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お年玉で子どもに「大人買い」を経験させよう!

令和最初の年の暮れとなりました。
さて、お正月と言えば、子どもにとって最大のイベントはお年玉。子ども達が普段手にすることのない大金を手にするこの機会は、親子でお金について考える絶好のチャンスでもあります。

そこで提案です。

「お年玉はまとめて使わせて、子どもに『大人買い』を経験させよう」

ムチャなアイデアに聞こえるかもしれませんが、以下、ご説明します。

お年玉は普段のお小遣いの約10倍

唐突ですが、今、40万円か50万円、ポンと渡されて、「何を買ってもいいよ」と言われたら、どんな使い道が浮かびますか。
私がぱっと思いつくのは、スーパーカブの125ccの新型、あるいはロンドン弾丸ツアーでミュージカル三昧……。なかなか夢が膨らむ規模のあぶく銭ですよね。

新生銀行のこのリポートによると、2019年時点の会社員のお小遣いの月額は平均3万7000万円ほど。40万円はその約11倍、50万円は14倍ほどに当たります。
ちなみにお小遣いの平均、1982年以来の低水準だそうです。平成をすっ飛ばして、昭和57年とほとんど同水準まで落ちてます。私が10歳のころです。
平成デフレ、恐るべし。うんざりしますねぇ。

お小遣い

(新生銀行の上記リポートより)

気を取り直しまして。
実は、お年玉というのは、子どもにとって、大人にとっての「50万円ぐらいのあぶく銭」と同じくらいのインパクトがある臨時収入なのです。
バンダイの調べでは、お年玉の平均は小学生が約2万1400円、中学生が3万円強だそうです。同じくバンダイによるお小遣い調査をみると、お年玉の金額はお小遣いの12倍ほどです。

お年玉表

ご自分の子ども時代を思い出しても、このお年玉の「あぶく銭」感は、肌感覚に近いのではないでしょうか

お年玉の使い道の4割は貯金

このお年玉の使い道、第1位は「貯金」で4割弱を占めます(図表・データはバンダイのリポートから拝借しています)

使い道 全体

もう少し詳しくみると、男女ではちょっと差があります。
「女子は手堅く、男子はバカ」という普遍の真理が垣間見えます。

使い道 小中男女

「貯金なんて『使い道』とも言えないのでは?」とも思うわけですが、ここにはカラクリがあります。
もらったお年玉のうち、自分が自由に使える金額が「半分未満」という子どもが4割以上を占め、1割強に至っては「0円」だというのです。

自由に使えるお年玉

要は、親がお年玉を預かって、その大半が貯金に回っているわけですね。
自分が小さかった頃、「貯金しておいてやる」と親に騙されてお年玉を巻き上げられていた恨みを横においても、これはいただけない。

「お小遣いの10倍以上」というインパクトは、子どもだからこそ感じることができるものです。大人になれば、あるいは大学生になってバイトでも始めれば、2~3万円というお金が持つ価値は「ちょっとした余裕資金」ぐらいに大きく下がってしまう。

それなら、貯金などせず、普段なら手が届かないものや、お小遣いではチマチマとしか集められない本やマンガ、ゲームなどのアイテムの大量購入など、いわゆる「大人買い」を子ども達に経験させてみてはどうでしょうか。好きなアーティストのライブの最前席のチケットを買ったっていい。
とにかく、派手に使う。これが肝心。

巨額投資は子どもの記憶に刻まれる

旅行や運動会などの非日常的な経験は、長く記憶に残りますが、お金に関してはそうした機会がなかなかない。
だから、お年玉は「いつもと違うお金の使い方」をするチャンスとすべきです。

私自身の話をすると、「米プロバスケNBAの贔屓チームのスタジャン」という例があります。
高校生の時、上京する機会があった兄に頼んで、デトロイト・ピストンズのジャンパーを買ってきてもらいました。袖が革製の上等な品で、お値段5万6000円なり。当時、名古屋ではそうしたグッズは入手不可能だったので、自慢の「勝負服」になりました。
正確にはお年玉で全額を賄ったわけではないですが、この巨額投資は、悩みに悩んだプロセスや「アホだな、お前」と兄に呆れられたことも含めて、記憶に刻まれています。
ちなみに今でも年に何回か着ています。

