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白髪革命 医療保険改革への抗議が中国全土を席巻 rfi 2023/02/19

 以下の記事はフランス通信社AFPの媒体rfiの中国語版2023年2月19日に掲載されたもの。この時点での「まとめ」であるが、多くのネット上の記事に依拠している。標題にある「抗疫」は疫病と戦うという意味であるが、同じ発音の「抗議」の言いかえであることが知られている。したがって「医改抗疫」は「医療保険改革への抗議」と読み取ることができる。
 まず抗議した庶民が、警察の恫喝によって沈黙に追い込まれたことが指摘されている。中国では自由な発言がいかに力によって抑えられているかが理解される。つぎに中国が社会主義を標榜しながら、社会福祉に極めて僅かな資源しか割り当てていないことが告発されている。さらに論点として庶民の医療保険が改悪される一方で、どのような医療を受けても無料という、共産党高級幹部の特権的医療保険の存在が指摘されている。
 なお記事には音源が付いているが、この音源の中国語と、文字化された記事との間には多数の異同があった。両者を比較してみるといずれの表現にも一長一短があったので、以下の訳文では、ある場合には記事の方を、ある場合には音源の方を取った。

从白纸革命到白发革命, 医改抗疫浪潮席卷全国   rfi 2023/02/19

(見出し)白紙革命から白髪革命へ 医療保険改革への抗議が全国を席巻
 中国共産党総書記習近平が政治局常務委員会でゼロコロナ防疫が決定的勝利を得た、人類文明史上の奇跡となったと自慢する発言をした(訳注 別の報道によればこの発言が行われたのは2023年2月16日)まさにその時、武漢、大連、上海、鞍钢など多数の地で退職職工が街に出て、政府の医療保険改革に抗議した。ゼロコロナ政治運動で医療保険は空になるまで掻き出された(掏空)、政府にはもはや職工個人勘定に振り向ける十分なお金がない。改革後、個人医療保険に残される金額は大幅に減り、多くの日常薬品が全民医療保険払い戻し対象(报销清单)から削除され、医療受診の補填額(报销数额)は縮小された。
 ネットの友人@jennyはつぎのように書いた、医療保険改革後、初めて診察を受けた。病院でちょっと見てもらうのは、薬局に行くよりいいかなと思って。(しかし)あちらで並び、こちらで並びで登録料が26元、自払いの項目が155元、漢方と西欧の薬に注射で393元、併せて500元以上払わされるとは思いもしなかった。同輩諸君、医療保険でどれだけカバーされたか知りたくないかい?全部で7元、本当に7元だけだったよ。払い戻しを受けたもののわびしくて、眼鏡を落っことすほどおどろいたよ(大跌眼镜)!
    武漢市民は2月8日に市政府(庁舎)を取り囲み、医療保険改革の中止を求めたあと、15日再度、武昌の中山公園に集まり抗議した。当局は大量の警察(官)を鎮圧のため出動させ、地下鉄の出口を封鎖し、武昌の抗議(抗疫)する民衆を取り囲んだ。ネットの友人@丁班同学は、次のように書いた。この数日、医療保険金権利防衛活動(医保金维权 : 医保金維権)に参加した爺さんと婆さんは、派出所の警官(民警)の恫喝(恐吓)を等しく被った。
 活動していると、市政府の関係部門は、爺さんと婆さんを(市政府庁舎内の)大講堂に招いた。市長が今後慎重に処理すると口頭で約束(承諾)し、併せて関係部門は一人ずつにお弁当(盒饭)が配られた。その日の夜、3人組の警察が、全員簡易武装(全副武装)姿で老人たちの家に押し入り、2つの言葉を言い残した。①今後は騒ぎを起こすな(以后再不能闹了)。②お前たちは年寄りだ、だからお前たちを(しばる)方法はない。だが子供たちはまだ若いだろう。子供たちの将来と仕事については、方法がある(有办法的)。黙っていろというわけだ!(让人无语!)。
 あるネットの友人は述べている。この度のすべての人の利益に密接に絡んだ方策は十分な討論を経ていないし、出され方が法に合っていない。全民主の政府を自称する政府は事前に全民衆の意見を求めていないし、医療保険改革の方策は民衆(群衆)の認可をえていない。反科学的政治的なゼロコロナ防疫が経済を破壊し(摧毁)医療保険を使いつくした(耗尽)。その結果を普通の民衆に押し付けるのは納得できない、と。
 またあるネットの友人は、中国人民大学副校長の劉元春が、去年(2022年)4月指導部の集団学習で行った講義を転載している。彼(劉)は、経済のショックを和らげる作用を発揮しにくい中国の社会保障体系が不健全だと明確に指摘している。財政支出の中で社会保障支出の割合がとても低い。2021年の中国の社会保障支出が財政支出に占める割合は13.7%で西欧国家に比べてとても低い。二つ目として、GDPに占める社会保障支出もまた大変低い。2020年3.21%、2021年は2.96%に下降した。この数字は全世界の序列でも極めて低く、OECD諸国の2019年の平均に比べて16.8ポイント低い。2019年、社会保障がGDPに占める割合は、フランス31%、フィンランド29.1%、イタリー28.2%、ドイツ25.9%、日本22.3%、英国20.6%、米国18.7%であった。
 ある国がどれだけ社会主義かはGDPに占める全民社会保障が表していることを知るべきだ。中国はかたくなに全民社会保障支出を高めようともせず、社会主義の道路に移らないことを宣称している。極めつけは「平等」を追求目標の特色とする社会主義中国が、体制内の高級官僚が全額無料の医療保険を享受しており、今に至るも平等公平の医療保険体系を作っていないことである。
 北京大学教授の李玲教授が述べた一言がこの2月全国をまるで狂ったように広がった(疯转)ー我々の幹部、とくに高級幹部は支払い不要の無料の医療を享受している、彼らの公費医療体系では局長級以上は基本全額が支払い不要(全免費的)である、彼らが庶民に無料の医療を与えないのは、自身は無料の医療を受けるが庶民にはそれを与えない、といっているのと同じことだ。ネットの友人@花仙子は次のように述べた。武漢人はなぜこうも怒っているのか。海外の敵対勢力にあやつられているわけでも、また何か意図をもってとか政府が気に入らないとかいうことではない、老人の利益が損なわれたからだ。人は誰も父母があり、誰もが老いるものだ。財政困難からばらまくお金が少なることはある。(基金に残るお金は)問診の支出に十分だろうか。武漢人はもめごとは好まないし、物事をひっくり返すことも好きではない。人民というのは河や山のようなもの。共産党がそれに乱暴し、寄生し、踏みつけにしたことは、許されないことだ。
(以下略)


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