起こり、それはそのまま行動の変容につながることを示しています。

noteの運用で実現したいのは、おそらくこういうこと。広報によって認知を獲得し、望ましい認識をもってもらい、最後は購買へとつながってほしい。

そこで有効なのがnoteの「マガジン機能」です。その運用方法で、個人的に注目しているのが、キリンさんと、L&G GLOBAL BUSINESSさんです。

この2社のnoteは、オープン社内報ではなく「#特集」を意図的に組むことで「雑誌」の役割を果たしています。

私の提案する解決策はコレ。「雑誌をつくる」です。

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「オープン社内報」がつまらないのは、その記事が「自分ゴト」にならないからです。自分の星座だけが載っていない星占いみたいなもの。興味をもてるわけがありません。

しかし、「#特集」なら話はべつです。

キリンさんの特集、「#日本産ホップを伝う(つたう)」は、日本産ホップがこんなに熱いんだ!と、ビール好きでなくても興味がもてる特集の組み方をしています。

ホテル運営会社のL&G GLOBAL BUSINESSさんは、「#幻のなつやすみ」という特集で、エッセイなどが展開されました。去年の企画なのでマガジン一覧には載っていませんが、2020年の“失われたなつやすみ”を取り戻すには十分すぎるほどの内容でした(個人的に)。

「#特集」を活用するメリット

雑誌の「#特集」を振り返ってみると、基本的にはマーケット・インで読者のニーズに応えるものが記事として組まれています。つまり「自分ゴト」になりやすい。「誰トクなの?」の問題を解決できるわけです。

また、「自分ゴト化」は問題解決にかぎらず、共感を促すこともあります。余談ですが、両社の「#特集」をこまかく見ていくと、どちらもエッセイの寄稿があり、書き手にあかしゆかさんを起用されています。

祖父とビール、麒麟と馬 【 #今日はキリンラガーを vol.1】

この夏、いちばんやさしい青色の海で|幻のなつやすみvol.2

どちらの「#特集」も、事業内容とのつながりはあり、ビール業界やホテル業界の底上げに貢献するストーリーが語られています。

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引用:顧客を巻き込むコミュニケーションとは? #等身大の企業広報

「記事のシェアがされにくくなった」と言われるようになり久しいですが、それでもUGCやアンバサダー活用のような、共感者やファンを通じた生活者への広がりはまだまだ続くと思っています。

では、具体的に「#特集」をどのような企画にすればよいのか。

ここまではBtoC企業の事例が中心でしたが、ほんとうにBtoB企業の広報でも「#特集」の概念は使えるのか、を考えていきます。

BtoB企業で使える「#特集」の考え方

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「#特集」の組み方は、いくつかやり方があると思います。

わかりやすい例は、自社に眠る「もったいない」を外に伝える切り口です。会社の歴史や商品の開発ヒストリー、プロジェクトの裏側や社員ストーリーを打ち出していくのです。

多くの場合「オープン社内報」を “なんとなく” 露出させていますが、それでは「自分ゴト」になりませんし、表題をどんなに工夫しても初見のひとに読まれる可能性は低い。

なので、ここを「#特集」の切り口から考えてみます

ポイントは、生活者というエンドユーザーまでの浸透を想定すること。BtoB企業の場合、納品先の企業や、クライアント企業の問題解決で動いているはずなので、一瞬だけ思考がフリーズするかもしれません。

たしかに、完全なる下請け精神では難しいかもしれません。でもミッションやビジョン、パーパスを掲げる企業であれば生活者の姿まで見えると思っています。社会の変容は、そのまま生活者の暮らしに影響を与えるからです。

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再びBtoC企業の事例ですが、ユニ・チャームさんの事例はBtoB企業でも応用ができるのではと思っています。

2019年に立ち上げたプロジェクト「#NoBagFoeMe」~生理について気兼ねなく話せる社会~の取り組みは、参加意義を自分で語れるインフルエンサーを中心に、トークイベントやワークショップをまずは開催。

その翌年には、企業向けプログラム「みんなの生理研修」を開発し、人事部や総務部へのアプローチを通じて、生理休暇などの制度見直しを広く促したといいます。結果、報道番組や女性誌、トレンドメディアなどの多様な媒体で取り上げられたとのこと。まさに、SDGs文脈のジェンダー平等の達成を見込んだ企業活動です。

ちなみにTIPSとしては、

・SDGsの文脈
・DXの文脈
・働き方改革の文脈

は「#特集」としても、共感が得られやすいテーマになります。

▲上記事例・考察は『ナラティブカンパニー』を参考にしました

この場合、例えばユニ・チャームに資材提供をするBtoB企業がこの活動をしてもおかしくないと思うんです。先に挙げた記事コンテンツ例、

・会社の歴史
・商品開発ヒストリー
・プロジェクトの裏側
・社員ストーリー

「#生理について気兼ねなく話せる社会」と題した「#特集」に落とし込み、記事コンテンツとして展開する。これならば、ただのオープン社内報として露出するよりも、はるかに「自分ゴト化」「共感」を促しやすい設計になると思うんです。

