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ゲイ中学生 最初で最後の彼女 #32

中学3年生のときに、はじめて彼女ができました。


今現在、僕が自覚しているセクシャリティはゲイです。僕の性別は男性で、性的な指向の対象も男性です。中学時代の僕は、自分がゲイだということに気がついていませんでした。

気がついていなかっただけで、実際は幼少期のころから性の興味の対象は女性じゃなく男性だったような気がします。

僕が自身のセクシャリティに気がついたのは高校生になってからのことでした。


それまでの僕は、自分と周りの違いを少しずつ感じながらもみんなと同じでなければと、なんとなく周囲に合わせて“普通”になろうとしていたのかもしれません。


中学3年生のときに、僕に初めて親友と呼べるような信頼できて心許せる友人ができました。


その友人とは、同じクラスになったことはないのですがあるきっかけから仲良くなって
毎日、昼休みはその友人と二人で過ごして
放課後もお互い部活のないテスト期間中などは、決まって学校帰りに彼の家に行き、一緒にテスト勉強をするようなそんな仲でした。


ある日、そんな彼と恋バナをしました。


彼は僕のクラスメイトの女子のことが好きだと話していました。
その彼女は、僕と保育園から一緒で小学校・中学校と何度か同じクラスにもなったことがあったので彼女のことはよく知っていました。

彼から、彼女のことを根掘り葉掘り聞かれて
僕は分かる範囲で彼の質問に答えていました。

ひとしきり彼の質問が終わると



「で、ひろトは誰が好きなん?」



されたくない質問でした。

僕は恋バナが苦手でした。


僕にとって好きとか、恋?みたいな感覚はよくわかりませんでした。


今この瞬間に、一番大好きな身近な人類を挙げるとするなら
目の前にいる彼が僕にとっての好きな人であることは間違いありませんでした。


でも彼は男だ。
それに親友くらいの仲の良さだと
彼に対して感じている“大好き”だという感情が湧くことは、いたって普通のことなんじゃないかと
それが自然なことなのだと僕は疑ってもみませんでした。


今、思えば当時の僕は彼に恋をしていたのかもしれません。



僕は彼の質問の回答を必死で考えました。



(僕は、誰のことが好きなんだろう)



当時、仲がよかった女子がいました。
同じ部活で、部活外でも習い事が一緒で彼女とは同じ時間を共有する機会が多かったです。


なんとなく、僕はその彼女のことをとっさに僕の好きな人にしようと心に決めました。



僕は彼に、半ばその場しのぎで決めた僕の好きな人の名前を伝えました。


その彼女は、彼の幼馴染でした。
彼は彼女が僕にぴったりだと自信満々に言っていました。

そして彼から一つ提案がありました。



「俺、今度告白しようと思うんやけど、ひろトも一緒に告白しよや」



いつになく、彼はテンションは高くて
彼の中で気持ちが高ぶっているような感じがありました。


僕は、そんな彼の期待に応えたい。
そんな気持ちがあったように思います。
彼の勢いに押された部分もありました。

彼の気持ちに同調して、僕の気持ちも高ぶっていました。

今までなんにも意識していなかった彼女のことが、彼に好きな人だと伝えたことで
なんとなく意識する対象に変わっていました。



そして、僕は彼女に告白をしました。




彼女からは返事を少し待ってほしいと言われました。



あーーーー、終わった。
これ絶対振られる。



でも、それでもよかったです。
僕は彼女のことは好きでした。
でもそれは、恋心ではなく一人の友人としての彼女が好きでした。
正直、恋人関係になることが怖かったです。


そして告白から一週間後に、彼女から返事がありました。



意外にもOKの返事でした。



拍子抜けした感覚がありました。
恋人関係になることは怖かったです。
でもそれよりも、僕は大好きな彼の期待に応えることができたことが嬉しかったようにも思います。


僕は、彼に彼女ができたことを報告しました。
彼は自分のことのように喜んでくれました。
彼も告白が成功して、二人ともそれぞれに恋人ができました。
お互いに、はじめての彼女でした。

嬉しそうにしている彼を見て、僕もとても嬉しかったです。



だけど、彼女と付き合ってからの毎日はとても窮屈でした。



彼女は僕の告白を受け入れてくれましたが一つだけ交換条件がありました。

その条件は、「付き合っていることを絶対に周囲にバレないようにする」ということでした。

彼女の友人に僕に好意を抱いている人がいたそうで、その友人にバレたら友人関係が崩れてしまうという理由でした。

僕は、その条件を快諾しました。


でもその条件のおかげで、僕たちは
今まで以上に普通にコミュニケーションをとれなくなってしまいました。

バレないことが一番大事なことのようになってしまい
学校でも話しづらくなり、休日デートのようなことをしても人目を気にしすぎて一緒の時間を楽しめる余裕はありませんでした。

恋人同士になってからの方が、話す頻度も
一緒にいる時間も減ってしまったような感覚がありました。


そして彼女と交際をはじめて3ヶ月ほどで彼女から別れを告げられました。


恋人らしいことはほとんど何もせずに彼女との交際は終わりました。


彼女が僕の最初で最後の彼女です。


僕にとってとても貴重な経験でした。
僕にこのきっかけをくれた親友の彼は、ほどなくして彼女と別れ
高校生になり新しい彼女が何人かできて、大学生になり大学で知り合った人とお付き合いをして結婚し、今では二児のパパになっています。


僕も、最初の彼女と変な交換条件がなく、順調にお付き合いをしていたら
今の人生じゃなかったかもしれないし
僕も彼と同じように、普通に恋愛をして普通に家庭を持てていたのかもしれない。

今の選択に、今の人生に後悔はありません。
だけど、ふとそんなことを考えてしまうこともあります。

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