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ラグビーと非言語コミュニケーション

皆さんは、言葉や文字を使わずにコミュニケーションをとる、ということを想像できるだろうか?

先日出席した、京都大学ラグビー部100周年、京都大学創立125周年のシンポジウムでとても面白かったことの一つは、コミュニケーションについてだった。

とりわけ、京大元総長・人類学の権威である山極教授による、ゴリラから紐解く非言語コミュニケーションの講義は印象的だった。

群れで生活するゴリラの集団は15匹程。言葉を発さない彼らが作り上げるチームの限界数が15匹とのこと。

ゴリラチームには老若男女がおり、その中にリーダーがいる。
我々のようにリーダーシップを発揮しているのだが、言葉を使わずに身体的な接触や見つめ合いによって意思疎通をはかっていく。つまり視覚や触覚を非常に重視する。
また、チームメンバーのゴリラが色々なことをやらかすこともあるのだが、リーダーはよく見守っているのだ。いわゆる体で引っ張るというよりも後ろから支えるようなスタイルだ。
言葉で引っ張らないから体で引っ張るのかと思ったが、そうでもないようだ。

一方で人間には言語があるので、後から言葉で説明することができ、その場で勝負しなくても良い状況にある。
よって、その瞬間に察する能力、直感力などがゴリラに比べて落ちているそうだ。
身体のコミュニケーション能力もゴリラに比べると低い、という話にも納得した。

しかし、ラグビーには、身体のコミュニケーションがある。
ボールを持っている選手の背中を見て、色々な動きを見て、瞬間的に察知して動く。
ゴリラのような非言語コミュニケーションを取ることがあるとも言える。

つまり、ラグビーは、本来人間にも備わっていたような、非言語コミュニケーションの力を彷彿とさせる側面があるのではないか、と山極教授はおっしゃっていた。
言葉に頼らず、相手への深い理解と自らの経験値に基づいた瞬間的な判断を行う、複雑性の高いコミュニケーションなのだ。

僕は、2019年の日本代表のプレイへの熱狂には、多国籍な集団が、日本チームとして団結し、身を挺して戦う姿に、人が本来持っていた力=非言語コミュニケーションに対する一種の驚きと、原点回帰のような感覚を持っていただけたのかもしれない。

SNSを筆頭にデジタルコミュニケーションが当然の今、極めてアナログに、チームと人間関係を築いているラグビー日本代表を、本能的に気持ちよく感じてもらえたのではないだろうか。

現在多くのラグビーチームでは、GPSなどデジタルデータを積極的に活用したチームづくりをしている。世の中にデジタルは溢れているように思える。

デジタルが当たり前の世代が、スポーツを通して、本能的かつ直感的な非言語コミュニケーションで互いを理解しあうチカラを鍛えることができれば、これまでにない多くのイノベーションが起きるのではと楽しみになった!

特にラグビーを筆頭としたコンタクトがあり、球技であり、流れが止まらないスポーツに可能性があるのではないか。と考えさせられる京都でのシンポジウム登壇だった。面白かった!!!



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