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アプリ内課金をハックする〜アプリ売上・収益性を改善する〜

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!
今回はマネタイズ手法の中でも”アプリ内課金”をハックする〜アプリ売上・収益性を改善する〜をテーマにnoteを執筆していきます。

本noteでカバーする範囲は以下の通りです。
文章量が17,000文字強とかなりボリューミーなので、興味のあるトピックだけでもご覧頂けると嬉しいです。

1. アプリ内課金概論
2. 計測設計
3. 価格最適化
4. 課金アイテムの見た目
5. 課金アイテムの認知・促進

尚、既に市場トレンドを把握しており、自社のビジネスモデルが確定している場合は、2章に飛んで頂いて構いません。

※文章中では基本「である」などの断定口調で進行します。

1. アプリ内課金概論

1-1. アプリ内課金の金額市場規模
まずは、そもそも市場として課金関連の指標がどのようなトレンドを示しているのか見ていく。

■ 収益

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Source:AppAnnie The State of Mobile 2020

まずはアプリ収益に関する統計データを引用する。
まず、ゲーム・非ゲームで大別した収益比率では、収益の72%をゲームアプリが生み出している状況。
課金タイプでは、サブスクリプションからの収益が、2016年には18%であったものが、2019年には28%まで数値を伸ばした形。
世界全体では成長率は110%(2016年比)となっており、中国では脅威の190%で世界収益全体の40%を占める。
一方で、日本も以前プラスの成長率ではあるものの、アメリカの85%と比較すると45%と鈍化した成長率になった。

■ DL数

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Source:AppAnnie The State of Mobile 2020

次にDL数の成長率を引用する。
先ほどの世界全体の収益成長率が110%であったのに対して、DL数のそれは45%に留まっている。
特に日本と韓国・USの旧モバイル先進国(成熟国)においてはほぼ横這いの成長率を示す。

■ 利用時間

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Source:AppAnnie The State of Mobile 2020

日本におけるDL数成長率はほぼ横這い。では利用時間はどうなっているのか?
上図は各国におけるスマホの利用時間を表しており、世界全体での35%の成長率には及ばないものの、日本においても15%の成長率を記録している。

ここまでの日本市場における、収益・DL数・利用時間の増減をまとめると以下のような結論が導き出される。

ユーザー1人1人が保持するアプリの数は頭打ちになっており、1アプリにかける平均利用時間・課金額が向上している。
つまり、使われるアプリは使われる・使われないアプリは使われない状況に益々なってきているということだ。

この状況で勝つためには、
①:顧客単価据え置きでユーザー母数を増加させる
②:顧客単価を増大させる
の2つの戦略が考えられるが、本noteでは ②:顧客単価を増大させる にトピックを絞り述べる。

1-2. 有料アプリか無料アプリか
アプリを大別すると、有料アプリと無料アプリの2つになる。
本セクションでは、有料・無料アプリの割合・それぞれのメリットに関して簡単に記述する。(この記事を読むほとんどの方のアプリが無料であることは承知の上だ。)

1-2-1. メリット・デメリット
まずはそれぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめる。

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概して、有料アプリの場合は、ユーザーのDLのハードルが高い一方で、獲得後のエンゲージメントは高い傾向がある。ただ、買い切り型である故に継続的な収益は見込みにくく、獲得で得た収益を広告での獲得費用に回すことで継続的なユーザー獲得をする必要性がある。

一方の無料アプリは、ユーザーのDLハードルは低い一方で、無料がある故に競合数も多く、エンゲージメントが低くなる傾向がある。(特にレビュー・評価が荒れやすいのは無料であるが故)
製品利用サイクルも有料に比べて短くなる傾向がある。新規獲得はASO(アプリストア最適化)により検索順位上位表示させることでDL数増加が見込める。

1-2-2. 割合
次に有料・無料アプリに関する統計情報を見ていく。

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Source: Free and paid app distribution for Android and iOS 2020

ご覧頂くと分かる通り、iOSは9.6%・Androidは3.7%と両OSにおいてほとんどが無料アプリで構成されている。
時系列の推移で見ていくとそれぞれ以下のようになる。

iOS:2019/6〜2020/3

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Source: Distribution of free and paid iOS apps in the Apple App Store

Android:2019/6〜2020/3

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Source: Distribution of free and paid Android apps in the Google Play Store

それぞれ大きく変動せず推移をしているが、Androidにおいては若干の逓減傾向が見られており、今後も0とまでは行かずとも有料アプリの割合は継続的に逓減していくものと考えられる。

また、Appbotの調査によると、AppStoreにおいてはフィーチャーされるアプリの2/3が無料アプリであり、Appleとしてもより多くのユーザーにアプリを使ってもらえるようにこの傾向は続くものと考えられるだろう。

1-2-3. ユーザーの課金関連データ
ストア内でのアプリ数の割合を見たところで、実際のユーザーの課金傾向に関して見ていく。
まずは、有料アプリのインストール経験から。

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Source:スマホ利用者に、アプリ利用状況を調査!アプリ課金状況や、インストール個数が明らかに

有料アプリをインストールした経験の有無があるかの調査では以下の様な結果となった。
・約80%のユーザーが無料アプリしか使用していない
・有料アプリを使用経験がある残り20%の内、4/5にあたるユーザーが1〜4個の有料アプリを利用したことがある

この割合・個数が高いか低いかの判断ですが、 1-2-2. 割合 で先述した市場としての有料・無料アプリの割合を考慮すると妥当値と見られる。

次に、OS・デバイス別の課金データに関して。

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Source: FREE APPS VS PAID APPS: WHAT BRINGS IN THE BIGGEST PROFIT?

