宗像は著書「SAT療法」の冒頭部分に、このようなことを書いている。いまから14年前の2006年8月に発行された書籍である。
私は、1981年から1997年まで、医療系システムエンジニアや医療機器の開発者として、医師とともに仕事をしてきた。しかし、現代医療の限界を感じ、1998年からは保健・疾病予防のフィールドに自分の職域を移し、2010年まで特に人の身体活動量を増やすトライをした。2012年からは、組織に介入し、ウェルビーイングな環境作りを手掛けてきた。いまの医療はどうだろう。日本人からノーベル医学生理学賞受賞者も出ているが、人は前より健康になったと言えるのだろうか…。
SAT療法開発の経緯
宗像は当時、
と、その必要性に駆られてSAT療法を体系化しているのだ。
本人以外の文書にも目を向けてみよう。
一昨年お亡くなりになってしまったが、筑波大の橋本さんが、「SAT療法」について、日本保険医療行動科学会年報 Vol.24(2009.6)に文章を寄せている。
2009年から30年以上も遡るということは、1970年代後半にはSATの原型がすでにあったということか。その当時に出会っていれば、私は自律神経失調症のさまざまな症状に苦しむこともなかったのかもしれない。まぁ、でも、私はその辛さを経験することを選んで、この世に生まれたのだろう。トゲトゲの心が随分丸くなったといまは感じている。
この部分は、まさに、いまの私の人生観となっており、会社員生活の晩年は、いくつか職場を訪問する度に、そこで働く人々や、その責任者の方に、あなたはどうありたいのと問うていた。これを書いていて、私が6年行った「組織開発による職場活性化支援」の根幹は、実はSAT療法にあったのだということに、改めて気づかされた。
いまから10年余前の2010年5月、私はヘルスカウンセリング学会公認健康行動変容支援士という資格を取っている。
さらにその10年前の2000年の私、メタボ予防を中心とした健康づくり支援サービス事業を立ち上げたたが、少し早すぎたことと、「指導」の域を脱せなかったことから、期待した結果を十分に得られていなかった。それは、橋本の言う「患者のコンプライアンス行動に働きかけるもの」の要素が多かったのだ。
その悔しい思いが、ずっと私の中に残っていた…。
2009年から、SATの行動変容支援の勉強とトレーニングをしたことで、その年の12月、臨床スポーツ医学12月号に「特定保健指導のツール」として、それまでの思いをまとめ上げることができたのだ。
行動変容
行動変容、これまであまり聞かれたことがなかった言葉だと思うけど、コロナで一気に広まったのかな…。
保健活動に関わっておられる方には馴染みのある言葉だが、いま一度、少し説明しておきたい。
ネット検索したところ、日本歯科大学東京短期大学の野村正子さんの「『行動変容』とは?」というPDFがみつかったので、そこから学術的な表現を一部引用する。
コロナ第3波到来などと騒がれている今日、飛沫などすぐに拡散される戸外でさえ、ほぼ100%の人がマスクをしていることに、この「変容」を実感する。
ただ、私は、花粉の季節以外、外でマスクをすることはほぼない。だって息苦しいから。大切な呼吸の妨げになるばかりか、表情を隠し、コミュニケーションの障害にもなると感じるから。
先の文献で、
と述べられている。
でも、この良い悪いをどう判断するか、その基準がウソだらけなら、行動変容の意味がない。それに、健康は個人に関する要素も大きく、大前提として、自分が健康であるとはどういう状態かのイメージをもち、自分自身の心身の状態をよく観察する必要がある。そしてもし違和感があるなら、その感覚を大事にし、どう行動するかを選択することを私はおすすめする。
ここで野戦病院に行けば、あなたが訴えた症状を抑え込むためのクスリが処方され、それを飲むことによって一時的に症状が軽快するかもしれないが、それが果たして「健康のために良いとされる行動」と言えるだろうか。
SAT法の体系
再び、話を橋本の論文に戻す。
SAT療法を含むSAT法の体系を説明してくれているので、追加で転記しておく。第二十二話でもお伝えしたが、SAT法とはどんなものかがもっとイメージしやすくなるだろう。
昨今、世の中には、癒しのツールがたくさんある。ただ話を寄り添って聴いてくれる、そんなカウンセリングも少なくない。あるいは占いのように、あなたは○○だから、こうした方がいいよ、アドバイスをくれるものもある。けれども、それらは、刹那の癒し。根本解決が図られていないため、しんどくなる度に頼りたくなる、施術者に依存させる方法だ。やる側にとっては、継続顧客を取れる美味しいビジネスだったりする。
それらに対し、SAT法がすごいなーと思うところは、イメージ療法で癒すだけでなく、カウンセリング法を使うことによって相手の心の欲求を引き出し、さらにはコーチング法によってその欲求を満たすための行動変容を促すとともに、人間関係などの環境改善を図る技術・ソーシャルスキルを訓練し、行動できるようにしてしまうこと。クライアントを自立・成長させる、問題解決のすべてが揃った理論体系と実践ツールなのだ。
ただ、それでも万能ではない。SAT法は基本言葉を介して行うため、それが通じない相手には難しい。言葉を使うということは左脳、イメージを処理するのは右脳。SAT法は左脳・右脳をバランスよく使って癒す方法ともいえるのだ。
この体系を学んでみたいという方は、ヘルスカウンセリング学会に尋ねられたい。
いまは「宗像塾」というものもあり、年に一度だが、宗像本人による集中講座も行なわれている。また、私・横地も、来年また、同学会公認ソーシャルスキルトレーナーとして、SAT法のソーシャルスキル勉強会を再開するし、希望があれば個人セッションを始める予定なので、お問合せいただけたら幸いである。
お待たせしてしまったが、2023年、「サッ!とメントレ塾」として、Webを通じ、日本のどこからでも、在宅でソーシャルスキルを学べるよう取り組みを始めたので、興味を持たれた方は覗いてみてほしい。