見出し画像

ロンドン 決死の弾丸ツアーガイド

2016年から2年のロンドン駐在期間中、友人や知人を観光でご案内する機会があった。今回はその定番ルートを繋ぎ合わせたものをご紹介する。

ロンドンは案外、狭い。坂もほとんどなく、歩いても苦にならない。
「お上りさん定番スポット」で言えば、東端のタワーブリッジ、西端のバッキンガム宮殿まで1時間ちょいで歩ける。皇居一周お散歩と大して変わらない。夕方なんかは中心街はアホみたいに渋滞する。徒歩最強である。
だが、お断りしておくが、いくら歩きやすい街だからって、こんな余裕のない、貧乏くさい強行軍はお勧めしない。
あくまでネタとして御覧いただきたい。末尾に「ゆっくり過ごすなら」という番外編も挙げておきます。

Here we go!

1 朝イチは大英博物館

あなたがどこに泊まるかはご予算次第だろう。
だが、朝10時の開館時間に大英博物館の玄関にたどり着けないような弱兵にこのツアーの参戦資格はない。
なお、本稿は行軍ルートの提示が主眼であり、観光情報は最小限にとどめる。そういうのはサイトやガイドブックをご参照ください。
さて、開館と同時に入り、見学は1時間メドとしよう。ロゼッタストーンを見たらノルマ消化ぐらいの覚悟が必要だ。先は長い。

大英博物館を出たら、次に向かうべきはセントポール大聖堂だ。異論は認めない。
推奨ルートはこうだ。
まずホルボーン駅に行き、そのまま大通り沿いにチャンセリーレーン駅に向かう。地下鉄に乗る必要はない。中心街は2駅くらいは余裕で歩ける。大人の足なら大英博物館からチャンセリーレーンまで徒歩20分ほどで着く。

2.レザーレーンの屋台街

通りの左側を歩いてチャンセリーレーン駅を少し過ぎると、こんな角に差し掛かる。

この奥にレザーレーン(Leather lane)という通りがある。Googleマップでも、アップにしないと細すぎて発見できないのでご注意を。
このレザーレーンにストリートマーケット、屋台街がある。
ググったらサイトがあってビックリした。

この屋台街のテイクアウトの飯は、安くてうまい。
重要なので繰り返す。ロンドンなのに、安くてうまいのだ。
オフィスが近く、愛用していた私が言うのだから、信じてほしい。

「肉!」なお店から、中華、タイ、中東・アフリカ系などなど個性的な屋台が並んでいて、見て回るだけでも楽しい。
どの店でも、日本人なら5~6ポンドの「小盛」で十分。8~10ポンドも出せば、腹がはち切れそうな量のご馳走にありつける。
私のお勧めは、セルフサービスのサラダ詰め合わせのお店。これは屋台ではなく通り沿いに店が出ている(はず。入れ替わりが激しいので)。4ポンドぐらいの中サイズの入れ物にクスクスとかタマゴとかも入れて、飲み物も一緒に買ってしまう。

なお、この屋台街は平日しかやっていない。この辺りはオフィス街なのでレストランやパブも土日は閉まっている。その場合はあきらめてマクドナルドにでも行こう。

ここで食料を調達したら行軍に戻る。お店で座ってメシなど食う暇はない。レストラン、無駄に高いし。

3.麗しのセントポール

ここからセントポールまでは歩いて15分ほどだ。推奨ルートはこう。

途中で「オールド・チェシャ―・チーズ」というパブに寄ろう。英語の綴りは古臭く、 Ye Olde Cheshire Cheese 。1666年のロンドン大火の直後に再建されたという超が付く老舗パブだ。裏道でちょっと分かりにくいが、Google先生があれば何とかなる。

内部が迷路みたいで面白いので、ちょっとのぞいてみよう。
パブはどこでも「いらっしゃいませ、お席にご案内します」という対応がない。カウンターに注文にいくまで客とも認識されない。つまり、見学し放題である。何も注文しなくても良い。
喉が渇いていたらエールぐらい飲んでもいいけど、半パイントにしておこう。先は長いぞ!

