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「働き方」に迷っていた私が始めた、伝統文化の共創プロジェクト

今年の1月、昔からの念願だった「メディア編集長」としてのお仕事を始めた。もともと一匹狼な体質の私は、誰かと一緒になにかをやることが苦手だった。だから複数のライターと一緒に企画を立ち上げるなんて、自分はムリだろうなと勝手に決めつけていたのも事実。

それでも自分のなかに生まれてくる想いや衝動を止められず、去年の8月に思い切ってライターを募集するところから始めた。FacebookとTwitterを使って、こんな記事を拡散した。

実をいうと私は、どこかの編集プロダクションで経験を積んできたわけではない。だから正直なところ、どうやって編集のお仕事を請けたらいいのかもわからないし、ライター仕事の工程も知らなかった。

恥ずかしながら、インタビュー取材をして一筆書きでパパっと書けばそれで納品が完了すると思っていた(本当に恥ずかしい…)。

そんな私がどうやってオウンドメディアを立ち上げて、編集長という立場でライティングや編集者のお仕事ができるようになったのか。

2020年のコロナ禍でもがき探し続けた、自分なりの「働き方」をこの記事を通して見つめ直していこうと思う。

私の会社、うまくいってませんでした

そのためには一つ、最初に告白しなくてはいけないことがあります。

「私、経営者…失格でした。」

2015年から個人事業主として、セミナーやワークショップを開催する講師業を務めてきた私ですが、いろいろなご縁もあり2020年の3月に起業することにしました。そのときの想いは、こちらのnoteに書き綴られています。

一言でいうと「やりたい仕事」と「求められる仕事」のマッチングがうまくいかず、どんな商品を作って、だれにどうやって営業をしようかとず~っと悩み続けていました。

ライティングの仕事がしたい。だけどできない。

「ブランドと文化」の文脈で本質的なテーマを掲げ、いざ営業をするものの、必要とされるのは「ebook制作」や「LP制作」というマーケティングツールばかり。

これじゃ、何のために会社をやるのかわからない……。

このまま終わるなら、いっそ好きなことを

「死ぬまでにしたい10のこと」ではありませんが、少なくとも自分の会社がなくなるまでにしたいことを創業1年目で考えるようになりました。

そのなかのひとつに「メディアをはじめること」がありました。

私は文章を書くことが好きな子どもでした。ちゃんとそれを自覚するようになったのは中学の頃で、好きなライトノベルを読み漁っては似たような小説をノートに書き綴っていました。

特に大好きだったのは「フォーチュン・クエスト」。深沢美潮先生の作品が大好きでよく読んでいました(知ってる人いるかな?)

ブログサービスが誕生した2000年代には、自分でも複数のアカウントを開設して毎日のように文章を書いていました。

バンクーバーに住んでいた頃には一度だけ、現地のタウン誌で「フリーライター」の肩書で活動をしていたこともありました。思えば、多大なご迷惑をおかけしていたと思います。だってそれこそあの頃は「一筆書き」の記事をよく納品していたので……。

こんな経緯もあり、直接的に売上をつくるマーケティングツールとは異なる「オウンドメディア」というものに大きな可能性を感じていました。

特に『THE BAKE MAGAZINE』さんの成功は、業界に光を照らした存在だ! と感動したのを昨日のように覚えています。

でも残念ながら、あまりに中長期におよぶ本質的なオウンドメディアの取り組みはビジネスの世界から消えつつありました。

少なくとも自分が読みたいと思えるような、パブリックな視点から本当に伝えたいことを伝えているメディアは少なくなったと感じています。

だから挑戦したかった。

オウンドメディアの文化をここに絶やすわけにはいかないし、何より自分が運営したいという気持ちが抑えられなくなっていました。

伝統文化に纏わるメディアを始めよう

自分のなかで「働き方」を考える上で、いくつかのキーワードがありました。

・ライフミッションになり得るもの
・本当によいものを伝えられる仕事
・これからの社会に必要と思えること

そう考えたときに「伝統文化」というテーマがしっくりきました。急に思いついたというより、もう何年も自分のなかでは描いていたことだったのだと思います。

この世界は工業製品の発達でとても便利になった。生活は快適になり、手間をかける必要がなくなってきた。

その一方で私たちは、どこへ行っても同じようなお店があふれかえった街並みを眺め、どこでも手に入るプラスチック製品を手に取り、物質的に豊かになった代わりに、精神的な余裕や幸せを感じられなくなってしまった。

