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空席から熱いメッセージを:『ありがとうシート』の提案 ~新型コロナに付き合うために~

 ポツリと空いた席。フィジカルディスタンスを確保し、密を避けるために広げられた空間。何もなければ、多くの人が座り、笑顔を見せていたはずの場所。“席が泣いている”とは言わないが、何とか、活用できないか?
 これから書くとことは一つの願望である。

1.名前も知らない人たちに感謝をするには、、、、
 新型コロナでは医療従事者の方たちの活躍が感染の深刻化を防いでいる。少なくとも私はそう思っている。
 でも、テレビのモーニングショーのコメンテータは違っていた。PCR検査の精度が100%でないのは、検体の採取の方法が悪いからなど、医療従事者に責任を転嫁するような発言があった。根拠が良く分からなかった。
 ワガママを聞いてもらえない子供が、人をなじるようなコメンテータの行為に悲しくなった。コメンテータも人間だ。連日の出演、取材、情報収集・整理に時間を取られ、疲れからつい、口が滑っただけだろう。だから、批判するつもりはない。
 むしろ、医療従事者の人に感謝したくなった。いや、直接、検査や診察でお世話になっていない自分も、感謝すべきだと思った。このことに思い至らせてくれたコメンテータには、むしろ『ありがとう』というべきかもしれない。
 ただし、多くの人と同じで、私も医療従事者の人たちを直接知らない。
 では、どうやって、感謝の気持ちを示せばよい?

2.感謝を伝える装置としての空席
 『ありがとうシート』、それが私の答えだ。
 医療従事者の方々に、「感謝の気持ちを届けたい」「食べることで明日への活力を得て欲しい」「同時に、飲食店、生産者を支えたい」。そんな気持ちを込めて提案したい。

 それは、レストランの空席を、医療従事者等を招待するための専用の席『ありがとうシート』にすることだ。

 医療従事者の方々は、お店が招待できる日時に招かれる。日時は、飲食店の都合に合わせてもらうし、席が少ないかもしれな。もしかしたら抽選で漏れるかもしれない。
 お店は、他のお客さんとの予約や混み具合を考慮し、招待する時間を調整する。また、気持ち割引をする。お店を存続させるために仕組みでもあるので、無理はしない。
 お客さんは、お店の気持ちに賛同すれば、『ありがとうシート』のために支払額の10%を寄付する。10人の気持ちが集まれば、1人の医療従事者の方を招くことができる。
 お店に来たことがない人は、お店に賛同し、連携するクラウドファンディングやNPO等にお金を預ける。そのお金の中から医療従事者を食事に招待するお店にお金が提供される。

それぞれが支え合うシステム。誰もが、無理をせずに、自然体でお互いに感謝する、感謝できる仕組み。実際に動かすためには詳細は詰めなければならないが。

3.『ありがとうシート』のもう一つの意味
 密を避けるために減らした席。だが、『ありがとうシート』にすることでお互いの絆を深め、結果としては、本当の意味での“ソーシャルディスタンス”を近づけることができる仕組みだ。withコロナの時代に、広げられた物理的距離(フィジカルディスタンス)を、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の接近に昇華させる、それが『ありがとうシート』のもうひとつの意味だ。単なる空席を熱いメッセージを送る装置に変える。物理的なディスタンスをキープして、社会的な分断にレジスタンスする。その象徴として、レストランでも『ありがとうシート』が広がることを願いたい。
 まあ、そう大げさに考える必要はない。普段、お世話になっている人に、美味しいものをゆっくり味わってほしい、というものであれば良い。昭和のオジサンなら一度はあこがれた、カウンターの隅に座る美しい女性に一杯おごって、さわやかに去る、そんな自己満足のサービスであっても良い。

 物理的な距離をとるという意味で使っていた、これまでの“ソーシャルディスタンス”という言葉は使わないようにしよう。人と人との交流や心の触れ合いまでも一切禁じるようなイメージを連想させかねないからだ。単に公共的なスペースで、マスクをしない場合には適切な物理的な距離をとることを要請しているに過ぎない。社会的な関係性を遮断し、分断を連想させるとすると、“ソーシャルディスタンス”を提案した新型コロナの感染防止に携わる人々の意図とは違ったものになるからだ。

 私にとっては、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの方々は、中島みゆきの歌う「地上の星」だ。その星たちを私たちは、直接、会うことも、名前を知ることもまず、ない。星たちと私たちを繋ぎ、“ソーシャルディスタンス”を近づけ、感謝を表すことができるのが『ありがとうシート』だ。そして、それは、私たちが大好きなレストランを支えるものにもなってほしい。そう強く願う。

4.感謝の輪は、もっと広がるはず
 『ありがとうシート』は感謝したい、応援したい、様々な誰かのために使えるのではないか。

 音楽が売りのレストランなら、ライブハウスなどの活躍の場が営業縮小したアーティストを応援するための配信ライブ。空席に大型モニターを置き、店のサウンドシステムと連動させ、ツイキャスの“投げ銭”のような仕組みを導入する。あるいは、アナログではあるが、お店のお勘定に“投げ銭”を追加して払い、アーティストに店側が手渡す。

 ちょっとこだわりのある和食の店なら、そこで使っている食器を空いたテーブルに展示し、販売を支援する。本物を置ければよいが、カタログや写真、デジタルサイネージの映像などでも良い。自分が食べた料理が盛り付けられている器を家でも楽しめる。自分で作った料理の載せた器を見ながら「あの店で食べた〇〇、美味しかったね。また、行きたいね」、そんな会話が弾めば、特別な時間をもう一度過ごすために、お店を訪ねたくなるはずだ。そうやって、和食店、小売店、陶芸家、お店ではなく家にいる時間、それらを結ぶ線を太く強くしていく。接待や宴会需要が“蒸発”してしまって苦しむ産業への応援が広がっていってほしい。

 また、個室や貸し切りの人数を緩和し、個人利用でも使いやすくしたのであれば、Zoom会食もあるだろう。故郷の親族と都会の子供や孫をつなぐオンライン飲み会。5GやVRの技術を活用し、リアルな映像が提供できれば、新たな付加価値になるかもしれない。

 Jリーグのホームタウンなら、無名の若手選手の映像を流し、ユニフォームやグッズを販売する企画もあるだろう。「〇〇を最初に見つきえたのは私だ!」というオジサンが100人、出現するかもしれない。

 空席から発信する感謝の気持ちや応援メッセージ。マスクや手洗い、フィジカルディスタンス(ソーシャルディスタンスではない)のキープ。それらはもちろんの事、一歩踏み込んで、誰かを、何かを応援したい、そんなお客さんも少なからずいるはずだ。少なくとも、そう信じていたい。
 その人たちの要望に応える空間として、ディスタンスのためにあけた空席、スペースを活用する、いや、もっと、踏み込んで、お店やオーナーの熱いメッセージを送る装置とする。マイナスではなく、プラスに転化にする。
『ありがとうシート』が広がることで、飲食業の活性化、復活を願いたい。

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