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日本のトップアプリの30%・ゲームの70%がATTを実装済み! 日本トップ100アプリ・ゲームのIDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!

アプリマーケティング業界に激震を与えたIDFA取得制限、ATT(App Tracking Transparency)がiOS14.5のリリースに伴い正式に全デベロッパーに対して適用されて、早1週間が過ぎました。

今回の記事では、日本のiOS AppStoreのDL数トップ100アプリ・売上トップ100ゲームの計200アプリを対象にして、ATTの実装状況やダイアログの出現タイミング・文言の訴求軸・ソフトオプトインの有無などの項目を調査しました。(2021年5月3日時点)

ぜひ皆さんの対応状況に関しても教えてください!

調査結果サマリー

今回の調査結果のサマリーは以下の通りです。
以下、それぞれ詳しくみていきます。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

調査1. ATT実装状況

■ 全体としてのATT実装状況
アプリでは30%の実装率に留まっていますが、ゲームでは既に70%を超える高い実装率となっています。
この数値は、米国のトップ100ゲームのATT実装率が42%であることを考えると、非常に高い数値であることが分かります。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

■ アプリ内の広告有無によるATT実装状況
先ほどの全体のATT実装状況を、アプリ内の広告があるかどうかでクロス集計にかけた結果が以下です。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

ご覧頂くと分かる通り、アプリ・ゲーム共に広告有りの方が実装率が高くなっており、それぞれアプリが53%・ゲームが75%となっています。
この結果は、IDFA取得制限が各プレイヤーに与える影響を考えると至極当然かと思いますが、アプリではまだ半分近くしか実装が進んでいないため、様子を見ているデベロッパーが一定数いると考えられそうです。

■ ゲームジャンルによるATT実装状況
次に、ゲームをカジュアルゲームとミッドコア・ハードコアゲームの2つに分類して、それぞれのATT実装状況を調査しました。

尚、カジュアルゲームとミッドコア・ハードコアゲームは以下のように定義して分類しています。

カジュアルゲーム:
・AppStoreの設定カテゴリが「パズル」「インディーズ」「カード」「カジノ」「カジュアル」「ボード」
・その他のカテゴリに入っているがあからさまにカジュアルゲームであるもの(例:Voodooのハイパーカジュアルゲーム)

ミッドコア・ハードコアゲーム:それ以外

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

カジュアルゲームが79%、ミッドコア・ハードコアゲームが69%とカジュアルゲームの方が実装率は高いことが分かります。

加えて、ここにアプリ内の広告があるかどうかでクロス集計をした結果が、上図の下の表です。
広告有りカジュアルゲーム、広告無しミッドコア・ハードコアゲームの実装率が際立って高いことが分かります。

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Source:準備はいいか? ポストIDFA時代のモバイルアプリマーケティング戦略 〜2021年のアプリマーケティング考察〜

これはIDFA取得制限が与えるインパクトが大きいゲーム分類と一致しており、やはりインパクトが大きい分、ATTへの対応も非常に進んでいると予想されます。

広告有りカジュアルゲーム、広告無しミッドコア・ハードコアゲームへのATT適用のインパクトが大きい理由は以下の通りです。

高ARPPUのアプリ内課金ゲーム:
- 主にミッドコア〜ハードコアゲームが中心になり、ユーザーとしてニッチな部類になる
- 故に、ターゲティング精度が落ちることは特にリタゲを多用するゲームにとっては厳しい状況になる

広告マネタイズゲーム:
- ターゲティング精度が落ちる為、結果としてeCPMが低下して収益低下

調査2. ATTダイアログ文言

次に、ATTダイアログの文言に関しての調査結果です。

■ ATTダイアログの文言の行数
アプリ・ゲーム両方においてATTダイアログの文言行数をカウントした結果が以下の図です。(行数はiPhone7でカウント)

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

アプリ・ゲーム共に多数を占めるのが2〜3行の比較的短い文言であるのが分かりますね。

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参考:モンスターストライク

一方で、7行以上の長い文言も存在し、特にゲームではダイアログが長くなる傾向があり、長いものでは12行なども存在します。

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参考:雀魂-じゃんたま-

面白いのが、可変箇所であるダイアログ文言を一切記載しないという例も存在しました。

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参考:Hero Wars

ダイアログの文言の行数によってどのくらいIDFA取得率が変わるかは正直に分かりませんが、まだATTが適用されて日が浅い現段階では複雑すぎない程度にユーザーにATTダイアログの明確な説明をするのが良いのではないかと個人的に思います。
逆に、日が経過した後は、ユーザーもATTダイアログに慣れるため、そのタイミングで行数を調整するなどの一定の運用が必要なのではないかと思います。

行数によって取得率が変わったというデータや経験がある方はぜひ教えてください!