一般的な傾向として、Androidユーザーの方が無料アプリを好む傾向があり、課金単価はiOSの方が高くなっている。
また、iOSの中でもiPadの方が課金単価は倍以上高い。
この課金傾向は 1-2-2. 割合 で触れた有料・無料アプリの割合にも反映されている状態と言える。

1-3. アプリ内課金の種類
ここまでアプリ内課金の市場概論と有料・無料アプリの相違点に関して述べてきたが、ここで改めて今回のスコープを明確にする。

無料アプリで収益をあげるには大別して ①アプリ内課金・②広告・③成果報酬・④ユーザーデータ の4種類が存在するが、今回はその中でも ①アプリ内課金をハックする をテーマにする。
尚、①アプリ内課金 のようにアプリ内決済の中でもECはスコープ外とする。

本noteでのECの定義
①:検索行動などで代替可能な同質性のある商材をユーザーが選択可能
②:カート機能などで複数商品を本購入までに検討可能

スコープを再定義したところで、本セクションではアプリ内課金の種類に関して説明して1章を閉じる。

一口にアプリ内課金と言っても以下の3種類に分類される。

■ アプリ内課金の3種
①:サブスクリプション
・購入した一定期間内に機能の使用権限が与えられるタイプ
・音楽ストリーミングやVOD、マッチングアプリで使われることが多い

②:消耗型(都度課金)
・一度購入したアイテムを使用すると消滅するタイプ
・ゲームのコインやスタミナ、マッチングアプリのスペシャルポイントで使われることが多い

③:買い切り型
・一度課金するとその効果が永続的に続くタイプ
・広告非表示機能など一部機能解放や、ゲームアプリのスペシャルアイテム購入などで使われることが多い

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3種類には分類できるが、実際のアプリでは複数種の課金方法を組み合わせてマネタイズしているアプリが多いのが現状である。
例えば、マッチングアプリの「Pairs」ではサブスクリプションの有料会員特典とは別に、消耗型のPairsポイントを提供している。

尚、周知ではあると思うが、サブスクリプションモデルに於いては、AppleとGoogle両方プラットフォームの徴収手数料に関して理解するのが必要になる。(課金初年度は30%の徴収であるが、翌年からは15%に減額)
本手数料関連問題に関しては、高城さんの以下のnoteに最も詳しく記載されていたので是非参照頂きたい。

2. 計測設計

続いてアプリ内課金で獲得する収益を伸ばすための計測設定に関して説明する。

2-1. 収益構造
まずは収益をグロースさせるためにその構造から見ていく。
2-1-1. KPIツリー
以下それぞれ①:サブスクリプションと②:都度課金型のKPIツリーを見ていく。本KPIを正しく計測できるように設計することで、どのKPIをドライブしたことにより他のKPIが動いたのかに関して仮説立てと分析深掘りを行うことができる。

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まずは①:サブスクリプションのKPIツリー構造。
サブスクリプションモデルでは無料お試し期間にあたるトライアルの有無で若干の構造の違いはあれど、重点的に追っていくべき指標は以下のようになる。

・プラン単価
・継続期間
・無課金>課金転換率
・課金継続率

※トライアル有の場合は上記に加えて2指標の計測が重要になる
・トライアル率
・本課金転換率

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続いて②:都度課金型のKPIツリー構造。
基本的には購入UUとARPPUの向上戦略が重要であり、そのためには以下指標を追っていく必要性がある。

・課金率
・1回あたり購入単価
・1回あたり購入アイテム数
・アイテム購入頻度


尚、③:買い切り型に関しては課金に繋がる行動や、課金までの期間を分析するのが重要になる。こちらに関しては、5-2-3. 促進対象ユーザーの選定で詳述するため、本セクションでは割愛する。

2-1-2. 購買ファネル
次にユーザーがどのように課金まで辿り着くのかをステップに分ける。

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ECとは違い、①サブスクリプション・②都度課金型・③買い切り型の3つは基本的にはファネル構造は同一になる。
入り口にあたる課金ページ導線及び課金ページに出来るだけ多くユーザーをストレスなく導くことが重要になるが、本点に関して 5-1. 認知 で詳述する。
基本的にはこの各ステップをイベントとして発火計測ができるようにすることで、どこが問題で課金率が低いのかの分析が可能になる。

