#05 はじめての愛知県警本部

早朝に叩き起こされ、
十分な睡眠も食事も取らないままに、
警察の準備した車に乗せられている自分の姿に、
（これは現実なのか。夢であって欲しい）
と、何度も思いました。

それでも、事情聴取が始まれば
「私の疑いは、すぐに晴れるだろう」と信じていました。

そんな期待を持っていた私を乗せた白色のセレナは
無数のフラッシュが焚かれる中、愛知県警本部へと入っていきました。

■登場人物
私：藤井浩人
Y刑事：愛知県警刑事、任意同行から私を担当。

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美濃加茂市役所を出た白色のセレナは、出勤ラッシュ前の混み合っていない国道41号線を愛知県名古屋市方面へと進んでいきました。
車の中で話をするだけで、私にかけられている疑いはすぐに解けるだろうと思っていましたが、Y刑事は私と話をするつもりは無いようでした。

セレナの左右、後部には報道関係の車がピッタリと追走し、
車外にはヘリコプターの音が絶えず聞こえていたような記憶があります。

車内には、4人の警察官が乗車していました。
「皆さんどちらの警察ですか？私の父親も警察だったんですよ」
沈黙を破るように、私から話しかけてみたところ、車内には愛知県警と岐阜県警の警察官が同乗していて、捜査は愛知県警と岐阜県警の合同捜査だということを聞かされました。
私は、親身に感じた岐阜県警の刑事に話しかけてみました。

私「岐阜県警の刑事さん、お名前は？」
A刑事「Aです」
私「どちらの所属なんですか？」
A刑事「捜査2課です」

後から思えば当たり前の返答が、一言だけ返ってきました。
政治家や汚職の捜査は捜査2課の仕事です。
当時の私は、そんなことも知らなかったのでした。

捜査1課：殺人や強盗などの凶悪犯罪　
捜査2課：知能犯　
捜査3課：窃盗犯
などなど

特に会話が続く様子もなかったので、
私はスマホを取り出し、ネットニュースをチェックしました。
すると、私が任意同行されたことが早速、Yahoo!ニュースに出ていました。
私は、その記事を引用して、

こんな記事が出てしまいました！
収賄なんて、事実無根なので、しっかり捜査に協力し潔白を晴らしたいと思います！

という内容をtwitterに投稿しました。

「潔白を晴らす」は全く間違った日本語であり、大変恥ずかしい内容です。普段なら何度か見返してから発信するところを、当時はそんな余裕が無い程に動揺していたことを推察できます。

スマホを触っている私を面白く思わなかったようで、

Y刑事「何やってるんだ」
私「私のニュースが出ていたんですが、何がなんでも早すぎですよね」

そんな私なりの嫌味のある返答に対して、
Y刑事はうっすら笑っていたような気がします。

会話の無い車内で落ち着かなかった私は、一日のスケジュールを確認し、この日の午前中の予定をどのように変更すれば良いのか考えていました。

この時、私は本気ですぐに帰れると考えていました。

名古屋高速を降りたセレナは名古屋市内を走り、目的地へ到着したようでした。どこに着いたのかは分かりませんでしたが、おそらく愛知県警本部だったと思います。
待ち構えていた報道陣のフラッシュの多さには驚愕しました。

余談ですが、この前日は
若手市長の先輩たちと名古屋市内で夕食を共にしていました。
それから数時間後、このようなカタチで再び名古屋に戻ってくるなんて、
想像もつきませんでした・・・。