■ ダイアログ文言のカスタマイズ有無
ATTダイアログの一部箇所は可変であるのは、上記の参考画像の通りですが、アプリ・ゲームでカスタマイズをしているアプリがどのくらいいるかも調査をしました。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

結果としては、アプリ・ゲーム共にほぼ全てのアプリが何かしらのカスタマイズをしており、各デベロッパーがベストプラクティスがない中で試行錯誤しているのが窺えます。

■ ダイアログ文言の含有キーワード
次に、ダイアログの文言内に特定のキーワードが存在するかを集計しました。以下の画像に記載のあるキーワードと一致する、または類似するキーワードが含有しているかで、のべアプリ数として算出しています。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

見ていくと、アプリ側では「適切な広告」の出稿のためなど、あくまでも事業者側の都合目線での文言使用が多く見受けられます。
逆に、ゲームでは「ゲーム品質向上」などのユーザーメリットを先に提示した上で、それを提供するするための理由づけとして事業者都合の理由を併記するケースが多く見られました。

個人的所感としては、「広告計測」・「広告出稿」など事業者都合・メリットのみを記載して許諾を依頼しても、ユーザーからすると知らんわという感じなので、多くのゲームアプリのようにまずは何がユーザーにとってのメリットになるのかを明記した上で、許諾依頼を行うのが良さそうです。

ちなみに、両セグメント共に、「IDFA(広告識別子)」と明記するアプリは少ないです。ユーザーが分からないであろう単語を利用して不安を煽るよりは、分かりやすい単語や直接的なユーザーメリットに置き換えた言葉選びを行うのが良さそうですね。

■ ダイアログ文言の訴求軸
次に、ダイアログの文言がどのような訴求軸で記載されているかを調査しました。調査対象の訴求軸と具体的な言い回し例は以下の通りです。

事業者メリット:
- 広告効果計測・広告出稿の利用
- 不正行為の防止
- 利用状況の収集

ユーザーメリット:
- 今後のサービス改善・ユーザー体験の向上
- キャンペーンやイベントの告知
- 最適な情報・広告
- パーソナライズ・カスタマイズ

安心訴求:
- 設定は後から変更可能
- 目的の明記
- 個人は特定しない説得

恐怖訴求:
- アプリを無料で提供するには必要
- サービスの利用には必要
- 不適切な広告・コンテンツが増える
- 広告量が増加する

許可の依頼:

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

こちらも前述の含有キーワードと同じく、アプリ側ではユーザーメリットよりも事業者側のメリットが多く訴求されているのが分かります。
特に、アプリでは許諾をしないとユーザーにとって不都合が生じ得るという文脈の恐怖訴求が非常に多く、これではなかなか許諾率が上がらないのではないかというのが所感ではあります。

逆に、ゲームではまずユーザーメリットを提示した上で、事業者都合の理由、そして最後に許諾の依頼を行うという流れが非常に多く、許諾率を上げる上で参考になるのではないかと思います。

ちなみに、両セグメント共に、直接・間接問わず許諾の依頼をお願いする文章は多く盛り込まれています。
ここに関しては、Appleの審査担当者の匙加減による部分は多分にありますが、ガイドラインを熟読した上で、審査に通る許諾依頼文を作成するのが良いのではないでしょうか?

調査3. ダイアログの出現タイミング・ソフトオプトイン

最後に、ダイアログがどのタイミングで出現するか・ソフトオプトインの有無に関して調査を行いました。

■ ダイアログの出現タイミング
まずは、ダイアログの出現タイミングです。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

アプリ・ゲーム共に初回アプリ起動と同時に許諾ダイアログを出すケースが多く存在し、アプリでは2/3が、ゲームでは実に3/4が該当します。

何もアプリ内容や価値が分かっていない中で、突然「あなたを追跡したいです」と言われて、ユーザーは許諾をするでしょうか?

当然初回起動以降ユーザーは離脱していくため、ダイアログ表示対象になるユーザー母数と許諾意向の二軸で表示するタイミングを決定するのが望ましいです。

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Source:準備はいいか? ポストIDFA時代のモバイルアプリマーケティング戦略 〜2021年のアプリマーケティング考察〜

上図はプッシュ通知の許諾ダイアログの表示タイミングを決定するためのフレームワーク概念図ですが、同様の思考をATTダイアログにも適用ができると考えます。

ユーザー目線でどのタイミングで表示するのが、ユーザー母数×許諾率の最大公約数を取れるのかを以下のRCAフレームワークも用いながら、まだまだ試行錯誤できるのではないかと思います。

■ RCAフレームワーク
Reach:リーチ可能なユーザー母数の大小
・ダイアログを出すのがユーザージャーニーの奥深くすぎないか?