BtoB企業が、広報活動によって得られるメリットの一つに「コミュニケーションコストの削減」があります。名前も知らない企業から営業されるよりも、どこかで見聞きした企業からの提案のほうが受け入れられやすい

企業の担当者といえど、社会で生活する一人の人間です。「#特集」が話題となり、生活者として見聞きする可能性はある。

「プロモーションサイト」のように、特定の見込客だけを刺すコンテンツではないので、予期せぬ広がりも期待できます。自社都合だけの「#特集」ではないので、ブランドイメージの向上も期待できるでしょう。

なによりも、記事の「ネタ切れ」を防ぐ効果があります。切り口を変えれば「#特集」はいくつも発想できる。意外と重要なポイントです。

そして最後に、オープン社内報をつまらなくさせているもう一つの要因、「インタラクティブ性の欠如」の対策について私の見解をお伝えします。

コミュニケーションは「余白の設計」が鍵

上記で書かれていることの要点は、こうです。

noteで、美しい髪をテーマにした、コンテストを開催いたします。マンガやイラスト、コラム、エッセイ、小説など、形式は問いません。プロ・アマ問わず、ぜひご応募ください。
きれいな髪への憧れや、美容室での忘れられない体験、素敵な生き方をされている身近な方のことなど、「美しい髪」のハッシュタグを添え、noteの投稿をお待ちしています
入選作品には副賞として賞金とノベルティを用意しており、同社のオウンドメディア「Find Your Beauty MAGAZINE」への掲載可能性があります。

オープン社内報の欠点は、企業の一方通行的なメッセージにあります。多くの企業は「伝えたいこと」をnoteに書いてしまい、結果として「伝わらない」現象に悩まされます

これを解決するために、「ハッシュタグコンテスト」の形式で、読者を巻き込むことがポイントです。それにより、共感を超えた「共体験」が生まれ、よりムーヴメントを起こせる可能性があります。

ミルボンさんの例では、賞金やノベルティなどが用意されています。もしもBtoB企業ゆえにプレゼントの用意が難しければ、同じビジョンを共有できるBtoC企業の協賛があってもいいですし、そこまでせずとも「コメント」や「シェア」だけでも喜ばれると思います。

Twitter と連動するのであればリプを返す。noteならばスキを押して、自社のオウンドメディアでシェアする。これだけでも双方向のコミュニケーションが成立しています。どうしても多忙な担当者さんであれば、キャンペーンに連動したマガジンを用意して、そこに追加するのもオススメ。

注意すべきは「炎上」のリスクです。「#特集」のテーマがセンシティブになればなるほど、賛否両論が生まれやすくなります。その点だけ考慮できれば、BtoB企業のnote運用はかなり効果的になるはずです。

最後のアクセントは「文章のチカラ」

以上ここまで、noteで企業アカウントを運用したい「BtoB広報担当者へ」のご提案内容をまとめてみました。

戦略的な部分は、ここまでの内容をしっかり踏まえて運用をすれば、BtoCはもちろん、BtoB企業であっても本質的なブランディングを踏まえた広報活動ができるのではと思っています。

もし最後に一言だけ添えるとしたら、最終アウトプットの「記事」にはぜひ力をいれていただきたい、ということです。

たかが文章、されど文章。

この記事で何度も「成功例」として紹介しているキリンさんの記事、そしてL&G GLOBAL BUSINESSさんの記事は、とにかくクオリティが高い。じつは、両社ともメディアを運用する「中の人」が、文章やメディアに強みをもつ、専門家レベルの方々なんです。

ぜひ最後のアウトプットまで気を抜かず、将来のブランド資産になることを中長期で想定し、アカウント運用につなげてみてください。


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今回ご紹介した方法は、PRストラテジスト本田哲也氏の提唱する「ナラティブ~物語的な共創構造~」の考え方をベースに、「BtoB企業の広報担当者がnoteのアカウント運用するにはどうすればいいか?」を考察したものです。

note公開初日、マーケティングやオウンドメディアなど、複数の専門家から高い評価をいただくことができました。

BtoB企業で広報を担当している方々からも、Twitterで次のようなツイートの内容でシェアしてくださいました。


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私が代表をつとめる株式会社ソレナでは、BtoB企業の「note運用」に関する無料相談を受け付けております。Zoomで30分~1時間ほどお話しませんか?

私(大崎)のTwitter DMからお気軽にメッセージをお送りください。

この記事への「スキ」もお待ちしてます!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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