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That’s the Tea on Mobile Growth: The Mobile Marketing Conference 2020 Recap

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!

10月21日にアプリストアのABテストサービスを提供するStoreMaven主宰のモバイルグロースカンファレンス「That’s the Tea on Mobile Growth」がオンラインにて開催されました。
日本だと僕の周辺含め誰も知らなかったみたいですが、世界から約1000名が参加と大盛況のうちに幕を閉じ、アプリ事業者にとっては必見の内容も多く非常に勉強になりました。

今回は、そのカンファレンスの中でも参考になったセッション3つをRecap形式でお届けします。

1. How to nail Creative Optimization in the App Stores

https://player.vimeo.com/video/472183006

Moderator:Esther Shatz Storemaven’s VP Consultancy
Speaker:
・Ben Clarke Senior Director of Marketing at Jagex
・Rocio Morales Senior Product Manager at Tilting Point

■ IPゲームのクリエイティブ設計
前提としてSEOと違い、ASOでは複数のチャネルから、異なる興味・関心がある多様なオーディエンスが最終的にはひとつのアプリストアのページに辿り着くことを理解するのが重要だ。つまり、自社のアプリに流入するユーザーがどのようなユーザー群で、何に興味を持っているのかを検証を繰り返して特定することが必要になる。

特に、IPもののゲームでは、元からそのIPのファン層であるユーザーと、IPを認知していないゲーマー層がそれぞれ存在するので、どちらの層が多いのか、その層がどのようなことをアプリに期待しているのかを検証しなければいけない。

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■ 新規ユーザーとアンインストールユーザーに向けたストアページ設計
ストアページの最適化においては、新規ユーザーだけに特化した設計をしてはいけない。アプリをインストールしたものの休眠してしまったユーザー群や、過去にアプリをインストールしていたものの現在は削除してしまっているユーザー群もストアページには訪れる可能性があるからだ。

ストアページの最適化においては、新規ユーザーだけに特化した設計をしてはいけない。アプリをインストールしたものの休眠してしまったユーザー群や、過去にアプリをインストールしていたものの現在は削除してしまっているユーザー群もストアページには訪れる可能性があるからだ。

特に長寿ゲームタイトルほどリーチ可能な休眠・アンインストールユーザーは多い為、彼らをリエンゲージメントできた際にインストールしてもらえるような設計が重要になる。

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最初に理解するべきなのが、新規ユーザーと休眠・アンインストールユーザーでは、それぞれストアページの要素の並びが異なる点である。

どの要素がどのユーザー群に対してどのような順番で表示されるのかを理解することで、各要素の変更点をどのユーザー群に合わせるべきかが分かるだろう。例えば、ストア詳細ページでのアイコン変更は、新規ユーザー向けではなく、休眠・アンインストールユーザー向けに施策を実施するのが効果的である。

■ アイコン変更の効果
シーズンに合わせた各ストア要素の変更も効果的な手法だ。

その最たる施策例としては、シーズンに合わせたアプリアイコンの変更が挙げられる。ここで重要なのが、本施策の主目的は、新規ユーザーのコンバージョンレートの最適化だけでなく、既存ユーザーに向けた新コンテンツの認知によるリテンションであることだ。Jagexでは、時期に合わせた細かいアイコンの変更によって、休眠ユーザーの内15%が復帰した事例も存在する。

アイコンの変更による休眠ユーザーの復帰手法は使い古された古典的手法であり、且つその効果の直接的な効果の測定は難しい。しかし、例えアイコンの微細な変更であろうと、ホーム画面に並んでいるアイコンが普段と少しでも違えばユーザーの目に留まり休眠復帰する可能性はある為、依然重要な施策と言えるだろう。

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2. Optimizing the App Stores Search Funnel

https://player.vimeo.com/video/472185619

Moderator:Laurie Galazzo CMO at AppTweak
Speaker:
・Dora Trostanetsky Senior Manager at SoundCloud
・Kalee Fambrough Growth Marketing Manager at Shipt

■ どのように対策するキーワードを選定するか
ASOは一回やれば終わり・対策をすればどんなキーワードも上位表示できるというのは、ASOにまつわる2つの大きな、そしてよくある誤解だ。

実際は、ASOでは試行錯誤の度重なる検証が成功の大前提にあるのは強く認識して欲しい。

また、アプリ規模によって狙うべきキーワード群は大きく変わるのも重要だ。具体的には、SoundCloudの場合はアプリ規模が大きい為、ある程度検索ボリュームが大きいキーワードも狙える立ち位置ではあるが、もしもっと小さいアプリであれば検索ボリュームが小さいロングテールキーワードを重点的に狙う戦略を選択する必要性がある。

