見出し画像

「東京物語」という日常

 小津安二郎生誕120周年ということで、小津安二郎の映画の特集が巷で多くなっています。自分自身、Amazonで邦画を見たり、いわゆる近年のヒット作を見ていて、素晴らしい映画も多いのですが、本当に凄い映画に出会いたいと思うようになりました。

子供というもんも、おりゃにゃおらぬで寂しいし、おりゃあおるで段々親を邪魔にしおる

 親戚が来た時に隠れたくなったり、おじちゃんおばちゃんと素直に話せなかったり、ちょっとすれ違いがあったり。
自分の家族は結構距離が近いと思いますが、共感するところが現代でも多いです。
小津監督が描こうとした家族の本質は今にも通用しています。

〈あらすじ〉
 尾道から息子娘家族に会うために上京してきた老夫婦は、町医者となった長男や、美容院に嫁いだ長女を訪れます。
老夫婦は子供の家族に歓迎を受けました。しかし、両親に長居されると世話するのが大変なので、娘夫婦は両親を熱海に行かせることにしました。(結構実の子供は冷たいです)
唯一両親に優しくしてくれたのは実の子よりも、戦死した次男の嫁であった女性(原節子)でした。


 東京という人間で溢れかえった町で、地方と都会の違いを目の当たりにする老夫婦。
お父さんはずっとニコニコしていますが、その裏には本音の感情があるんだろうなと感じました。自らの祖父を思い出しました。
昭和の人はこうだったんだろうなと。

しかし、老夫婦のお母さんの方が帰ってから危篤になり、亡くなってしまいます。

なぜ評価されるのか

 海外の映画で東京物語ほど、リアルな市井の人の暮らしや感情を細かく描写しようとした作品はなかったのではないでしょうか。
それまで豪華で華やかなイメージの欧米の映画とは異なっており、海外の人からしたら鮮烈だったのかもしれません。

小津安二郎は小津調と呼ばれる保守的な撮影方法で映像美を確立し、普通の家族の日常を映画として作り上げたのでした。 
普通の家族の日常を映画にして、それを映画館へ沢山の人が見にくるというのは凄いことです。
 勿論それ以外でも、戦争の傷跡に負けず、日本人の心や伝統的な家族の姿を忘れずに残そうとする徳子の姿は日本人に訴えかけてくるものがあります。


限りなくシンプルな人間味溢れるストーリーが本当に自分の家族の人生かのように感じられます。生きていく中で大切にしていきたいものは何か、普通の幸せを知ることとは何か。
温かみのある、他では味わえない感情を味わえる映画でした。


この記事が参加している募集

#おすすめ名作映画

8,240件

#映画感想文

67,900件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?