Conversion:許諾をしてくれる可能性
・ユーザーにとってメリットに繋がるタイミング・内容か?

Annoyance:許諾ダイアログが表示される時のユーザーが感じるウザさ
・ユーザーの一連の行動の途中で妨げていないか?

■ ソフトオプトインの有無
上記で挙げたダイアログの表示タイミング以外で、許諾率を上げることができる可能性がある施策の1つが「ソフトオプトイン」です。

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参考:東方LostWorld

ソフトオプトインとは、ネイティブのATTダイアログを表示する直前に、カスタムのオーバーレイやスプラッシュを挟み、ATT許諾に関して説明を行うことで、許諾率を上げることを目的とした施策です。

日本トップ100アプリ・ゲームの IDFA取得ダイアログ調査 〜許諾されるATTダイアログとは〜

今回対象にしたトップ100のアプリ・ゲームでは、アプリの50%・ゲームの30%がソフトオプトインを実施していました。

特に、初回起動と同時にネイティブのATTダイアログを表示するアプリのうち、ソフトオプトインを実施していたのは、アプリ(4/19)・ゲーム(11/53)と僅か20%と低い数値に留まっています。

繰り返しになりますが、突然許諾を依頼されてもユーザー側からすると何が何だか分からないので、丁寧にソフトオプトインなども利用しながら、許諾依頼を行うのが良いのではないかと思います。

参考になるATTダイアログ

最後に、いくつか参考になるATTダイアログの例を記載します。

①:シノアリス

なんとソフトオプトインが動画形式!
ゲームの世界観にあったソフトオプトイン、且つチュートリアルでプレイヤー名を決定した後のソフトオプトインであるため、結構許諾率は高くなるのではないでしょうか?
更に、ネイティブATTダイアログの文言も、ユーザーメリット→許可の依頼→安心訴求と、ユーザー目線をよく考慮してある文章訴求と構成で非常に参考になります。

②:Hero Wars

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ダイアログの可変箇所が0行!
ユーザー層が若年層で複数のアプリを利用しそうな前提から、ややこしい説明は抜きにして単純な訴求にした形でしょうか?
ソフトオプトインもチュートリアルプレイ完了後と、許諾率が高くなりそうなタイミングを選んでおり参考になります。
ごちゃごちゃと説明をするよりも、潔くダイアログを出すのも1つの手なのかもしれません…!

③:あんさんぶるスターズ

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ソフトオプトインで次に何が起こるのかを明示した上で、ダイアログを出すのが分かりやすいです。
ダイアログ文言もユーザーメリット軸で記載をしており、許可の依頼も非常に遠回しの言い方になっているので、押し付けを感じません。
ソフトオプトインで「後から設定を変更できる」などの複雑な説明は行い、ネイティブのダイアログは極力シンプルにしているのが良いですね。

④:戦国布武

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多くのユーザーが気にする点であろう、許可することで何が起きるのかを説明しています。時々、読み込みスピードが改善するなど虚偽の文言を記載しているケースも見られますが、「広告の数は増えない」点を簡潔に述べているのが参考になります。

最後に

以上が、2021年5月3日時点の日本トップ100アプリ・ゲームのIDFA取得ダイアログ調査結果でした!

今回の調査結果から見えてきそうなIDFA取得ダイアログのベストプラクティスは個人的には以下かなと思います。

①:ソフトオプトインを実施しよう
②:ユーザーが価値を感じるであろうタイミングでダイアログを出そう
③:訴求軸や文言は徹底的にユーザー目線で

IDFA取得は事業者にとって必要かもしれませんが、それがユーザーに対して押し付けになっていないか、ユーザーメリットを説明しているかは重要なチェックポイントだと思います!

今回の調査結果ファイルと一覧データはそれぞれ以下からご覧下さい!

尚、今回のIDFA問題や今後の展望・求められるアプリマーケティング戦略・戦術の転換に関しては以下で解説しましたので、まだご覧になっていない方は是非この機会にご覧頂けると幸いです!

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また、今回のnoteの内容は、Repro伊藤直樹さん(@n_11o)と2人でやっているポッドキャスト「Mobile Update」でも解説しているのでそちらも併せてご視聴ください!
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