また、ユーザーレビューはキーワード対策観点では軽視されがちであるが、宝の山であるケースが多い。ユーザーレビューで使われているキーワードは、実際にユーザーが使用している言葉であるので、流入増加の観点では見逃してはいけない要素だ。

■ クリエイティブのABテスト
Soundcloudの場合はそのサービスの性質上、アーティストの許諾が都度必要である為、高速でクリエイティブのABテストを実施することはできないが、理想を言えば月1〜2回の検証は必須である。

また、OS間の違いとして、iOSではAppleSearchAdsのクリエイティブセットを使用したABテストは可能だが、テストしたいクリエイティブは都度ストアに申請をする必要性がある為、スピード感としては遅くなる。故に、基本的にはGoogle PlayConsoleで提供されているABテスト機能で月に1〜2回のテストを実施するのが良いだろう。

ただ、GooglePlay ConsoleのABテストの精度はその仕様上至らぬ点も多い為、ABBテスト形式を採用して検証精度を高める工夫が重要になる。(ABBテストに関しては後述)

その他、クリエイティブ設計において重要なのが、デザイナーと一緒に実際のスマートフォンの画面上でクリエイティブの見え方を確認することだ。PCでクリエイティブを作成している際には意識しにくいが、スマートフォン上でユーザーには実際にはどのように見えるか、キャッチコピーは小さくないかの確認をするのが非常に重要だ。

■ ペイドとオーガニックの一貫したユーザー体験の担保
SoundCloudの場合はリスナー向けには一切ペイドを出稿していない為、ペイドとオーガニックの整合性は意識していない。

しかし、チャネル横断ではなく、ユーザージャーニー上での一貫性の担保は最重要視して獲得戦略・プロダクト設計を徹底している。具体的には、認知から獲得までのアプリ外から、利用開始から定着までのアプリ内の全てのユーザージャーニーの体験が一貫したものになっているかは、プロダクト部門とも連携して担保できるようにしている。

3. Leverage Customer Intent to fuel your ASO Strategy

https://player.vimeo.com/video/472190616

Speaker:Simon Thillay Head of ASO at AppTweak

■ SEOとの大きな相違点
SEOの場合はユーザーのオーディエンスや検索クエリごとにLPを複数出し分けることが可能だが、ASOの場合はどんなユーザーも共通の1つのストアページに辿り着きインストールするかどうかを決定する。

故に、ASOにおいては、潜在的なユーザー群に対してどのような機能・効果をどのように伝えるかを慎重に検討し決定する必要性がある。

例えば、現在Google Mapでは、2枚目のスクリーンショットでそのGPS機能がAppleWatchでどのように便利に使えるかを訴求している。一方で、ユーザーが一番目にするスクリーンショット1枚目とタイトルでは、情勢に応じて、近くのデリバリーや持ち帰りができる飲食店を検索できる点を訴求するように変更されている。

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また、Spotifyやyelpではその多様な機能の中でも、1・2個の重要な機能に注力してメタデータ・クリエイティブアセットで訴求する手法を選択している。

その他、アンダーアーマーは旗艦アプリ以外に、そのフィットネスの種類ごとにアプリを細かく分化して提供しており、それぞれアプリに求める機能が違うユーザー群に対して最適なアプリを提供できるようにしている。この手法はフィットネスカテゴリでは一般的であり、Runtasticなどでも採用されている。

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このように、自社のアプリを求めているユーザー群の最大公約数の興味・関心軸でメタデータ・クリエイティブを設計することで、最もアプリとの親和性が高く、且つユーザーボリュームも担保できたオーディエンスにリーチ可能になる。

■ ユーザーの関心と期待値を把握する
では、具体的にどのような方法でユーザーの関心や期待値を把握すればいいのだろうか?ここでは以下3つの手法を紹介する。

1:意味論ベースでのキーワードの優先度決定
まずは、アプリに関連するキーワードを洗い出した後に、ユーザーの関心軸ベースでキーワードをカテゴリ分けする。

その中でも一般的なキーワードで、アプリの提供する価値と合致するものがあれば、そのキーワードは流入の核となるものになり得る為、対策の優先度は高くなる。

それ以外のミッドテールやロングテールキーワードでも、関心軸と提供価値の合致度合い次第で対策優先度は高くなるが、キーワードの検索ボリューム帯ごとに重み付けを行って真の優先度を見極めることが重要になる。

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2:AppleSearchAdsの獲得パフォーマンスデータの使用
AppleSearchAdsのキーワードごとのCVRを元に真に関連度が高いキーワードを発見する手法も存在する。

