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#20 唯一の救い、弁護士接見

期待していた検察官の取調べも、刑事同様に私が犯人である前提で話が進められ、私の気力はどんどん失われていきました。
(嘘でも認めてしまって、楽になろう)
(...家に帰りたい)
そんな囁きが頭をよぎることもありました。

そんな時に、弁護士の接見が私を絶望から救い上げてくれるのでした。

■登場人物
私:藤井浩人
神谷弁護士:逮捕一週間前に相談した愛知県の弁護士の先生。
渡辺弁護士:神谷弁護士の事務所の弁護士。私と同じ歳。渡辺海太弁護士。

山内弁護士:途中から加わっていただいた名古屋の弁護士。山内順弁護士。

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取調室の電話が鳴り、弁護士接見の連絡が入ると、検察官は非常に嫌な顔をしました。
どのような状況でも、弁護士接見は取調べを中断してくれました。

神谷弁護士の事務所に所属していた渡辺海太弁護士は、20日以上続いた取調べ期間中、毎日のように面会に来てくれました。
渡辺弁護士は当時、刑事事件を多く抱えていたようで、忙しい毎日だったにも関わらず、検事の取調べが行われている時には、検察庁に。刑事の取調べが行われている時には春日井警察署に深夜になっても必ず足を運んでくれました。

私の体調を気遣いながら、美濃加茂市の状況や、新聞やテレビの報道内容を事細かに教えてくれました。刑事事件の常識や、裁判の現実について、何でも包み隠さず話してくれました。渡辺弁護士と私は同じ年齢ということもあり、取調べが続く厳しい中での精神的な支えになってくれました。

また、名古屋で活動している山内順弁護士も起訴後、弁護団に加わり、頻繁に面会に来てくれました。山内弁護士は、岐阜県出身で、仕事の話やプライベートの話で私の気持ちを落ち着かせ、状況に応じて的確なアドバイスをくださいました。

弁護士接見は、刑事や検事から何時間も質問を浴びせ続けられ、普通の会話を誰ともできない状況下で、正常な精神状態を取り戻すための非常に重要な時間になりました。

経験を通じて、私が強く問題だと感じることを記します。

私のように頻繁に弁護士に面会に来てもらえるケースは、非常に稀だと思います。
このような弁護士のサポートが無い被疑者の人は、想像を遥かに超える精神状況に追い込まれてしまう中で、正常さを保つことができるのでしょうか。

そして、与えられる情報は、捜査機関からの一方的なものに限られてしまいます。事実を誤認し、その誤認やストレスが原因となって、犯してもいないことや事実では無いことを、認めてしまうことも十分に考えらます。

過去に発生した、色々な冤罪事件でも、過酷な環境下での自白が大きな問題となっています。
冤罪事件として取り上げられた話は、幸運なほんの一握り。氷山の一角であり、その裏に多くの冤罪事件が作り上げられ、多くの被害者が存在していることを想像することは難しいことではありません。

私の経験から、そのような悲惨な冤罪事件が日本中で起こっていることを断言できます。

最近の冤罪事件に、警察官が被疑者の気持ちに付け込み、恋愛感情まで抱かせ、やってもいないことを認めさせたという事件がありました。
冤罪で10年以上服役、獄中での友情
(懲役12年を服役後、再審が認められ無罪)
これは、被疑者が恋愛感情を持ってしまったという単純な話ではなく、手錠に留置場、唯一話せるのは刑事だけ、そんな環境も大きく関わっていると思います。
そのような精神状態の人に付け入るのは、取調べの”プロ”である彼らには、決して難しいことではないのでしょう。

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