セントポールは美しい。クリストファー・レンは天才だ。
そろそろ昼時なので、ここの芝生でランチボックスを開いてじっくりセントポールを観賞しよう。大丈夫、周りでもゴロゴロしたり、飯食ったりしているはずだ。
「内部を見学したいし、展望台にも登りたい」と思うのが人情だが、あきらめよう。階段は528段もある。時間のロスも大きく、確実に膝にくる。今後の行軍に差し支える。

食事がすんだらセントポールの南側に行く。バス停がある。こんな感じ。

タワーブリッジまで歩けない距離ではないが、せっかくだからロンドン名物・ダブルデッカーに乗ろう。
何番のバスに乗れば良いかは神アプリ City Mapper 先生に聞こう。欧州主要都市の観光では必須アイテム。必ずインストールすべし。

ルートはこんな感じで、ロンドン塔とタワーブリッジまで直線的に行ける。

第1推奨脱落ポイント
早くも「こんな強行軍、嫌だ」となったアナタ。
セントポール、登っちゃいましょう。こんな絶景です。

脱落ついでに、セントポールの南から歩行者専用橋ミレニアム・ブリッジを渡って Tate Modern に行ってしまいましょう。ゆっくり美術鑑賞して、最上階からまたロンドンの街を楽しみ、その後はテムズ川沿いに散歩しましょう。東に足を伸ばしてバラ・マーケット(Borough Market)に行くもよし、反対方向に向かって、大枚はたいて大観覧車London EYEに乗るもよし。

4.ロンドン塔からテムズ川クルーズ

とりあえず、タワーブリッジで写真撮っておかないと「ロンドンに来た感」が出ない。サクサク撮影しよう。
私はロンドン塔の中には入ったことがない。行った知人の反応がそろってビミョーなので、スルーしておいた。

ロンドン塔は北側の外縁をぐるりと徒歩で回れるようになっている。反時計回りに進み、下の地図の黄色い★、テムズ川沿いまで出る。

ここからわが軍は一気にビッグベンに向かう。
侵攻手段は船。テムズ川クルーズである。
こんな感じの乗り場でチケットを買おう。

お1人様10ポンドとか、そんなに高くないはず。できれば観光用の Westminster 直通便がベスト。天気が良ければデッキで景色が楽しめる。時間が合わなかったら「各駅停車」で我慢。

テムズ川をこんなルートでさかのぼるので、撮影スポットを逃さないように。登場順で大物は、ロンドンで一番高いビルのShard、グローブ座、Tate Modern 、ミレニアルブリッジ、London EYE あたり。南岸に多い。

余談だが、欧州の都市の市内クルーズはオススメ。パリ、ハンブルグ、アムステルダム、ワルシャワあたりで試したが、お値段以上の楽しさがある。

5.ビッグベンは工事中

ロンドン名物ビッグベンは、ただいま絶賛工事中である。Googleストリートビューによると、こんな感じ。

冷静に見ればただの工事現場だが、期間限定のレア物と言えなくもない。腐ってもビッグベン。撮っとけ、撮っとけ、である。
この超定番から、さらに超定番、バッキンガム宮殿へと行軍は続く。
推奨ルートはこうだ。

パーラメントストリートをトラファルガー広場に向かって北上する。
途上に首相官邸、ダウニング街10番街(Number 10)がある。正面までは入れないのでチラ見するだけ。

写真を撮りつつ、「ああ、この奥で Theresa May が死にかけてるのか……」とBrexitの迷走に思いを馳せたら、もうちょっと北に行く。

近衛騎兵団(Horse Guards)の博物館がある。たいていフル装備の騎乗した騎兵さんがいるので、撮っとけ、撮っとけ、である。ここの通り抜けからセント・ジェームズパークに出る。

第2推奨脱落ポイント
この辺りは政治の中心で、日本で言えば永田町・霞が関に当たる。
私の超オススメスポットは Churchill War Room だ。Horse Guardsを抜けた左手に入り口がある。
ハッキリ言って、大人ならここで脱落するべきである。
ここの展示は、控えめに言っても最高だ。多少なりとも歴史に興味があるならバッキンガム宮殿より価値がある。

6.英国風公園と「ロンドンで最悪の見世物」

ロンドンの大きな魅力は豊富な公園だ。
特に大きな公園は、どこもちょっと投げっぱなしというか、自然なままの放置感が良い。
無論、よく見れば手入れと清掃が行き届いているからこその居心地の良さなのだが、人工的な印象を抑制してある。ベルサイユの庭園などと対照的。
セントジェームズパークもそんな魅力的な公園の1つだ。

とくにこの湖というか、池が素晴らしい。鳥がたくさんいる。ゆるやかに時が流れ、ボーっとコーヒーを飲んでいるだけで幸せになれる。

この公園を抜けると、バッキンガム宮殿だ。「ロンドンで一番つまらない見世物」と言われる衛兵の交代は見る必要はない。
ざっと見学したら、取って返してトラファルガー広場に向かう。復路はロンドンマラソンや自転車レースなどのイベントの最終ストレートとなる大通り「マル(Mall)」を通って行こう。