AppleSearchAdsを出稿することに関しては、オーガニックとのカニバリゼーションを指摘する声もあるが、カニバリゼーションの可能性と、競合の入札脅威・自社が入札することによるCPT低下のメリットはトレードオフの関係性にある為、どちらを選ぶかは事業者次第である。

いずれにせよ、実際の獲得パフォーマンスをベースにした、キーワードと対象オーディエンスの親和性の測定はユーザーの期待値との乖離を把握する上で非常に有効な手段である。

3:ユーザーレビューを活用する
ユーザーレビューでは実際にユーザーがどのようにアプリを評価しているかを把握することが出来る為、期待値の把握に非常に役に立つ。

特に、GooglePlayConsoleでは、レビューの意味論ベースでの分析が可能な機能が存在する為、トピックごとに分析を行うことで、より深い考察を得ることが出来るだろう。

■ ローカライズの重要性
アプリに寄せられる期待や興味は万国共通だとしても、ユーザー自体は全く違う属性である点を考慮するのも重要だ。

同じ言語でも使われるキーワードの特徴は大きく異なり、クリエイティブの勝ちパターンの傾向も各国・民族ごとに行事や慣習などによって大きく異なる。例えば、同じ「クレジットカード」という一般的なキーワードでも、インドとアメリカではその検索量は大きく違う。

国・民族・言語ごとにローカライズされたメタデータ・クリエイティブを設定するのは獲得戦略においては非常に重要だ。

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■ テスト実施時の注意点
ユーザーの関心軸とその流入チャネルは必ずしも均等の割合で分かれているわけではない為、各オーディエンスのボリュームを加味しながら、最もインストールとリテンションが期待できるクリエイティブアセットの設定をする必要性がある。

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特に、GooglePlayConsoleでは、各配信パターンのオーディエンスの同質性が担保できない点や、検定の信頼水準が90%と低いことから、検証精度に不安が残る。その際には、より検証精度を向上させる為に、ABBテストを実施するのが推奨される。

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Source:Dealing with False Positive A/B tests Results in Google Play Experiments

■ プロダクト開発との連携
ASOは獲得領域だけにしか関わっていないように見えるが、それは完全な誤りである。

実際は、プロダクトとASOは密接に連携をして一貫した体験をユーザーに提供し続ける必要性がある。

特にAndroidでは、リテンションレートやクラッシュ数・ANRの発生数などのアプリの質的指標が、検索順位やカテゴリ内順位などのアプリのストア上での視認性に大きく影響を与える為、常にプロダクト部門と連携してユーザーの不満を取り除き改善していくことが重要になる。

また、時機を捉えた機能開発も重要である。具体的には、iOS14のリリースに伴い「Widget」の検索量が急増したが、”Motivation”ではウィジェット対応を迅速に行い、更にストア上のスクリーンショットで訴求した結果、フィットネスカテゴリ1位・カテゴリ全体順位10位にまで上り詰めることができた。

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最後に

以上が「That’s the Tea on Mobile Growth」のRecapでした。
どのセッションでも共通して登壇者から発せられていたのは以下の2点に集約されると思います。

①:継続的な検証なくして成功なし
②:獲得領域とプロダクトの密な連携の必要性

この内、2つ目の部門横断型の連携の重要性は僕も常々主張してきている点です。特に日本の場合は、ユーザージャーニーのステップごとに組織部門が分かれており、横断的な施策の実施が中々実現していないのが実情ですが、顧客目線で考えてみればこれには非常に違和感を覚えます。何故なら、ユーザーにとっては認知から流入・利用開始・定着までは1本の体験であって分断されたものではないからです。

真に顧客が求めているものを提供する為には、組織横断的に各ジャーニー地点でのデータを共有し、一貫した顧客体験を設計することが今後はますます重要になっていきます。その点では、ASOはあくまでも獲得領域における手段の一つであり、銀の弾丸ではないのは自戒も込めて今後も強く主張していく必要性があるなと感じます。

ちなみに、今回のカンファレンスに参加して思ったのですが、この内容全部僕が以前書いた「エンゲージメントドリブンの獲得戦略」で取り上げていたなと笑
手前味噌ですが、獲得領域の手法の1つであるASOがどのようにプロダクト部門と連携して、一貫した顧客体験を提供できるのかを詳述した内容なので、お時間ある際に是非ご覧ください。(弊社オウンドメディアにも寄稿しております)

自画自賛はこの辺にしておいて…笑
今回は、上記3つのセッションのみを取り上げましたが、他にもいくつかセッションはあるのでそちらもよければ以下リンクよりご覧ください!

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