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ライターが記事を作り続ける理由と、企業とのサステナブルな関係構築を思う

2024年の抱負を書こうと思って、アレコレ考えていた。そうしたら、こんなタイトルになってしまった。事の顛末(?)はこうだ。

自分の会社をもう少し大きくしたいなと思って、じゃあライターさんの数も増やしたいから採用(業務委託)にも力を入れなくちゃ。
でも、企業を取材できるライターの数って少ない気がする。自分のキャリアに長居する印象もないし……。これって何でだろう?

問答を繰り返すうちに、そもそもライター自身が根っこに持っていた「記事を書き続ける理由」を忘れてしまうからでは、と思い至った。
まさかそんな……と思って色々と検索したものの、スタートアップ経営者のように志を言語化したnoteは見つからず。

(経緯は書いてあるけど、志が書かれてない?)

じゃあ自分の場合はどうだろう」。そんなことを年始から考え始めたら、どうにも複雑だし、だけど思考記録として残す必要もある気もして、今こうして筆を執っている。

どうせ書くなら読者のお役に立ちたいなと思い、対象読者は以下の想定で、記事を仕立てていくことにした。

  • 書き続ける理由を見失ったライターさん

  • ライターの生態を知りたい企業担当者さん

  • 外注パートナーとの関係性を見直したいすべての人

企業目線で見る、ライターという「機能」

文章を書く仕事はとても地味にもかかわらず、憧れる人も一定数いるのが「ライター」という職業だと感じることが増えました。
初めは理由がわからなかったけれど、多くは「企業の想いを言語化する」という魅力に着地するのかな、というのが最近の感想です。それゆえ2年、3年とライターを経験したあとに感じる、「職能(できること)範囲の狭さ」は、モチベーションを保つ上で極めて大きな課題だと感じています。

企業の担当者からすれば、ライターの存在意義とは「記事」という納品物を仕上げてくれる1つの機能です。営業やマーケティング活動をよりスムーズにするための事例記事だったり、採用活動における内定承諾率や歩留まり率の向上に必要な社員インタビュー記事だったりが必要で、それをライターに外注しているわけです。それ以上でも、それ以下でもない。

とても当たり前な事実に、最初は戸惑います。一定の経験を重ねたライターであれば、あらゆる業界を網羅的に取材できるようになっていて、経営者やマネージャー、新入社員、アルバイトやインターンに至るまで、幅広い記事を書けるだけのスキルが身についています。

でも依頼されるお仕事はすでに与件が整理されていて、自分が何を書くべきなのか確定している。事業部の課題、記事の狙い、取材対象者。最低限これだけ揃っていれば、取材前から記事の完成イメージができてしまうライターさんは多いと思うんです。ゆえに自分の成長限界を感じてしまう。書き続ける理由が、わからなくなってしまう。

でも企業側からすれば、ライターが感じる「成長限界」に意識を向ける必要はないわけですよね。社員ならともかく、外注なので。
だからライターはもがくようになります。2年、3年と経験を重ねたライターは、編集 / ディレクターの道に進んだり、企業に就職したりする。
ライフスタイルの変化があれば、誰も生活を保障してくれないフリーランスは、成長限界を待たずにキャリアを見直すこともあり得る。

企業の担当者側からすると、いつもお願いをしていたライターさんがやめてしまった、そんな事実だけが残るわけです。

ライター目線で考える、未来のキャリア

最近は、生成AIを活用して記事を書く企業が少しずつ増えている印象です。ライター側も、文字起こし精度の向上や想定質問の作成、時には記事の要約で活用しているケースが多いのではないでしょうか。

ライター業はAIに置き換えられてしまうのでは?」と、以前ほど過剰反応する人は少なくなった感覚がある一方、やっぱり油断はできないのが現状。ChatGPTでインタビューはできるし、好きなライターさんの文章を機械学習させれば同水準のアウトプットが上がってくる……と考えたら、企業側からすれば十分にコスト削減の対象にライターは該当してしまう。

それでも、ライターが「ヒト」であることに軍配が上がるとすれば、以下の点は考えられる気がします。

  • 記事公開されない本音を語れる相手

  • 外部という客観性を有している相手

  • ライター固有の視点 / 専門性をもらえる相手

つまり何かというと、ライターは「ヒト」であり、機械でもAIでもないわけで、自らの興味や関心、深めたい専門性にもとづいてインタビューをしているということです。
世の中に公開されない「本音」の情報は、外には出さないものの、ライターの思考のきっかけにはなっている。こうして磨かれたライターとしての個性は、企業担当者と対話をする際の「価値」になる。

「対話の価値」は、事業課題の解決につながるヒントになるかもしれないし、コーチングやメンタリングまでいかないにしても、企業担当者にとっての頼れる存在には成り得るわけで。問題はそれを、ライター側が認識して「自分のキャリアに活かせるかどうか?」なのではと思うわけです。

編集 / ディレクターの道かもしれないし、事業創出の道かもしれない。外部から関わるインハウスエディターの役割かもしれない(日本語的に変だけど)。
少なくともコンセプトワークへの昇華は十分に可能だと思っていて、いわばコピーライティングの領域はキャリアとして考える価値があると思います。

