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「算数文章題が解けない子どもたち」を是非読むべき!

じわっじわっと話題になってます(広島ですが)

記事の筆者は広島県在住です。算数文章題が解けない子どもたち」(今井むつみ他著 岩波書店)は、広島県の一部の教育関係者で話題になっています。(一般の先生たちが話題にしていること自体が稀なのです)
 
 ・ 広島の児童の実態について、ユニークな調査を行っていること
 ・ 一般の先生に分かりやい分析方法の解説
 ・ 温かいまなざしで単刀直入な言葉で解説している
 ・ 外国語を母国語にしている児童の指導者の支持

こんなところが手に取りやすい理由だと思います。同僚で回し読みもしてるようです。

すごく納得できたフレーズ5選

教師の目線から、すごく納得できた箇所を紹介したいと思います。
タイトルでは「算数文章題・・」とありますが、「算数文章題解けない子ども」にしなかったのは、個人的には「算数文章題」の難解さを上位・中位・下位の3グループの子どもたちの解答から分析したように感じました。つまり、子どもを鍛えるのではなく、「算数文章題」の提示の方法や問題に応じた解かせ方の工夫で子どもの認知処理の負荷が減るよという示唆が込められているように感じます。

1 「死んだ知識」→問題解決の場面で想起できず運用できない形の情報

学力を「学び方を自ら考え、工夫し、『生きた知識』の体系を構築できる力」(引用:同著1―2、1-3)と定義した後の記述です。「学力を測るテストが実は『死んだ知識』を測っているだけではないのか」という記述もあり、ドキッとしました。

2 テストの回答後に見直しするようにいくら指導されても、メタ認知が働かなければ自分の答えの誤りに気づくことはできない

(引用:1―4)筆者も「見直し行動」がない子、もしくは頻繁に「見直し行動」を行う子に注目しており、その手立てとして授業中は、ペアでの見直しや相談を頻繁に取り入れてました。それに気づいていなかった若かりし頃の筆者は「『見直し』は、テストを『眺める』とは違うよ!」と叫んでました・・そうか『眺めている自分』が想像できなかったのか・・

3 意味を考えずに問題文の数字を使って立式する

(引用:2-2)1年の「子どもが14人いて、〇さんの前には7人います。後ろに何人いますか。」という列の並び順問題があります。1年のごくありふれた問題だけど、「3,4,5年の正答率は衝撃的に低い」との分析結果の記述があります。「立式するときに、文章で与えられた数字を使わなければならないという思い込み、つまり文章題解答のための誤ったスキーマを持っている」との記述もあります。(著書の書きぶりを批判する気はないですが。子ども目線だと「持ってる」のではなく、「持たされた」が正しいような気もする。「問題文の数に注目して!」 と下線まで引かせた気もする。)筆者の指導での大いなる反省も込めていますが、文章題では、先入観ない状態で、「グループで読んで、気づきを言い合って」とちょっとイメージを膨らませる工夫をしてます。誤った読み取りをしていたらこの段階で淘汰されるので。

4 概念理解が脆弱だと、簡単な計算の時は答えることができても、文章題になって実行機能や作業記憶の負荷が高くなると、誤ったスキーマが顔を出す

(見出し部分の引用:2―4)
ここからは、筆者の考えです。子どもたちは、精一杯考えているんです。だけど、負荷に負けてしまうのです。一番先に頭に浮かんだ自分の得意な計算方法(先生に花丸をもらった記憶)を選ぶのよね。それは「誤ったスキーマ」となってしまう。弱いこと(脆弱)は、悪いことではないと思うのです。悪いのは「実行機能や作業記憶の負荷」の方だと捉えて、負荷を軽減して「花丸記憶」つまり「成功体験」によるスキーマの構築を図りたいと日々思っています。(著書の反論ではありません。筆者の反省です)
「見落とし」「見誤り」は、子どもが意図して行っているわけでもなく、不注意でランダムに起こる現象でもないと思います。そう処理をしてしまう「習慣」のようなものではないかと思います。「62‐15」の式を、大きい数から読んで「62‐51」といつも答えてしまう子、「48+15」の式を筆算にすると「41+85」の式になってしまう子など、誤答には子どもなりの理屈があります。そうした処理の「習慣」を見極め、正しい処理の「習慣」に近づける工夫をすることは、その子だけでなく多くの子どもにも優しい授業になるのではないかと日々考えています。

5 記憶容量や情報処理のスピードが速くなるような訓練をするよりも、認知的な負荷を軽減できるような方法を自ら状況に合わせて見だせるようになるための支援をしたほうが有効である

(引用:4ー3)図形の問題「かんがえるたつじん②」での図形イメージの心的操作での記述を引用しています。先に述べたユニークな調査が、著者の今井むつみ先生たちが開発した「たつじんテスト」です。(たつじんテストについて→https://atstudy.co.jp/
ここからは筆者の経験から述べます。算数科では、「図形を動的に見る」ことや「図形の構成要素で見る」ことなど、三角形や四角形などの既習の図形を学年をまたいで、繰り返して見つめ直す学習を行っています。つまり経験を重ねた大人と未熟な子どもでは、同じ図形が見えていても、同じように図形を見ているとは言えないということです。

教科書をコピーして、印刷機で増し刷りした図形のプリントを子どもに配布することはよくあることです。しかし、黒色の格子の上に描かれた図形は、線が増えたことで、単純な既知の図形さえも認識できなくなる子どもが増えます。3年生でもイラ立つ子や泣き出す子もいました。

認知的な負荷を軽減」について、本当に大賛成です。
できないからと言って、タブレットでひたすら練習問題をさせるという、学力を「量」でかさ上げしようとする方向には向かってほしくないなあと切に願います。(ICTを否定してません。むしろ「認知的な負荷の軽減」に有効活用したいと考えています)

以上、すごく納得できたフレーズ5選でした。





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