2-1-3. LTV
先述の 2-1-1. KPIツリー では事業ベースでのマクロな収益構造を式化したが、本セクションではよりミクロにユーザー単位での収益式を説明する。
難しく聞こえるが、単純にLTVを式化するだけである。

①サブスクリプション
期間単価×課金頻度×利用期間
②都度課金型
1回あたりの課金額×課金頻度×利用期間

尚、サブスクリプションモデルにおいては期間単価が課金頻度に直結する点に注意が必要になり、戦略としては如何に長期間の契約期間単位を契約させ、利用期間を伸ばすかがLTV向上の上で非常に重要になる。

余談ではあるが、サブスクリプションモデルのマチングアプリにおいて、ユーザー体験とLTV(特に期間単価)の向上は、一つのゼロサムゲームになり得ると個人的には考える。
これはつまり、マッチングアプリにおけるユーザーの成功体験とは如何に良い人に早く出会い退会できるかであり、いずれサブスクリプションをキャンセルしたいという思いがユーザーにあるため、利用単価の向上施策はユーザーの成功とは相反することが前提にあるということである。
このような背景もあり、多くのマッチングサービスがユーザーの平均利用期間をミニマムの契約期間ではなく中期プランである3〜4ヶ月と推奨していると考えられる。
本ジレンマに関して業界の方の意見があれば是非聞かせて頂きたい。

2-2. 計測設計
次に先述のKPIやファネル突破率などの各種数値を測定する上での計測設計方法とその注意点に関して説明する。
本セクションでは主にサブスクリプションモデルの計測設計に関して述べる。
2-2-1. 解約・払い戻し
サブスクリプションモデルで特に気をつけなければいけないのが、契約期間中の解約払い戻しの存在である。

解約・払い戻し共にアプリ外で可能なため、ユーザーが再びアプリを起動しない限りはアプリ内では解約・払い戻しをしたかどうかを判別できない。
図に表すと以下のようになる。

note_アプリ内課金をハックする05

この計測をアプリ内ではなく、バックエンドで行う仕組みを作らないとどうなるかと言うと、管理画面上の見かけでは数値が良く見えても、実際の収支は悪化している可能性も出てくるのだ。
LTV含め正しく計測できる設計にすることで、迅速に収益関係の指標のどこに問題点があるのかを特定できる。

尚、払い戻し(リファンド)に関しては以下2つのパターンが多い。
①:トライアル期間が短いほどユーザーは払い戻しをしやすい
②:月契約だと思い課金したが、実際は年契約で払い戻しをする

2-2-2. コホートでチャーンを追う重要性
実際に解約率を測定する際には、必ず複数の要素で課金・解約ユーザーをコホート化することが重要である。

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Source:App Pricing Optimization Guide

上図はあるプロダクトでの課金継続率を経過月別に表したものであるが、3ヶ月目の継続率が大きく下がっているのが見て取れる。これは、1ヶ月プランと3ヶ月プランをまとめて一緒に計測しているために、3ヶ月目で大きく数値が落ちているように見えてしまっている。

このように、プロダクトに合わせて各コホートに分けて計測をしないと、本質的な課題の特定が難しくなる点に注意が必要である。
コホートの定義は、性別や年齢などのデモグラフィック属性などはもちろんであるが、課金においては課金プラン・値段などで全てSKU(Stock Keeping Unit)で計測を行うすることを推奨する。

3. 価格最適化

意外と見落としがちだが、他のアプリ内機能と同じように価格も継続的なテスト対象である。
この章ではアプリ内課金アイテムの価格最適化に関して説明していく。
3-1. 価格の種類
まずはそもそものアプリ内課金の値段の種類に関して。
値段設定には大きく分けて以下の3種類が存在する。

■ アプリ内課金値段種類
①:固定価格(Static Pricing)
・全てのユーザー・タイミングで同じ価格を表示する
・ゲームのコインやマッチングアプリの有料会員などで多い

②:セグメント変動価格(Segmented Pricing)
・行動や属性ベースで価格を変動させるシステム
・ゲームの新規ユーザー限定パッケージなどで使われることが多い

③:ダイナミック価格(Dynamic Pricing)
・時間や行動などで自動的に表示させる価格を変動させるシステム
・ゲームで同じステージを◯回以上失敗した際などのお助けアイテムなどで使われる

大別すると上記3つになるが、多くのアプリでは複数種を組み合わせたシステムを採用することも多い。本件に関する事例に関しては5-2-2. 限定オファーで詳述する。

3-2. 価格のテスト
続いて課金アイテムの値段設定のための検証方法に関して説明していく。
3-2-1. 競合の価格帯調査
まずテストを開始する前に把握するべきなのが、競合アプリの値段設定である。同様の課金アイテムを提供する際に、あまりにも値段がかけ離れている場合は、余程プロダクトの差別化ができていない限りは、競合にユーザーを奪われてしまう可能性もあるため調査が必要になる。