第3推奨脱落ポイント
喧騒を逃れ、ここからグリーンパーク→ハイドパークと公園三昧に逃避するのも悪くない。悪くないどころか、夏場ならぼちぼち夕焼けの時間に差し掛かり、最高としか言いようがない。
ただし、この脱落ルートは、歩数は減らないので要注意。
おそらくここまでで総歩数は1万を軽く超えているはずだ。ハイドパークはバカ広いので、縦断すると歩数は3万を超えるかもしれない。

7.トラファルガーから「聖地」へ

トラファルガー広場は「わけもわからず人が集まる」という意味では、ロンドンの中心だ。「多少品が良い渋谷のスクランブル交差点」みたいなものだと思っておけば良い。週末はいつも何かイベントをやっている。下の写真は毎年恒例のJapan MATSURIから。コスプレ外人天国である。

トラファルガー広場の正面に鎮座するナショナルギャラリーや近くのポートレートギャラリーなどじっくり見たい美術館もある。
しかし、そんなものは行軍の邪魔でしかない。サッサとピカデリーサーカスに向かおう。推奨ルートはこうだ。

シェークスピアの像があるレスター広場(Leicester Square)の近くには2つ、立ち寄る価値のあるスポットがある。
1つは上の地図ではなぜか「おもちゃ店」と誤表示されている、聖地LEGO SHOPである。
ここに立ち寄ることは全ロンドン観光者に義務付けられている。クイーンやシェイクスピア、「ボビー」の愛称で知られるロンドンのお巡りさんの巨大レゴもあり、撮影スポットとしても人気が高い。工事中じゃない超強大なビッグベンのモデルもある。
そして、このセットの購入も、巡礼者の義務だ。

見よ、この神々しいまでのクオリチイ。「ロンドンに行かなくても、これで十分では?」と思わないでもない。ビッグベン、工事じゃないし。
財政状況によってこちらで妥協する人がいるかもしれないが、それはあくまで貧困層向けの救済措置である。

正解は「両方買う」である。留意願いたい。

もう1つのスポットは「聖地」の裏手にあるジャパン・センターだ。
ここは日本の食材などが豊富にそろっている。どんなものがあるか、話のネタになるので、のぞいてみよう。イートインもある。
日本から来た人は「コンビニ菓子がこんなに高いのか!」と在ロンドン日本人を憐れみ、米国や大陸から来た人は「カネ出せばこんなに何でも手に入るのか!」と在ロンドン日本人を羨む。
そういう味わい深いスポットだ。

ピカデリーサーカスは観光の中心というか、「へそ」みたいな場所だ。NYのタイムズスクエアにちょっと雰囲気が似ている。ロンドンが「円形」でNYが「四角」なのは、ちょっと面白い。

第3推奨脱落ポイント
この辺りはWest Endと呼ばれる劇場街だ。ミュージカル、バレー、演劇、映画、なんでもござれである。私のお勧めはミュージカルで、たくさんあるチケットセンターはどこで買ってもさして差はない。飛び込みでもけっこう席は空いているし、来日公演とかと比べれば安い。TODAY TIXというアプリを使うと、うまくすると格安チケットがゲットできる。愛用してました。

8.リージェント通りでお買い物

ピカデリーサーカスで写真を取ったら、世界屈指のお買い物通り、リージェントストリートに進む。

私はファッションや買い物に興味がないつまらない人間なので、ここは「クリスマスのイルミネーションを楽しむ通り」でしかないのだが、お好きな方には堪らないのだろうか。グローバルブランドの店が多くて「これなら東京でも一緒じゃない?」と思わないでもない。
買い物しなくても、曲線美を描くビクトリア朝の壮麗な建物は一見の価値あり。オクスフォードサーカスまで15分ほど、のんびり歩こう。

第4推奨脱線ポイント
もしかしたら、あなたは長期の海外旅行の終盤だったり、他の欧米諸国から「横移動」でロンドン観光に来た人だったりするかもしれない。
もし日本食が恋しかったら、この周辺には、カネさえ出せば、かなりの満足度が味わえるお店がいくつかある。
ピカデリーサーカス周辺はラーメン屋が集積している。ただし、なぜか豚骨ラーメンしかない。オススメはジャパンセンターの近くの「金田屋」。ジャパセンのイートインもアリだろ。オクスフォードサーカス近くの焼き肉屋「KINTAN」も満足度が高い。完全に日本の焼き肉屋だ。
ただし日本食は決して安くはない。1杯2000円の豚骨ラーメンを許容するか。日本なら5000円ぐらいの焼き肉に1万円払うか。
It's up to you!