「失敗上等」で子ども自身に使わせる

「お年玉・大人買いプロジェクト」の注意点を挙げておきます。

まず、お年玉はあくまで「子どものお金」であって親の管理下に置くべきではない。中高生なら「現ナマ」の管理は自分でやらせた方が良い。手元に大金を置くことから来る、ある種の余裕や緊張感を味わう良い機会です。

そして最終的な使い道が親の目から見て「アホだなぁ」「もったいないなぁ」というものでも、止めてはいけない。
一緒になって「あれも買える」「こんなこともやれる」「本気でそんなアホなもの買うのか!?」と盛り上がればそれでOKというスタンスで臨みたい。
子どもが無駄遣いしたら、後悔したころに良い会話のネタになるでしょう。

ただし、もしかすると親には言いにくいものを買いたいかもしれないので、深入りは禁物です。

使い道は子どもに主導権を握らせたうえで、親として伝えると良いのは、「お金の出自」と金額のスケール感でしょう。

オススメなのは、「誰からいくらもらったか」をリストアップすること。
私自身、子どものころ何年かやっていたのですが、これは次の年のお年玉総額を予測するための記録という実用的(?)な意図からでした。

そういうセコいことではなく、きちんと誰からいくらもらったか記録しながら、ついでに年金支給額やサラリーマンの平均給与などを調べてみて、「もらったお金の重み」を知るのは、大人の世界をリアリティをもって垣間見る好機です。スーパーに一緒に行って、「このお年玉で何日分の食費になるのか」と考えてみるのも良いでしょう。

「大人買い」の案件が決まったら、お年玉をくれた人たちに報告するというのも一興かもしれません。使い道の筋が良ければ、翌年の支給額アップが期待できるかもしれない(笑)

投資家デビューも視野に

「大人買い」が一番のオススメですが、中には「ほしいモノが特にない」という子どももいるでしょう。あるいは、1年分のお年玉では欲しいものに足りないから貯める、というケースもありそうです。

そんな場合でも、単純な「貯金」という選択肢はもったいない。
ご存知の通り、銀行預金の金利はほぼゼロです。ろくに増えないことが問題ではありません。つまり、預金すると、お金は使われるその日まで眠ってしまうのです。当然、子どもの関心も薄れます。

そんな「死蔵」の道を選ぶくらいなら、子どもに投資家デビューを提案してみてはどうでしょうか。
投資信託ならごく少額で、株式や外貨資産にも投資できます。子どもの口座で、となると準備が大変なので、親の口座を通じた間接投資で一口乗るというのが手軽かもしれません。

小なりといえど投資家となれば、自分のお金が運用成績で増減することに興味を持つに違いありません。
日本株ファンドなら投資先企業に、外債ファンドなら組み入れられている国について知ろうとするきっかけにもなります。投信は、手数料体系はややこしいですが、商品設計自体はシンプルなので、小学校の高学年でも理解可能です。
損をしても大した額ではないでしょうし、利益が出れば貴重な成功体験になります。ファンド選びを一緒にやれば、親にとっても良い勉強になるのでは。

さらに一歩進んで、「資本市場に参加することの意義」「投資でお金を増やすのと、働いてお給料をもらうことの違いは何か」といったことを親子で話し合えれば、金融リテラシーにも大いにプラスになるでしょう。
「金融関係は苦手だからそこまでは…」という親御さん。ぜひ、拙著『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』を参考図書に、どうぞ!

「金は天下の回り物」という名文句があります。使ってこそ、あるいは投資してこそ、お金自身、世の中、使った本人も生きるのが、お金です。子どもが大金を手にする年に一度のイベント、お年玉を親子で「使い倒して」みてはどうでしょうか。

それでは、みなさま、良いお年を!

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本稿は2018年12月にBLOGOSに寄稿したコラムをベースに改稿したものです。
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