ただ、一点注意が必要なのが、競合アプリ自体が最適な価格帯のテストを行なっていない場合、ただ単純に競合価格帯に迎合するだけでは大きく減収の可能性があることである。
本テスト設計の詳細に関しては 3-4. テスト設計 の注意点で詳述する。

3-2-2. アンケートによる価格帯決定
このセクションでは、実際に価格を検証するための価格帯設定方法に関して説明する。今回は最適な価格帯の策定のためにアンケートを使用した、価格感度メーターを紹介する。

まず、ユーザーに対して以下4つの質問を行う。

■ 価格感度メーター:アンケート
Q1:この製品がいくら以上なら高すぎて買う気が起きないか?
Q2:この製品の値段がいくらまで下がれば高くても買う気になるか?
Q3:この製品値段がいくらまで下がればお買い得だと思うか?
Q4:この製品値段がいくらまで下がれば安すぎて品質が心配になるか?

集まった回答を元に、値段を横軸・その価格の回答割合の累積比率を縦軸にとるグラフを作成すると以下のようになる。

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上図の受容可能価格域を検証価格帯と考え、継続的な検証の上限・下限と考える。それぞれの線の交点は以下のような定義になっている。

■ 価格感度メーター:価格定義
妥協価格:
・消費者が製品やサービスについて、この価格なら仕方ないという価格

理想価格:
・消費者が安すぎず、高すぎずという感覚になる価格で、消費者に最も望まれる価格
・この価格に設定すると、抵抗なく購入され、市場浸透が早まると言われている

上限価格:
・最も利益が得られる価格であるが、これ以上高いと誰も買ってくれないという価格

下限価格:
・最低価格・最低品質保証価格とも呼ぶ
・消費者がこの価格以下だと品質に問題があるのではないかと感じる価格
・特売品、セール品の値付けの参考になる

3-3. プラン構築
さて、最適な価格の目安が決まったら、実際に課金プランを構築する必要がある。本セクションでは最適なプランをどのように設計するのかに関して説明していく。
3-3-1. ペルソナ・プライス・フィット
ペルソナ・プライス・フィットとは、顧客のニーズと期待に応えるプロダクトプランと価格設定が可能になっている状態のことを指す。
これを達成するには、まずはユーザーに対して、欲しい機能と使用例に関してアンケートを実施しペルソナを定義するステップが必要である。
アンケート内容は以下が一例になる。

アンケート質問例
・高評価の機能
・低評価の機能
・許容料金

上記のアンケートに加えて、先述の価格感度メーターの価格帯を組み合わせると以下のようなプラン表が完成する。

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今回はあくまで2プランでの構成案であるが、価格感度メーターの幅やアンケートでの機能評価に応じて3プラン以上での構成も可能である。

3-3-2. 価値指標
プランは利用価値に比例した価格設定であるべきで、この料金設定の基準になる指標のことを「価値指標」という。
価値指標を満たす要素は以下の3点である。

■ 価値指標
1. 顧客が価値を感じるポイントと合致している
2. 顧客がプロダクトを利用するほど高まる
3. 理解しやすい

SaaSでは一般的な価格プランとして以下のような例が挙げられる。

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Source:AppTweak

本例はASO(アプリストア最適化)のツールであるが故に、トラックできるキーワード数・競合数を価値指標としてプランが構築されている。

3-4. テスト設計の注意点
最適な価格と機能が搭載されたプラン案ができ、早速テストを開始したいところだが、本章の最後にテスト設計における注意点を解説して章を閉じる。
3-4-1. 価格相対性
ユーザーはボトムラインと比較してユーザーはプランを選ぶ点を考慮する必要性がある。これは価格に相対性があるということである。
The Economistの事例が最も分かりやすいので引用する。

■ 2プランのみの場合
オンライン購読 – $59 (68人購入)
オンライン購読+雑誌購読 – $125 (32購入)
→下位プランの選択が大多数

■ 3プランのみの場合
オンライン購読 – $59 (16人購入)
雑誌購読 – $125 (0人購入)
オンライン購読+雑誌購読 – $125 (84人購入)
→大多数が上位プランを選択

2プランの際には低位プランの選択が大多数であったのに対して、3プランにした際には最上位プランの選択が大多数になっているのが分かる。
これは、中位プランをあくまで囮として使用して、最上位プランを選択させるのが目的になっている。この囮になる中位プランを使用した価格相対性の持たせ方をDecoy Pricingと呼ぶ。
このプライシングにすることで、低価格帯を選ぶユーザーと多少高くてもコストパフォーマンスを重視するユーザー群両方を獲得できる

ここで重要になるのが、下位から上位プランを階段上に設定しないことである。中位と上位を値段を同じで機能を拡充させることで、比較対象が中位と下位・中位と上位の構造にすることができるわけである。

3-4-2. 値下げは売上に直結するか
競合の価格が自社よりも低いからといって安易に価格を下げることは推奨できない。単純に企業間の値下げ競争になると業界自体がシュリンクしてしまうという理由もあるが、プロダクト種によっては値下げ自体がユーザーの購買行動に悪影響を及ぼす可能性があるからだ。

