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シュガー「Copper Blue」

本日のコラムはシュガー。
ウェディング・ベルではないシュガーです!

80年代ミネアポリスの伝説と言えば、勿論プリンスなのですが、パンクの世界ではハスカー・デゥ!
そのギタリストでありボーカリスト、メイン・ソングライターであったボブ・モールドが90年代に組んでいたバンドがシュガーだったのです!

グランジ・ブームの最中にリリース
シュガーの『コッパー・ブルー』

1991年はグランジがオーバーグラウンドに浮上し、メジャーな存在になっている。その極めつけと言えるのがニルヴァーナの『ネヴァー・マインド』で91年にリリース、92年にチャートの1位を獲得している。

そんなグランジ狂騒曲が冷めやらぬ92年9月、ボブ・モールド率いるシュガーがデビュー・アルバム『コッパー・ブルー』をリリースしている。

本作は、ノイジーでメタリックなギターとメロディアスな楽曲のコンビネーションが抜群に冴え渡っており、特にボブ・モールドのソングライティングは彼の長いキャリアの中でも最も充実していた時期と重なり、シングルカット向きの“おいしいナンバー”が目白押しのアルバムなのだ。

取り立てて新しい何かが感じられるわけではないのだが、気持ち良いほどにザクザクとしたノイズギターとそれに負けない印象的なメロディーが本作には宿っており、ギターロックの最高峰と言えるクオリティーに仕上がっている。

また、本作はクリエイション・レコーズからリリースされたこともあり、イギリスでも大きな注目を集め、92年のクリティックポールでは軒並み上位を獲得している。

今、振り返ると91年のグランジ・オルタナ革命により80年代のポップミュージックは最もアウト・オブ・デイトなものとなり、キラキラした80’sポップもネクラが美徳なニューウェーブも過去のものという刻印が押されてしまったように感じる。
かと言って全てを焼き尽くしてしまったグランジが“その先”を見据えた新しい音を切り拓いていく感じもしない。
そんなロックシーンにシュガーはメロディアスな歌と轟音ギターを組み合わせたロックのド真ん中への原点回帰でシーンに登場した。

しかし、シーンの動向に合わせたマーケティングに即して、こうした音作りを施したのかというと、全くそんなことはないと断言したい。

そもそも、ボブ・モールドはハスカー・デゥ時代からノイジーでメロディックなパンクロックのスタイルが信条であり、自らのストロング・ポイントを最大限に活かすことだけに注力してシュガーのデビューアルバム『コッパー・ブルー』を仕上げたと言えるだろう。

また、当時、絶好調だったクリエイション・レコーズはシュガーに対して予算的にも時間的にも満足できるレコーディング環境を用意することができたのではないだろうか。
その証拠にハスカー・デゥのレコードよりも遥かに音質やプロダクションが向上しており、こうした効果はミドルテンポの楽曲やアコースティックギターを取り入れた、より楽曲重視な姿勢をバンドにもたらしたと言って良いだろう。

セールスも評価も獲得したシュガーだったが、この後、セカンド・アルバムとミニ・アルバムを発表後に解散してしまう。

2010年代以降、ソロ・アーティストとして絶好調なボブ・モールド!

シュガー解散後、ボブ・モールドはソロ・アーティストとしてキャリアを継続している。

シュガーで確立したメロディックなギターロックという基本ラインは保ちつつ、たまに似合わない打ち込みを導入してみて、ズッコケてしまうこともあった。

2012年からはスーパーチャンクのマック・マッコーハンが主宰するマージ・レコーズに移籍し、レコーディングやライブにはスーパーチャンクのドラマー、ジョン・ウースターを迎えて盤石の布陣で“21世紀のコッパー・ブルー”と言いたくなるような充実したソロアルバムを連発している。

ボブ・モールドの長きにわたる音楽活動はノイジーなギターとポップなメロディーというロックの基本的な組み合わせから外れることなく今日まで至っている。
しかし、基本的な組み合わせだからこそ、才能と努力がなければ退屈でつまらないものに終わってしまう可能性も高く、裏を返せばシンプルな構成のロックをキメることは決して簡単なことではないはずなのだ。
そして、この基本的な組み合わせこそが、現在のギターロックの肝であり、メロコアやエモの雛形にもなっており、その影響は脈々と受け継がれていると強く感じるのだ。

さて、来年はこの名盤のリリースから30年という節目の年となる。
それを記念してアニバーサリー・ツアーで日本に来てくれたりすると個人的には感激なのだけれどな。

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