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こんな自分にも未来はあるのか!?(後編)

最初の会社でゆでガエルのようになった私。失われた20年は取り返せるのか!?後編スタート!


外資系に転職!

19年もの長い間、製薬会社で色々な部署をたらいまわしにされながら開発・製造・販売支援・事業戦略構築と様々な仕事に広く(浅く)携わってきたということを何とか武器にできないか。
そこで私が使った言葉は、「バリューチェーン(製品-この場合動物用医薬品-が生み出され、ユーザーに使われるまでの流れ)の全体を俯瞰することができます」。
実にポジティブな響きだ!

と思っていたら、外資系製薬会社で働く機会をいただきました。
それだけでもラッキーなのですが、「全体が見れるというならば」ということで、いきなり事業部長職に抜擢されたのです。
おお、これが転職の効果か。
などと思ったのですが、管理職経験はゼロ。さすがにそれは身の縮む思いで。
私「…もうちょっと低級管理職からスタートさせてもらえませんかね?」
人事「そんなものはない。やれ」
リアルにこんな問答。
しかし、これからのキャリアで管理職経験は必須。これを引き受けなければ、こんな経験ができるチャンスはないかもしれない。
やってみようじゃないか。
で、失敗したら退職、かな…。
まあいいや、やれるだけのことはやろう!!

後先考えず発進!!

案の定、しくじる

まあ、なかなかうまくいくものではありませんでした(笑)。
一番大きかったのは海外本社の信頼を勝ち得なかったことでしょうか。
数字へのコミット力、異文化への適応力、それらを絶対に短期間で成し遂げるというマインド…
色々なものが足りなかった。
いや、必死にやりはしたのですが、それだけで良いというわけでもない。きちんと管理者が納得できる形に示さなければなりません。
それが一定期間内に十分できなかった私は、その職にふさわしくなかったのです。

貴重な経験ができ、自己理解も進んだのだから、まあ良しとしよう。
その会社でやり遂げたことは、3種類の新製品の上市と、いくつかの業務システム構築。
それだけでも相当ヘビーである上に、並行して未経験の事業部長職。
そんなにバカにされるような結果でもあるまいよ。

なんて強がりつつ、予定通り(?)退職する決意を固めました。

行き場がない!

さて、転職するとなると、物好きな、いや親切なことに「うちに来ませんか」と言ってくださる製薬会社さんは何社かいらっしゃいました。
しかしどうだろう、同じ業界内に居続けたところで同じような失敗を繰り返すだけではないか?

うん、違う業界に行こう。
今までいた業界から離れる決意をします。

とはいえ既に45歳、持っている資格と言えば臨床スキルの伴わない獣医師資格ぐらいなもの。この身を受け取ってくださる会社がない。
獣医で応募すると「え、臨床経験ないんですか?それじゃあちょっと…」
一般職で応募すると「営業経験がないとちょっと…」
バックオフィス系や公務員関連で応募すると「ご職歴と合いませんので…」

ううむ、これが現実か。決意だけでどうにかなるものではありません。様々な会社にエントリーしては門前払いされる期間が続きます。

「ゼロです!」

そういう、わりと絶望的な状況の中で考えていたのは、やっぱり食糧生産の現場で獣医師として働きたいということでした。
人手不足の世の中だ。どこにも行き場がないなんてこととはないだろう。
どうせ断られるなら、ゼロから学びなおすという姿勢でエントリーしてみよう。
少しでも経験がある動物種(豚や鶏)では知識やプライドが邪魔をして学びを妨げるかもしれない。ここは全く経験のない「牛」の獣医を目指そう。
「ご経験は?」
「ゼロです!教えてください!」

こんな受け答えをしていると大抵「お帰りください」と続くのですが、中には逆張りの経営者もいるもので。
「人が良さそうなので、いいですよ」
そこ!?と思いましたが、やっと掴んだご縁はご縁。
指導してくださる先輩獣医(年下でしたが)が近日中に退職するというので、待ったなしの状況。
勤めていた製薬会社に退職の意思を伝えると、一応は呼び止められる。
「あと2か月在籍すればボーナスがもらえるのに」
「いらんです」
今を逃すと、そんな金額では贖いきれない損をするんです、この人生で!

そんな流れで、動物用医薬品業界を離れ、牛の臨床獣医として再スタートを切ることになったのです。

こじ開けてみた世界

少しだけ後日談を。
牛の臨床獣医になってみて、なんとか一通りのことができるようになると、いよいよ臨床の仕事が楽しくなってきました。
勿論つらいことも経験しますが、それでも牛に命を宿し、牛の健康を助け、おいしい牛乳を求めて売り場に来られるお客様の笑顔を見ると、幸せを感じずにはいられません。
もっと早くに始めればよかったと思うのですが、しかし。

製薬会社で21年もの期間悩んだ経験があったからこそ見える世界があります。

それは、過去を繋げて今を創る高揚感であり。
今の自分を肯定する感覚であり。
未来に悩む人のために今動きたいという強い衝動であり。
今私は、これを伝えることに命を懸けたい。

やるべきことが見えた今、私は、明日のために今日何をするか、迷いのない日々を送っています。

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