テクノロジー市場や専門サービスなどの品質や効果など製品価値の判断が難しい商材に関しては、価格を上げる方が効果がある場合が多い。
これは、価格は質に直結すると考えるユーザーが多い故である。
仮説なしの値下げをしないことを推奨する。

3-4-3. 端数価格
価格相対性とは別によく使われる心理学手法が端数価格である。
これはスーパーなどでよく見る手法なので馴染深いものであると思うが、アプリ業界でも事例として散見される。
アメリカのデータにはなるが、末尾が9・99・95になっていることで売り上げが最大で24%向上するという事例もあり、侮れるものではない。(日本における通例は8・98)

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この端数の使い方には注意点がある。

■ ユーザーの受け取り方
1980円:2000円から20円おまけしてくれている(ポジティブ)
1020円:1000円に20円上乗せされている(ネガティブ)

ここでも基準となる価格が上なのか・下なのかを考慮し、価格設定をすることが重要になる。

3-4-4. ペニーギャップの存在
ペニーギャップとは「1セント(ペニー)でもお金を払う場合は、無料の場合より反応が極端に悪くなる」ことを指している。
価格と需要を軸にとったグラフは以下のようになる。

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Source: The Penny Gap

ご覧頂くと分かる通り、無料と有料で大きな乖離が出ていることが分かる。これをペニーギャップと言うわけだ。

この概念から検討するべきなのは以下2点になる。

■ ペニーギャップを考慮するべき2点
①:最下位プランの価格は安くしすぎない
最下位プランの単価を大きくあげてもCVRに大きな悪影響はない

②:トライアル利用は本当に必要か
トライアル利用をしたユーザーを有料転換させるのには概して大きなハードルがある。本当にトライアル利用が必要かどうかを検討する。

無料から100円払わせるのと、100円から200円に値上げして払わせるのは、上がり幅は同じでも同じ難しさではない点を理解することが重要。

3-4-5. テスト実施時の注意点
本章の締めくくりとして、テスト実施時の注意点を2つ紹介する。

①:仮説なしにテストを実施しないこと
当たり前ではあるが最も重要な点である。競合価格に合わせるのは一つ手にはなり得るが、競合が検証していない場合はただ迎合するだけになるのは前述の通りである。
ただ単純に現状の価格から20%オフにするだけでは、20%の減収だけでなく極端な話それ以上の減収になる可能性があることも念頭において、前述の各種手法を用いて検証価格帯について仮説を立てるのが前提である。

②:適正価格帯が見つかっても全ユーザーに適応しないこと
例えアンケートなどで適正価格帯が見つかっても、いきなり全ユーザーを対象に実験をしないこと。理由としては以下2点が挙げられる。

1. 比較対象がないと結果の外部要因(流入元・シーズン)・内部要因(価格)の切り分けができず効果が正しく計測できない
2. 実際のアンケート(価格感度メーター)では適正価格帯以上に支払う意向があるユーザーが一定数存在する

上記2点の理由から、必ず小規模なユーザー群から実験を実施していくことを推奨する。

また、あからさまな価格最適化もユーザーの信頼を失う可能性がある点に注意が必要である。ホテル予約サービスのOrbitzではMacユーザーがWindowsユーザーよりも30%多くのお金を払うことから、Macユーザーには通常よりも高額なホテルを表示していたことで、大きな話題になった
度を過ぎた価格最適化はユーザーの反感を買う可能性があることをお忘れなきよう。

4. 課金アイテムの見た目

本章では課金アイテムをどのように効果的にユーザーにアピールすればいいのかに関して説明する。
4-1. 名前・説明文
まずは、課金アイテムの名前と説明文に関して。
課金アイテムの名前はただ単純な「プレミアム」や「マンスリー」などの名前にはしないことを推奨する。これは、アプリの内容を理解できていないユーザーからすると何をできる課金内容なのかが分からないからである。
アプリ内課金の名前はキャッチー且つ内容が説明できるように設定をするべきである。

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尚、iOSにおいては課金アイテム名もASO(アプリストア最適化)のキーワードインデックス対象になる。特にサブスクリプションの課金アイテムに関しては検索結果にも表示されるため、名前と説明文の最適化が重要になる。(アプリや商材によって検索結果からのサブスクリプションアイテムの課金割合は大きく異なる。)
ただ、キーワード対策だけを意識すると、名前が一般名詞になりやすく、ユーザーが課金を本承認する際に困惑する可能性があるため、ほどほどにすることを推奨する。

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Source: How to Optimize for Promoted IAP (In App Purchases)