ただ、企業側の視点で考えた時に、
いつもお願いをしていたライターが、やめてしまった」という状況に変わりはないわけで。

私はライターが「自分のキャリア」だけを考えるのではなく、企業担当者の目線にも立つ必要があると思っています。

ライターと企業、持続可能な関係性

目新しくはないけれど、新人ライターを育成するという視点を、キャリア2、3年のライターさんはもっても良いのではと考えています。

大事なのは「新人育成」の定義です。

ライティングの新人ではなくて「普段取材をしている専門領域の新人」といえば少しだけわかりやすくなるでしょうか。
企業のインタビュー取材と一口に言っても、特定の領域に偏る部分があると思っていて、それは当社も同じ。私(代表取締役)個人の価値観に、かなり影響されています。

具体的には、大企業における新規事業創出、社会課題の解決に挑むスタートアップ、地域課題の解決に取り組むベンチャーなど、広く捉えればESG経営と向き合う企業や間接的にSDGs達成に貢献しているお客様の取材が多数。
なので、普段考えることや読む本も、文化資本やESG投資に関するものが多いですし、社会課題と向き合うCEOやCFO, CTOがどんなことに注目しているのかは関心ごとです。

つまり前述の「新人」とは、「ライター歴はあるもののESG経営の文脈にはまだ明るくない。だけど関心がある」みたいな状況を指しています。
取材テーマに関しての「新人」であり、ライティングが未経験ということではありません。

ここで期待するのは、例えば、地方創生・移住に関わってきたライターさんがスタートアップのテック企業を取材をする、といったことです。
もともとライターさんが保有していた「知識・経験」に、新しいジャンルの見聞が掛け算されて、より個人として成長できるかもしれません。

新人育成のプロセスがあれば、(ライターをやめたとしても)ライティング案件を継続して引き受けられると思いますし(※ 第三者委託に関する契約は要確認)、企業側も発注先を新たに探す手間が省けます。
新人ライターさんも、新しいジャンルの仕事ができるようになり、元請けのライターさんも、コンセプトワークへ移行する準備期間が設けられる。

仕事内容も上流側になると思うので、「広報PR」「採用ブランディング」「マーケティング」など、特定の専門性を磨くための大切な期間になるはずです(誰かと新規事業を始めてもいい)。

ここで重要なのは、個人のライターであっても、人と協働する以上は、自分のビジョンを語る必要があるということです。

「なぜ、書くのか。なぜ、この取材先なのか」

を語れなければ、ビジョンに巻き込むことができない。大企業やスタートアップ企業のような立派なものではなく、共感してもらうための手段として必要なのではないか、と思うのです。

ただし注意が必要なのは、ライターというのは「あなたに書いてほしい」と指名されることも多い職業だということ。
これはこれで議論を深める必要があると思うので、べつの機会に譲りたいと思っています。

少なくとも、ドキュメントでレギュレーションをガチガチにしたり、編集 / ディレクターがコントロールするほうに寄せてしまうと、ヒトの機械化、合理的で効率優先という文化資本の考えとは真逆になってしまうので、当社としても課題と受け止め、試行錯誤を続けています。1年後、2025年には成果発表できるようにがんばります!

2024年の抱負を語らせてください

最後に、記事冒頭の「ライターとして記事を書き続ける理由」を回収したいと思います(笑)。

少しだけ自分語りをさせてほしいのですが、結論を言えば、先進的な活動の取材を続けながら、「新しい働き方」を、地方を含めた日本全国隅々に行き渡らせるにはどうすればいいか、を模索するためのライター業です。これが記事を作り続けている、私の根っこの動機です。

私は2015年、小規模事業者のサービスデザインを支援する相談業で独立した経緯があります。会社を辞めて独立した人たちが、自分の輝ける場所を築いていくプロセスにワクワクしたものでした。2020年には会社を設立し、現在の働き方に変わりました。

いま40代の私が中学生・高校生くらいの頃は、パワハラ・残業・つまらない顔をして満員電車に揺られる大人の顔、が当たり前の時代だったと、私視点でそう認識していました。だから就職なんてしたくなかった。未来に自分の居場所を感じられなかった。

現在は、人的資本経営やESG経営、ダイバーシティ推進……色々な言葉はあるけれど、働きやすい(でも自由で責任のある)環境が増えてきました。もし自分がいま高校生だったら、就職にも夢を持てたと思います。地方在住でもオンラインでつながれば自分の未来を変えられる、と。

ただ、子どもたちの視点に立った時、その考えはちょっと横暴かもしれないと思う自分もいます。

私には「新しい働き方」がイメージできても、子どもにとって、例えばYouTubeの世界は切り離された現実かもしれないし、オフラインで得られるものごとが自分形成の大きな手段かもしれない

人的資本経営、ESG経営なんて、都内の会社やスタートアップなど先進的な企業だけで起きていることだとしたら、地方に対しても何かしらの働きかけが必要なんじゃないか、と。
それは投資家による外圧のようなものではなく、もっと似合う方法があると思っていて。

文化資本の経営』の冒頭には、以下の言葉があります。

企業やその土地に培われた文化を人が活かし、今までにない価値、イノベーションを創造していくこと。歴史の持つ資産をストーリー化して価値にすること。

『文化資本の経営』(発行:Newspicks)page.8

こうした言葉の端々に、何かヒントのようなものを感じます。

物書きとして、こういうマインドでライターを続けていったら景色が変わると思うし、記事への向き合い方も変わりそうだよね。
そんな話を、ライターさんたちとできるライティング会社になればいいな、と新年を迎えたいま、考えています。

本年もどうぞ、よろしくお願いいたします!

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