9.絶景!プリムローズ・ヒル

オクスフォードサーカスまで来たら、中心街は制覇したことにして、強行軍の最終目的地、プリムローズ・ヒルを目指す。


さすがに歩けとは言わない。
推奨移動手段はタクシー、Black Cabだ。UBER の方が安いが、混雑する道路だと慣れない場所ではピックアップで混乱しがち。「流し」を捕まえた方が早い。よほど混んでなければ15分ほど、料金は20ポンドぐらいじゃないだろうか。端数程度で良いのでチップをお忘れなく。

プリムローズ・ヒルは標高でいえば100メートルもないような丘だが、ロンドンは平べったい街なので、ここから綺麗に一望できる。
季節によるが、いい感じで夕暮れ時にたどり着けば、こんな風景が満喫できる。

景色だけじゃなく、いろいろと奥深い歴史を持つ場所なので、こちらなど参考にして予習しておくと良いかもしれない。

10.強行軍を癒すギリシャ料理

わが強行軍はプリムローズ・ヒルをもって終わった。
本当にここまでやったら、足は棒になり、クタクタで、はらぺこのはずだ。最後に、兵(つわもの、ね)どもを労う宴の席を紹介して締めくくりたい。

展望台を下り、通りを北上するとレストラン街がある。どこも美味そうなのだが、私が愛用していたのはここだ。

家族経営のギリシャ料理屋さんで、居心地がよく、うまくて、そんなに高くない。アラカルトでとれば量の調整もしやすい。サイトからキャプチャした画像を転載しておく。

悪くない、というか、今すぐ行きたい。
ちなみに「飯マズ」とされるロンドンだが、イギリス料理を無理に食べなければ、ちゃんと美味しいものはたくさんある。南欧系、インド料理、中東・アフリカ系などはコスパも高い。

以上、書き始めたら面白くなって、6000字を超えてしまった。
最後に全ルートを示した地図を載せておこう。

うん。
絶対、やめた方がいいな、こんな強行軍(笑)

=========
ご愛読ありがとうございます。
ツイッターやってます。投稿すると必ずツイートでお知らせします。
たまにネタアンケートもやります。ぜひフォローを。

諸般の事情で課金コンテンツの需要を調査しておりまして。
「面白かったな」という方、「番外編:ゆったり過ごすなら」は有料にしておきますので、投げ銭してもらえたら嬉しいです。
↑課金、やめました!
簡単な紹介ですので、読み物としては1~10で完結しています。

番外編:ゆったり過ごすなら

「せっかくロンドンに来たのだから」とあちらもこちらも行きたくなる気持ちは分かります。
でも、観光地って、どこでもそうですけど、「おー!」と思うし、写真映えはしますけど、そんなに記憶に残らないものです。
私が「また行きたい」、いやむしろ「いますぐ戻りたい」と思うロンドン(および近郊)のスポットを列挙します。

ハイドパーク
「何もない」があります。
冬は冷え込むとキツいですけど、初夏から秋にかけての美しさは何とも言えません。
お弁当持って、ぶらぶらして、ゴロゴロして、本でも読んでりゃ、もう幸せしかない。

FOYLES
トッテナムコートロード駅から南に行ったところにある大型書店です。ビル1つ、丸まる書店。棚が綺麗で、文房具やグッズも素敵で、カフェもあって、何時間でも過ごせます。仕事帰りによく寄ってました。著名作家のサイン本がちょいちょい入るのも魅力。

V&Aミュージアム
博物館が集積するサウス・ケンジントンの一角にあります。自然史博物館とかどれもこれも半日つぶせるスポットなんですけど、私が一番好きなのはここ。美術館的要素と博物館的展示が混在していて、地域色もゆたかで、じっくり見てたら数日潰せます。渡英直後に入ったアパートメントが近かったこともあって、実際、累計何日というレベルで足を運びました。

ウィンザー城
女王の居城であり、イギリス王室の歴史を振り返る博物館でもあります。

お城もいいんですけど、緑豊かな周囲の環境が素晴らしい。観光バスで、というのが手軽なようですが、ヒースローからレンタカーで、というのにチャレンジしては?ロンドンは、中心街は「混雑チャージ」取られるし、道路事情としても運転は厳しいですけど、郊外のドライブは日本より快適です。右ハンドル・左側通行ですし、ハードルは低い。

グリニッジ
言わずと知れた天文台のあるところです。

ここも公園が広くて、半日どころか丸一日、幸せに過ごせます。天気が良ければ。「西半球と東半球をまたいで一枚!」もできますよ。

ほかにもお気に入りの散歩コースとか劇場とかありますけど、挙げだすとキリがないので、これぐらいで。

課金いただき、ありがとうございました。

無料投稿へのサポートは右から左に「国境なき医師団」に寄付いたします。著者本人への一番のサポートは「スキ」と「拡散」でございます。著書を読んでいただけたら、もっと嬉しゅうございます。