4-2. パーソナライズ
次に課金アイテムのパーソナライゼーションに関して説明する。
ここでいうパーソナライゼーションは以下の2つの軸に分類される。

①:ユーザー名
・課金アイテムの名前にユーザー名を入れる
・課金促進のダイアログにユーザー名を入れる

②:コンテンツ
・ゲームでプレイしたコンテンツに応じて課金アイテムを出し分ける

例えば、以下の例では既にSeason1をプレイしたことがあるユーザーを対象にSeason2課金を促進する、プレイ経験軸でのパーソナライズを実施している。

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Source:HOW TO INCREASE IN-APP PURCHASES AND BOOST APP REVENUES

4-3. ビジュアル
課金アイテムをどのように視覚化してユーザーに伝えるのかも重要な要素である。

まずは、課金アイテムのビジュアリゼーションに関してである。
ショップでの課金アイテムを可視化するのは、ゲームアプリにおいてよく見られる例である。
この時、必ずしも実際に提供するアイテムの見た目と一致していなくても構わない。例えば、10コイン課金を1コインの見た目、25コイン課金を2コインの見た目・50コイン課金をたくさんのコインのように見せるのも効果的である。
ただし、あまりにも乖離があると混乱を生む原因にもなるためバランスの見極めは必要である。

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Source:HOW TO INCREASE IN-APP PURCHASES AND BOOST APP REVENUES

上記の他にも色彩心理学を利用するのも一つの手である。
ブランドカラーとの兼ね合いもあるが、ユーザーに行わさせたい行動・与えたい印象に合わせて色を利用することは効果的である。

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Source:The Ultimate Guide To Mobile In-App Purchases Optimization

例えば、赤色は緊急性の印象を与えることから、セールアイテムを喚起する際によく使われる。

4-4. 付加価値
次に、ユーザーにより上位のプランを選択させるためにはどのようにすればいいかを述べる。
ここでは上位プランを選ぶ理由、即ち付加価値を何にするかと、どのように見せるかの二軸を考える必要性がある。

①:付加価値の設定
ゲームでいえばコインのまとめ買いセールや、マッチングアプリでいえば契約期間が長いほど月単価が下がるような仕組みである。
多くのアプリでは、ユニットあたりの値段を安くすることで付加価値を創出している。

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Source:HOW TO INCREASE IN-APP PURCHASES AND BOOST APP REVENUES

②:付加価値の見せ方
多くのアプリがユニットあたり単価を下げることでの付加価値を提供しているが、同じ付加価値でも 1. 単価を下げる と 2. おまけをつける の2通りの見せ方があることを認識する必要がある。

1. 単価を下げる
本来は100枚で500円(単価0.5円)のコインを500枚で2000円(0.4円)で販売

2. おまけをつける
本来は100枚で500円(単価0.5円)のコインを400枚で2000円(0.5円)で販売しおまけで100枚をつける

上記の例では、2. おまけをつける の方がユーザーの受ける印象は良くなる傾向がある。ユーザーが払うお金と受け取るコインは1と2で同一にも関わらずだ。
これは、1つにおまけという特典による満足もあるが、そもそもユーザーはわざわざ単価を計算しようとしない点に理由がある。

4-5. 魅力的なアプリ内課金の見せ方
本章の締め括りとして、アプリ内課金のオファーをどのように魅力的に見せるかに関して解説する。

アプリ内課金のオファーと一口に言ってもその種類は多岐にわたるが、本noteでは以下の2つに大別してそれぞれ解説していく。

■ アプリ内課金オファーの種類
①:ショップリスト形式
②:ポップアップメッセージ形式

①:ショップリスト形式
まず、ショップリスト形式だが、アプリ内のショップページに課金コンテンツが一覧で並ぶ形式を意味している。

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Source:THE IAP MERCHANDISING PLAYBOOK, PART 1: SPECIAL OFFERS THAT SIZZLE

この形式では、売りたい商品を他の商品と視覚的に差別化するのが重要になる。具体的には上図のように、スペシャルオファーの商品のサイズを通常の商品よりも大きく表示し、明確に別規格の商品であることをユーザーに一目で理解させることが必要だ。

②:ポップアップメッセージ形式
次に、ポップアップメッセージ形式だが、画面上を占有する形でメッセージダイアログを表示する形式を意味している。

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Source:THE IAP MERCHANDISING PLAYBOOK, PART 1: SPECIAL OFFERS THAT SIZZLE

この形式ではメッセージが画面の占有率の多くを占め、伝えられる情報が多いからこそ、逆に情報を詰め込みすぎないのが非常に重要だ。
また、メッセージ表示により、一時的にユーザー操作が妨げられる為、表示する対象ユーザー・頻度・タイミングの策定は熟慮する必要がある。
そもそも論で言えば、ユーザーの行動を妨げるに値するオファー内容でないのであれば、メッセージ自体を出すべきでない点は念頭におくべきだ。


さて、では具体的にどのような点を意識してアプリ内課金のオファーの設計を行うべきなのか。ここでは以下7つの点をチェックリストとして紹介する。

■ 魅力的なアプリ内課金オファーのチェックリスト
必須
1. 十分なサイズであるか
・そのオファーがスペシャルオファーであることを効果的に伝えるには、画面占有率を他のオファーよりも高くする
・ポップアップメッセージ形式では画面の2/3を占有するのを推奨
・ショップリスト形式では他のオファーよりも大きいサイズを推奨

