見出し画像

#81 逆転有罪

控訴審判決の日。
最悪の想定は原審差し戻し。しかし、これまでの裁判の内容を見ていて考えられないことでした。控訴審で無罪が確定すれば、ようやく普通の生活に戻れる。そう信じていました。

しかし現実は、時に予想をはるかに超えるもの。
裁判とはいったい何なのか...

>>>>>>>>>>

2016年11月28日。
事件事実についての不安はありませんでした。
しかし、一審無罪の控訴審での有罪率は7割。いやでも不安がよぎります。

気持ちを落ち着かせ、裁判長の前へと進みました。

「主文、原判決を破棄する。被告人を懲役1年6月に処する。判決言い渡しから3年間、刑の執行を猶予する」

・・・。

何を言っているのか、理解ができませんでした。

裁判長の口から出た言葉は、最悪の想定を上回ってきました。

最悪の場合、"差し戻し"があるだろうと私たちは考えていました。

一瞬、頭の中が真っ白に。
信じられない現実が、再び私を襲いました。

手錠をかけられた、あの時。
そして再び、真っ暗闇へと突き落とされた気分でした。

目の前では、何やら村山裁判長の口がブツブツと動いていましたが、何も耳に入ってきませんでした。
間も無く私は、市長としてどのような対応が必要なのか、思考をめぐらせました。

やっとの思いで、無罪判決から立て直してきた1年半。
美濃加茂市は順調に未来へ向かって前進している、その手応えが私にはありました。

こんなところで終わるわけにはいかない。
皆さんとの歩みを止めるわけにはいかない。
私ができる最良の選択は何なのか。

村山裁判長が判決内容を長々と読み上げていましたが、その内容を聞いている暇はありませんでした。

この裁判長の人格、過去の実績についても全く興味がありません。ただ、この裁判官に裁かれる人は不運であると断言します。
事実の認定も真実を見抜くこともできない裁判官。それにもかかわらず、裁判官という非常に大きな権力を持っている。

このような裁判官が存在するが故に、警察、検察の捜査機関の暴走は止まらないのです。そんな司法行政の構造を理解しました。

閉廷後、この日も記者会見を行いました。
記者から厳しい質問が飛び交うことを想定しましたが、会見会場はお通夜のように静まり返っていました。

ある記者に聞いた話ですが、逆転有罪になることを想定した紙面を用意しておらず、どのような記事を書けば良いのか多くの記者が混乱していたということでした。会見場での記者からは
「判決は何を証拠として有罪としたのか?」
「どうして逆転判決に至ったのか?」
私たちこそ聞きたいような質問が弁護団に投げかけられていました。

質問が集中したのは、判決内容の明らかに不可解な点でした。
裁判官は、中森氏が差し入れられた判決書を読んでしまった事実を認めました。"当裁判所の目論見を達成できなかった"などとして、中森氏の控訴審での証言は一切判決の根拠にされませんでした。

それにも関わらず、控訴審では、一審の裁判官が信用性なしと判断した、一審での中森氏の証言を、"独自に解釈"して"信用性あり"と判断し、有罪判決の根拠としました。
そして、私は控訴審に毎回出廷していましたが、被告人質問は行われることなく、逆転有罪判決がを下しました。

その理由として、中森氏の知人2人の証言を重視していました。中森氏から私にお金を渡すとか、渡したなどという話を聞いたという証言でした。一審判決が曖昧な話だとして全く問題にすらしなかったのに、これらが重要な証拠とされたのです。

「なぜ、藤井氏は証言台に一度も呼ばれなかったのに、一審の証言を信用できないと退けられてしまったのか?」
私が聞きたい質問でした。

そして最後には、
「市長を辞職するつもりはありますか?」
と、私への質問がありました。
「市民の皆さんと相談したい」
返答は、そこまでに留めました。

裁判所に来ていた親友W氏は、
「選挙を打てる準備をしよう。直ぐにでも動けるようにしておく」

いつも頼もしい彼でした。

記者会見を終え、直ぐに美濃加茂市へ。
まずは、市議会への判決内容の報告。全議員に集まっていただきました。

市政の健全な運営のためには、議会の同意、議員の理解は非常に大切なことです。全ての議員に今回の逆転有罪判決の説明をする必要がありました。私から状況を報告し、判決の内容については郷原弁護士が説明しました。

しかし、この時、マスコミには配られた判決要旨が、なぜか私と弁護人には渡してもらえませんでした。通常ではありえないこと。
判決要旨を受け取っていない状態では、議会や市民の皆さんに正確な判決内容を伝えることができません。

判決要旨は、翌日になっても交付されません。
判決日の翌々日、市議会の森弓子議長にご同行いただき、名古屋高裁まで。判決要旨の交付を要請しました。

わざわざ議長が出向いてまで要請した判決要旨。それにもかかわらず、裁判所はマスコミに配布したものでさえ、当事者である被告人には渡さないという姿勢を取り続けました。

この対応は、私たちへの嫌がらせなのか、はたまた、有利な記事を書かせるためにマスコミを敢えて優遇したのか、定かではありませんが、到底理解できない対応で、裁判所への不信感は更に膨らみました。

現在、こちらの"note"を再編集した上で、
本として出版するためのクラウドファンディングを行っています。
残り6日。ネクストゴールに挑戦中です!
2014年の事件から7年が経過しました。
私にとっては思い出したくないような辛い経験でしたが、この事件を風化させてはいけないと考えています。このような事件を生み出してしまう社会を変え、同じような冤罪事件が2度と起こらないように、社会課題と向き合っていきたいと思います。
ご支援、また一人でも多くの方に拡散していただきますよう、よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?