……そう考える機会が増えていったんです。

エシカル消費やSDGs、時にはグリーンウォッシュなんていう言葉がニュースで飛び交うなかで「伝え手としてやれることをやろう」と決心しました。

こうして私の「共創プロジェクト」は、いよいよスタートします。

2020年8月、仲間がつどい始めた

冒頭に書いた「ライター募集エントリ」をSNSで投稿すると、1週間もしないうちに10名以上の人たちが名乗りをあげてくれました。

同時に、取材先を広く募集するために次のようなツイートもどんどん発信しました。「コンセプトブック」の無料配布です。

▲こちらは希望者の方には現在も無料でお配りしているので、ご希望の方はTwitterでDMください

完全に手探りのなか、自分なりに教えられることを伝えようとSlackのコミュニティグループも立ち上げました。

メディアを成功させるためのプロジェクトチームでありながら、ともに学び合える「コミュニティ要素」も取り入れようとイメージしていたからです。

とはいえ、不安もありました。

何を隠そう私はこれまで「コミュニティ運営」で失敗続きだったからです。どんなに長く続いても3ヶ月が限界。時間が経つにつれメンバーの熱量は下がり、一人またひとりと離れていく体験を何度も繰り返していました。

でもオウンドメディアはひとりでは成立しません。

一緒に作り上げるライターさんがいて、取材先を探してくれるメンバーがいて、広報活動をしてくれる仲間がいなければ、ただの個人ブログの域です。

「また失敗しちゃうのかな……。」

そんなことを思いながらこの企画はスタートしました。

メディア立ち上げの副次効果

最終的に結論から話すと、これを書いている「5ヶ月経過時点」ではプロジェクトチームは存続し、次なる取材先へのインタビューに向けて準備が進んでいます。

嬉しいことに、ライターの「2期募集」を求める声もいただいております。とってもとっても嬉しい……!

そして無事に、5本のリリース記事とともに新たなオウンドメディアが産声をあげて誕生しました。

伝統から考える未来の消費文化」をコンセプトに伝統産業/技術/文化の作り手・伝え手の方々をインタビューし、これからの社会が迎える消費の在り方についてお考えを伺っています。

存在価値が危ぶまれるなかで自分たちの存在意義を見出し、それをていねいに届けようとする姿勢は、「文章の力を証明する」をミッションに掲げる私たちの会社とも相性がよいと感じています。

(だってオウンドメディアの存在そのものが危ういのです……)

そしてなにより、大きな副次効果が私にはありました。ようやく自分のなかで、会社としてどんな商品やサービスを提供していけばいいのかがハッキリしたんです。

ご覧のとおり、自社メディア事業というのはすぐにお金を生むようなビジネスモデルではありません。仮に短期で収益を求めると、パブリックな本来あるべき姿とは遠ざかってしまいます。

もしそれをやってしまっては、このメディアの存在意義が失われます。

ですがこの事業活動を通して、自分がどんな仕事をしていきたいのかが明確になったのです。「働く理由」とでも言えましょうか。

ライティングの仕事がしたい。だけどできない。ブランドや文化という文脈で本質的なテーマを掲げいざ営業をするものの、必要とされるのは「ebook制作」や「LP制作」というマーケティングツールばかり。

そう嘆いていた私ですが、本質を見失っていたのは自分のほうでした。

だって仮に作り手さんから「この商品を広げたい」と相談されたら、喜んで「ebook」や「LP」を制作する自分がいると思ったから。

ただお金のためだけに働くのではなく、だれのどんな想いを、どこのだれに届けたいのかを明確にすることでいきいきと仕事ができる。ようやくそこに気づけたのだと思います。

もちろんそこには、実際問題としての「ニーズ」の話があることも重々承知しています。でもそのニーズを生み出す、出口をつくることも含めて私たちの仕事なのだと思います。

これからもまだまだ迷うことはあるかもしれません。

だけどこのメディアがある限り、私は自分の「軸」を失うことなく前へ進めると感じています。ちょうどこれが「コンパス」の役割を担い、向かうべき方角への進路を示してくれるように。

https://media.solena.jp/

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