2. アイキャッチ画像はあるか
・スペシャルオファーはそのオファーが本当にスペシャルであることを伝えるために、他のオファーとは明確に違うアイキャッチ画像を使用する

3. 画像は高解像度か
・アイキャッチ画像を過度に圧縮しないこと
・スマホの画面でも明確に他のオファーとは違うことが分かるように高解像度の画像を使用する

4. 要素を詰め込みすぎていないか
・画面占有率が高く入れられる情報量が多い分、情報を詰め込みがち
・各要素の間に十分な間隔があり、伝えたい内容が明確に伝わるかどうかを確認する

5. 要素の視覚的優先度はあるか
・ユーザーが瞬時に内容を理解し、何ができるか分かるかが重要
・金額・内容・購入CTAは瞬時に伝わるかどうか確認する

推奨
1. 明確にオファーの価値は伝わっているか
・なぜこのオファーを購入するべきかどうかを明確に説明できているか
・特に新規ユーザーはそのオファーがどのような価値を提供してくれるのかを十分に理解していないケースが多いため、説明は必須

2. アニメーション要素
・CTAを光らせるたり、アイキャッチ画像を動かすことで、スペシャルオファーが他の通常オファーとは違うことが明確に伝わる


以上がユーザーが買いたくなるアプリ内課金オファーの見せ方の解説だ。
もちろん、全てのアプリに当てはまるわけではないが、本章で解説した内容で検証を行えば、より多くのユーザーからの収益が見込めるだろう。

5. 課金アイテムの認知・促進

最終章にあたる本章では、課金アイテムの存在・価値をどのようにユーザーに認知させ、どのように購入促進を行うべきなのかに関してそれぞれ見ていく。

5-1. 認知
まずは課金アイテムの存在と価値をどのようにユーザーに認知させるかに関してである。
5-1-1. 課金ページへの導線設計
2-1-2. 購買ファネルで説明した通り、アプリ内課金においてはファネルの入り口にあたる課金ページ導線及び課金ページに如何にできる限り多くのユーザーを流入させるかが重要になる。
そのためには、課金導線をすぐにユーザーが発見できるように、行動導線の階層深くではなく、いつでもアクセスできるように設計することが必要である。

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Source:HOW TO INCREASE IN-APP PURCHASES AND BOOST APP REVENUES

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5-1-2. 課金システムの存在と価値の認知
課金導線とは別に、課金システムの存在とその価値を認知させる必要がある。ここでは2つの効果的な手法を紹介する。

①:オンボーディングでの認知
これはゲームアプリで良く使われる手法であるが、チュートリアルプレイの段階で課金アイテムを使用させることで、初期段階で課金アイテムの存在と価値を伝える方法である。
例えば、ゲームアプリである「パズドラ」では、チュートリアルで魔法石を集めさせ、ガチャを引かせることで課金システムの認知を行なっている。
また、マッチングアプリの「Tinder」では、初回利用開始15分以内に、SuperLikeやBoostなどの全ての課金アイテムを認知させている。

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②:課金コンテンツのチラ見せ
もう一つの手法としては、課金が必要になるコンテンツ自体を無課金ユーザーの画面から消すのではなく、ロックされていることを明確にしておく方法がある。
課金をするとどのようなことができるのかを明確に伝えることで、課金システムだけでなく価値も認知させることが可能になる。

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5-2. 促進
最後に、課金をどのようなユーザーに対してどのタイミングで促進をすると、ユーザーにストレスを与えることもなく転換率が高まるのかに関して見ていく。
5-2-1. 課金促進のタイミング
ユーザーに課金を促進するタイミングには2つの注意点がある。

①:行動の邪魔をしない
大前提として、アプリ価値を感じていない早い段階で促進をしないことが重要ではあるが、その後もユーザー行動を邪魔するタイミングで促進はしないこと。ユーザーがアプリを起動するのは何かしらの目的があってのことであるが故に、アプリ起動と同時に課金促進をするのは論外であるのは分かると思うが、他の行動にもこれは適用される点に留意すること。

②:必要とされるタイミングで促進する
ユーザーが課金アイテムを必要とする時に、必要なアイテムに辿り着けるように誘導するのが最も良い促進方法と言える。ゲームアプリに於いて良くある例が、同じステージを何回も失敗しているユーザーに対して、パワーアップアイテムを促進するというものである。この方法であれば、ユーザーも不快感なく課金に繋がりやすい。

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ここまでの2点を総括して、ゲームアプリを例にとって各トリガーでの課金促進を比較する。

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ここではConversion(課金率)は勿論、その他にReach(対象ユーザー数)とAnnoyance(不快感)の2要素も考慮に入れる必要性がある。
一点注意が必要なのが、課金ページでのAnnoyanceの高さである。確かに課金ファネルにおける最深部にあたる課金ページはConversionは高くなるが、そもそものユーザーの課金ページ訪問目的が課金であることがほとんどであるため、そのタイミングで課金促進は押し付けがましく感じられる可能性が高い。

AnnoyanceとConversionは相関しないことがあるため、3要素全てを考慮して適切な促進タイミングを策定することが重要である。

5-2-2. 限定オファー
課金促進において効果が高く、正しく使えばユーザーの不快度も低いのが限定オファーである。限定オファーにも大別すると ①期間限定のセール形式 と ②特定ユーザー限定のセール形式 の2種類が存在する。

①期間限定のセール形式

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②特定ユーザー限定のセール形式

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もちろん、①と②の組み合わせも可能である。例えば、クラシルでは新規ユーザーの初回起動タイミング限定で月額3ヶ月無料キャンペーンを実施している。(初回起動以降の新規ユーザーは2ヶ月無料キャンペーンが適用される。)

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5-2-3. 促進対象ユーザーの選定
本章・本noteの締めくくりとして、課金促進対象ユーザーの選定方法に関して述べる。

大前提として 2. 計測設計 で述べた設計が出来ていないと、誤ったデータに基づき誤った結論に辿り着いてしまうことは理解する必要性がある。

①:コホートでの追跡
まず、最初にやるべきはコホートで分けて各種数値を見ていくことである。マッチングアプリを例にとったコホート分け例は以下のようなものがある。

■ コホート例
①:デモグラフィック属性
- OS
- 年収
- 年齢
- 性別 etc

②:サイコグラフィック属性
- 登録好みカード
- 参加コミュニティ etc

③:ジオグラフィック属性
- 居住地
- 勤務地 etc

④:行動属性
- いいね送受信回数
- マッチング有無・累計回数
- メッセージ送受信回数
- つぶやき有無・累計回数 etc

上記コホート例で分けて見た際に気になった点があれば、次に挙げる分析手法などを用いて対象ユーザーとタイミングを策定することになる。
勿論、上記に挙げたコホートを全て試す必要性はなく、まずはOSや性別などの大きな粒度かから区切って見ていくステップで問題ない。

②:分析手法例
ここでは 1. 期間・回数ベースのパレート分析 と 2. 各行動実行回数の相関分析 の2種類を取り上げる。

1. 期間・回数ベースのパレート分析
まずは、期間・回数ベースでユーザー課金傾向を探っていく。
横軸に初回起動などからの経過日数や、イベント実行回数をとり、縦軸に課金UUとその累積比率をプロットしたパレート図を作成する。
パレート化することにより、課金をしているユーザーの大多数がどの期間・回数までで課金を実行したかの傾向を掴むことが可能になる。

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本分析においては2つの注意点が存在する。

■ パレート分析の注意点
①:ユーザー母数・課金率も参照すること
課金UUだけではなく、その元のユーザー母数と課金率の2要素も考慮しないと、単純にユーザー母数減少を課金人数が激減していると判断してしまう可能性がある

②:リテンションレートも意識する
①と類似ではあるが、経過日数を経るごとに自然とリテンションレートは落ちていくので、課金UUのみだけを見ていると誤った結論に辿り着く可能性がある

2. 各行動実行回数の相関分析
2つ目は、イベント(行動)横断で実行回数と課金率に傾向があるのかを探っていく。イベント実行回数を横軸にとり、課金率を縦軸にとった散布図を作成する。

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本分析の注意点は以下の2つである。

■ 相関分析の注意点
①:概して課金率は上がっていく
イベント実行回数が上がるにつれて概して実行率は上昇していく。誤った結論を避けるためには、実行回数ごとのユーザー母数及び課金UUを同時に見る必要性がある。

②:当該イベントがユーザーシナリオのどこに位置するのか
①を考慮した上で、イベント実行回数が上がるにつれて顕著に課金率が上がる正の相関があるからといって安易に飛びつかないこと。
当該イベントが、ユーザーの利用開始から課金完了までのステップのどこに関連するイベントなのかを理解することで、真に課金率と関係があるのかの判別の正確性が向上する。


あくまで上記2手法は分析一例、且つダミーデータを使用したものではあるが、基本的な分析ステップとしては以下のようになる。

■ 課金傾向分析ステップ
①:コホート分析による傾向把握
②:分析軸決定(イベント別・期間別・回数別)
③:ユーザー母数実数・課金実数・課金率の3指標をもれなく取り込んだ可視化

このステップを踏むことで、必ずアプリ内課金を改善するための糸口はつかめるはずである。


■ 最後に
今回は ”アプリ内課金をハックする” をテーマに執筆しました。
手前味噌ではありますが、市場概論から計測設定・価格設定・プロモーション方法まで網羅しており実践的な内容になっているのではないかと思います。
本noteを元に改善実践をして頂けると、著者として冥利に尽きます。
よければシェア頂き、コメント・議論などできると嬉しいです。

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